経理の仕事に対して忙しいというイメージを抱いている人がいるかもしれません。実際のところは、年間を通して忙しい時期とそうでない時期があります。そのため、繁忙期にはとても忙しく働かなければいけないことを覚悟しておきましょう。今回は経理の繁忙期について解説していきます。
経理の繁忙期は、一般的には「3月-6月」・「12月-1月」とされています。(3月決算企業の場合)なぜこの時期が忙しいのでしょうか?
それは「年次業務」の存在が大きいとされています。
具体的には、下記の時期が経理の繁忙期(年次業務スケジュール)になります。
3月-5月 | 決算関連業務 |
6月 | 株主総会 |
12月-1月 | 年末調整業務 |
経理の仕事を大きく分けると「月次業務」と「年次業務」の2種類があります。このうち、月次業務は毎月のように発生する業務であり、こちらは特別に忙しくなることはありません。毎月、安定した量の仕事をこなしていくことになります。
一方、年次業務というのは、1年に一度のイベント業務になるので業務量も多くスケジュールも厳密に決まっています。
そして、月次業務と年次業務が重なる時期は、その分だけ経理の仕事の負担が増えるため一般的に繁忙期と考えられています。
具体的に繁忙期の業務について具体的に見ていきましょう。
1年の会社の業績をまとめる業務が年次決算業務です。それまでの決算残高を確定させて、決算書の作成を行います。これによって、売上や原価を確定することができます。
決算期末には実地棚卸を行います。会社の所有する現物について数量や種類を確認していき、棚卸資産の残高を確定します。実物をチェックすることによって、帳簿に記録されている内容とのズレを確認することが大切です。
決算とは、各会計期末に勘定記録を計算整理し,当該期間の経営成績を明らかにするために損益計算を行ない、当該期末の財政状態を明らかにするために資産,負債,資本の金額を計算するときの会計上の一切の手続きのことを言います。
簡単に言えば、決算とは、算(計算)を決(決定)めることを意味するので、今年儲かったのか、それとも損をしたのかを計算するための一連の手続きのことを言います。
決算を迎えると、経理の人は次のような作業を行わなければなりません。
多くの企業は、3月31日もしくは12月31日を決算日として設定しています。経理部の人は、決算日時点で、総勘定元帳におけるすべての勘定の金額を集めて、試算表(trial balance)を作成しなければなりません。そして、試算表を作成することによって、上記の①の作業が完了することになります。
各勘定の借方と貸方を相殺することで、その残高を集めたのが残高試算表です。残高試算の借方と貸方の合計額が一致すれば、正確性は確認されたと考えることができるので、続けて上記②のチェックを行います。
たとえば、帳簿上は期末の商品有高が100個となっていたとしても、実際には盗難のせいで商品が98個しかないような場合もあります。
この場合には、事実に合わせて帳簿の記録を修正しなければなりません。この手続は、一般に決算整理と呼ばれます。決算整理が終わると、帳簿の締切が行われ、収益と費用の勘定が損益計算書としてまとめられ、資産・負債・純資産の勘定が貸借対照表に要約されることになります。
12月には年末調整を行わなければいけません。それぞれの社員の納めるべき税金の金額と実際に納税した額とが一致しない場合には、年末調整をすることで過不足分を精算します。それぞれの社員について経理が年末調整をする必要があるため、かなりの作業量となり、12月は繁忙期になりやすいです。
下記の業務については、すべての会社で行っているわけではありません。
これらの業務に取り組む時期も繁忙期になります。たとえば、中間決算などは義務があるわけではなく、行っている会社とそうでない会社があります。会計監査対応については、上場企業のみが行うべき業務です。税務調査は、税務署から連絡が来たときに行われる業務であり、イレギュラーな仕事といえます。
経理の閑散期は、2月・8月・9月・11月になります。
閑散期については、月末に多少忙しくなることがある程度です。多くの業務は定時内に終えることができるでしょう。従って、繁忙期を過ぎてしまえば、落ちついた環境で働くことができます。
繁忙期の経理は忙しく、採用のための募集要項を確認したり、面接を行ったりする時間を取ることができません。採用の時間を捻出する余裕が繁忙期の経理にはないため、他の時期に比べて求人数が少なくなっています。経理の求人を探す場合は、繁忙期を避けるようにしましょう。
ただし、繁忙期に即戦力となる人材の求人が出る場合もあります。経理としてキャリアアップを目指す場合には、繁忙期の求人にも目を通しておきましょう。
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どんな企業の経理にとっても、繁忙期の忙しさは避けられないものです。ただし、さまざまな対策を取ることによって、繁忙期の忙しさを軽減することはできます。どういった対策が考えられるのか紹介しましょう。
自動化ができるものに関しては、すべてシステム化を進めたほうがよいでしょう。そのほうが仕事の効率を上げることができ、ミスを防ぐこともできます。最近は経理の仕事に関するソフトがたくさん登場していて、繁忙期にはとても役立ちます。
特に中小企業の場合は、経理のスタッフが不足していることがあります。この状態で繁忙期を迎えてしまうと、経理への負担がとても大きくなります。そこで、繁忙期に限定して業務の一部をアウトソーシングするという方法があります。
アウトソーシングすることで、業務の社内負担を減らして従業員の不満を解消することはもちろん、クオリティーに関しても改善が見込めるので是非検討してみると良いでしょう。
どの時期に年次業務に取りかからなければいけないのかはあらかじめ決まっています。そのため、事前にしっかりと準備を進めておくことによって、効率的に進めることができるでしょう。また、年に1度の業務であるたま業務フローを忘れる可能性も大いにあるでしょう。そのため昨年の反省や、フローを言語化して保管しておくことで、次年の仕事の負担が少なくなるでしょう。
経理の仕事の繁忙期についてまとめました。経理の仕事には月次業務と年次業務があり、年次業務の行われる時期には、どうしても仕事が忙しくなります。事前にしっかりと対策や準備を進めておき、繁忙期の忙しさを軽減するとよいでしょう。