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税理士が一般企業に転職する際のポイントを徹底解説!

HUPRO 編集部
税理士が一般企業に転職する際のポイントと注意点

税理士の転職先として、会計事務所・税理士法人以外にも、一般企業に経理職として転職する選択肢もあります。その場合、どのような求人があるのでしょうか?そして転職活動をする際にはどのような点に注意すればいいのでしょうか?
今回は、税理士が一般企業に転職する際のポイントと注意点について解説していきます。経理職に興味がある税理士の方は是非ご覧ください。

税理士の一般企業への転職動向

一般企業の税理士の採用ニーズは上昇中

一般企業の税理士の求人数や採用事例は年々増加しています。
つまり税理士の一般企業への転職は十分可能だと言う事がわかります。
背景としては、インターネットの発達等で、スピーディーな事業推進や経営判断が求められている中で、これまでのように外部の税理士法人・会計事務所にアウトソースしていると判断材料を揃えるのに時間がかかってしまうことが挙げられます。その上、日々企業で働いている組織内税理士のほうが、企業の事情を深く理解しており、適切なアドバイスができるのもメリットです。

また、利益のあるうちに税務会計業務を内製し、社内にノウハウを蓄積することで、数年後の外部への依頼費用を抑えようとするコスト面の事情も影響しているようです。

国際税務税理士のニーズが特に大きい

海外展開する企業が増えたことから、税理士の中でも、特に国際税務人材の採用ニーズが大きくなっています。国際税務分野は、スピード感を持って的確に対応するためには、社内の事業や経営事情について深く知っておく必要があり、内製化するメリットが大きいためといえます。
中途採用をメインとしている、新興上場企業はもちろんですが、7~8割を新卒で採用している、日系大手メーカー企業等でも国際税務税理士の中途採用は活発になっています。

税理士が一般企業に転職する際のポイント

ここでは税理士が一般企業への転職を成功させるためのポイントを三つ解説します。

企業がどのような人材を求めているかを理解しておく

一般企業が税理士資格を持っていることを条件に求人を出すケースは特に珍しくありません。しかし、同じ経理職でも会社の規模や業界によって求めるニーズが異なるのが特徴です。

大手企業の場合、税務関係を専門に担当する人材を求めるケースが多いです。それに対して中小企業の場合、税務以外にも経理や財務など幅広く業務をこなすことのできるオールラウンドタイプの人材を探していることが多いです。またベンチャー企業では経理・税務の業務フローを作成する業務であったり、管理部門全体を統括する管理職になってほしい人材を求めていたりします。

そのため自分がやりたい事と企業の求めるニーズの内容が合致するかを事前の面接などで判断することが大切です。

採用のポイントを理解して的確にアピールする

大手企業の経理の求人を見ると、企業で経理職として5年以上の経験があることを求めている場合があります。つまり、一般企業は税理士を採用する際にそれまでの経験やキャリアを重視しているのです。

履歴書、職務経歴書などの書類関係は、それまでの経験やキャリアをしっかりと記載するようにしましょう。また面接の際は、その点をアピールするように心がけましょう。

ここまででわかるように、経理未経験でいきなり大手企業の経理職に転職するのは難しいのが実情です。多くの場合は中小企業での経理職を経験してから大手企業に転職します。

ただし、IPOなど特殊な業務の経験がある場合には、企業がそのようなスキルを必要としていると高く評価されます。 IPO準備の企業であればその経験をアピールするように、採用のポイントをしっかり押さえてアピールしていきましょう。

一方会計事務所や税理士法人での勤務経験しかなく、一般企業で経理職のキャリアがない場合でも応募が可能な場合があります。
そういう場合は、記帳代行や、法人税の申告業務の経験などが高く評価されるようです。より具体的に日常業務の経験をアピールするとよいでしょう。
なお、巡回業務などに関しては、評価はあまり高くありません。

また一般企業は転職回数を気にする傾向があります。会計業界はいくつかの事務訴を渡り歩いてキャリアアップを計るのが普通ですが、一般企業にはそのような思考がありません。
転職回数が多いと何かあるとまたすぐに辞めるのではないかと思われる可能性があるので、その理由をきちんとポジティブに説明できるようにしておきましょう。

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税理士業務と一般企業の業務の違いを理解する

そもそも税理士業務と一般企業の経理・財務業務は何が違うのでしょうか。
税理士は、一般企業やフリーランサーなどの個人事業主などが顧客です。そしてこれらの顧客に対して記帳代行や法人税の申告、節税のためのアドバイスなどコンサルタント的な業務を行います。
それに対して、一般企業の経理業務は連結決算や開示資料の作成など、税理士が行わない業務も行います。

税理士の一般企業での業務は、以下の3つの方向性があります。
・経理担当業務
・税務担当業務
・経営企画業務

経理担当業務

企業内の経理担当として、キャリアを歩むことになります。税理士の専門知識が活きるケースは限られますが、最も市場ニーズが大きく、税理士法人・会計事務所で複数の法人の会計業務を見てきた経験が活かしやすいです。一般的な経理担当と同じく、マネージャー職になる事が早い、年収アップ・キャリアアップになります。

税理士の方が企業内経理担当へ転職する理由として、業務内容自体よりも、福利厚生や長期的な就業のしやすさなどを重視する方が多いです。

税務担当業務

管理部門の中でも、社内の税務分野に特化したキャリアです。経理担当に比べて、税理士の専門知識が活きるシーンは多く、メンバーの年収も上がりやすいです。前述の通り、特に国際税務の分野でのニーズが高まっているため、英語力のある税理士や国際税理士法人で働いていた方は、転職で年収や待遇が一気に上がることがあります。

一方で、大手企業での求人がほとんどであり、税理士資格以外の学歴や経歴・年齢に対しての転職回数も評価材料として含まれるため、選考難易度は高くなっています。
税務の知識を活かして、一般企業で働きたいという、業務内容自体を重視する方が選択しやすいキャリアです。

経営企画業務

これまでは、税理士の資格を活かした、税務申告や経理代行業務にも十分価値がありましたが、今後は AI 等のテクノロジーの台頭により、知識を活かしてより高度に経営に携わっていくことが求められます。その中で、会計の知識を活かした管理会計はもちろん、 M&A や事業策定・企画をする経営企画担当としてのキャリアを歩み始める税理士も増えています。

募集求人数はまだまだ多くはないですが、社内での数年後のキャリアプランとして経営企画担当へのキャリアを提示する企業は増えています。

税理士法人や会計事務所の業務の中では、コンサルティング業務にやりがいを感じ、事業や経営に関心の高い若手税理士が経営企画担当に転職しやすいです。

税理士が一般企業に転職する際の注意点

転職するときに注意しなければならないのが、募集している部署や職種をよく確認することです。大企業だと経理部でもさらに経理グループと税務グループに分かれていることがあります。もしその企業の募集している職種が経理グループだと、採用されたあとに担当する仕事は当然経理関係になります。会計事務所や税理士法人で得た税務関係の知識を活かそうと考えてもそれができません。
転職した後にこのギャップに気付く人が結構多いので注意が必要です。

転職後の業務内容や働き方等について確認する

税理士・税務人材の一般企業への受け入れは事例がなく、待遇や受け入れ体制が決まりきっていない場合も少なくはありません。通常の転職と同じように、待遇面・働き方等について確認することはもちろんですが、転職後の業務内容・またその後の社内でのキャリアプランについてはできる限り細かく確認しておくことをオススメします。

社内でのキャリアプランについては、 HP や求人サイトで公開されていることは少ないため、転職エージェントに相談してみるのもいいでしょう。

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一般企業に転職した税理士の年収・待遇

転職した企業が税理士に対して資格手当などを支給するような給与体系を採用していない限り、一般の社員と同じ給与になります。
日系の企業であれば500~600万円くらいと考えておけばよいでしょう。外資系企業であれば1000万円をこえることもあります。

ただし、大企業になると、経理部門とは別に連結納税や国際税務などを担当する税務部門が存在します。これは高度な税務知識が要求されるため、大手の税理士法人などで勤務を経験し対応可能な場合は優遇される可能性があります。

福利厚生や働き方を重視される方が一般企業への転職を検討しやすいですが、一般企業では、制度が整っている企業からそうではない企業まで存在するため、実際の残業時間やフレックス・時短勤務等の働き方の制度・実際の制度の利用状況についてはきちんと確認しましょう。

また、年収については、税理士有資格者を企業内ではじめて採用するケースも多く、年収については目安が大まかなこともあるため、きちんとご自身の希望年収を伝えしましょう。

税理士法人・会計事務所で5~10年キャリアを積んでおり、年収が500万円以上の場合は、一般企業への転職時に提示される年収が下がることもありますが、税理士法人・会計事務所に比べて、年収は上がりやすいので、実際にオファーを受ける場合は、実績ベースで管理部門の年収が何年でどれぐらい上がっているのかも確認した上で、転職先として検討してみてください。

税理士補助者が一般企業に転職する場合

税理士補助者であっても一般企業に転職することは十分可能です。
補助者であっても業務経験が豊富なら、即戦力として期待できるので採用に前向きな企業は多いです。
この場合も税理士補助者としての実務経験をはっきりとアピールできるように準備することが大事です。

まとめ

税理士は基本的に1人で顧客を担当し業務を完結させるのに対し、一般企業ではチームで業務を進めていきます。当然税理士業務とは関係のない仕事をしなければならないこともあるでしょう。そういう意味では協調性が必要になります。
しかし逆にいえば税理士として仕事をしているだけでは経験できないことができるのです。幅広くいろいろな仕事を経験してみたいというチャレンジ精神の旺盛な人なら、一般企業への転職を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたライター

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