日本税理士会連合会は、令和元年6月21日に「令和2年度税制改正に関する建議書」を公表しました。
この税制改正建議書は、32項目もの改正建議と同時に、今回の大切な建議項目として、次のようなことなど3点を入れ込んでいます。
・消費税における請求書等保存方式および単一税率を維持する
・人的控除の基礎的なあり方を見直すと同時に、基礎的な人的控除へのシフトを所得計算上の控除から進める
・「災害損失控除」を創る
今回は、税制改正建議書とは?税制改正建議書の構成とは?令和2年度 税制改正に関する重要建議・要望項目とは?について解説していきます。
税制改正建議書というのは、翌年度の税制改正に対して日本税理士連合会が建議(要望)を国に提出するものです。
日本税理士会連合会というのは、15の全国の税理士会で構成されており、全国の約78,000人の税理士が加盟している税理士の業界団体で、15の全国の税理士会で構成されています。
日本税理士会連合会は、税理士の職責および使命に鑑み、税理士業の改善進歩および税理士の義務の遵守に資するため、税理士会と会員に対する連絡、指導および監督についての事務を行うとともに税理士の登録についての事務を行うために、設立が税理士法によって義務化されている団体です。
日本税理士会連合会は、15の全国にある税理士会で成り立っており、法律で税理士会に税理士は所属することが決まっています。
税制改正建議書は、次のような構成になっています。
・3項目の特に強くアピールしたい「本建議書における重要建議項目」
・税目ごとの中長期的な観点から検討した「今後の税制改正についての基本的な考え方」
・15の全国の税理士会と570項目の日本税理士会連合会の税制改正に対する意見から32項目にまとめた「税制改正建議項目」
ここでは、基本的な今後の税制改正についての考え方についてご紹介します。
・人的控除における基礎的な所得控除方式の維持、税額控除化の検討とこれ以外の人的控除の整理合理化
・特に基礎的な人的控除への所得計算上の控除からのシフト
・多額な有価証券譲渡益などへの税率アップの検討
・公的年金等所得に関して、独立した新しい所得区分の創設
・小規模企業等税制を検討するときは、特別な取扱いが法人成り企業に対してなされないようにする
・所得額以外の従業員数などの別の指標と資本金基準との組合せによる中小法人の範囲の見直し
・財源を確保する立場に偏しない課税ベースの適正な構築
・課税は内部留保へのものでなく、充実した政策税制による設備投資などの促進
・租税特別措置の整理
・請求書等保存方式と単一税率制度の維持
・一定額以下の課税売上高の事業者への申告不要制度の創設と基準期間制度の廃止
・非課税の取引範囲の縮小
・さらなる中間層以下への相続税の課税強化に対する反対
・世代間での資産移転を促す贈与税の負担を軽くする検討
・小規模宅地等の特例の適正化
・税源の偏在性が多くない地方税制の構築
・償却資産課税の抜本的制度改革あるいは廃止
・外形標準課税の中小法人への不適用
・マイナポータルを利用する税務申告の推進
・納税者憲章の制定、一部の税務調査の事前通知事項の電子化・書面化
・申告書などの閲覧でのコピーなどの手続きの緩和
・成年後見制度に関係する障害者控除の適用範囲拡大などの税制などの見直し
・カーボンプライシングの導入のための検討
・GAAR(一般的租税回避否認規定)の導入反対
・慎重な義務的開示制度導入の検討と事務負担への気配り
・十分に災害損失が救われる税制の創設
・災害税制の専任担当者の地方公共団体における育成
令和2年度 税制改正に関する重要建議・要望項目としては、最重要建議・要望項目と個別要望項目があります。
ここでは、最重要建議・要望項目についてご紹介します。
最重要建議・要望項目としては、次のようなものがあります。
・消費税における請求書等保存方式および単一税率を維持すること
・人的控除の基礎的なあり方を見直すと同時に、基礎控除へのシフトを所得計算上の控除から進めること
・「災害損失控除」を創設すると同時に、災害などによって相続時精算課税制度における受贈財産が損失を受けたときの救済措置を設けること
ここでは、税理士会連合会の税制改正建議書についてご紹介しました。
なお、ここでご紹介した税制改正建議書、税制改正建議書の構成、令和2年度 税制改正に関する重要建議・要望項目について詳しく知りたいときは、公表されている資料が次のリンクから閲覧できるためぜひ参考サイトにしてください。
参考サイト:令和2年度税制改正に関する建議書