「国税従事者の免除制度」をご存知ですか?実は国税専門官には、勤続年数に応じて税理士試験が免除されるという制度があるのです。そのため、国税専門官として引退をしてから税理士になる人も少なくありません。本記事では、国税専門官から税理士への転職について詳しく解説しています!
国税専門官は、税金のスペシャリストとして税金に関する調査や指導を行う国家公務員です。国税専門官が扱うのは国の財源となる税金、つまり「国税」です。国税局や税務署の第一線において、税務のスペシャリストとして、多くの納税者や経済取引に接しながら、税務調査や滞納処分などを行っています。そのため、国の財政基盤を支える大切な役割です。
国税専門官はその仕事内容によって、以下の3つの職種に分かれます。
納税義務がある企業や個人などを訪問して、税の申告が適正に行われているかを調べたり、確定申告の申告方法をアドバイスしたりします。つまり、税務署と納税者の仲介役になって、納税が正しくスムーズに行われるようにします。
主として脱税について調べたり、刑事告発を行ったりします。一般的に「マルサ」ともいわれています。悪質な脱税方法であったり、大きな脱税額であったりする納税者に対して、許可を裁判所からもらって、強制捜査として家宅捜索などを行います。さらに、不正がわかったときは、国税専門官が検察官に告発します。
法人税や所得税のみでなく、贈与税など、全ての税金について滞納したときに、滞納した人の職業や資産などを調べて、法律をベースにして納税について指導したり、支払いを督促したり、場合に応じては財産差し押さえなどの滞納処分を行います。また、特別国税徴収官は、税金の悪質な滞納者に対して税金を正しく徴収する役目があるスペシャリストです。
国税専門官になるには、年に1回実施される国家試験「国税専門官採用試験」に合格する必要があり、その受験には大学卒であることと、21歳以上30歳未満という年齢制限が設けられています。また、合格後も全国の税務署で三年間の実務経験を積み、税務大学校で約一年間の研修を受けた後、正式に国税専門官として各都道府県の国税局に配置されます。
国税専門官は国の財源を支える税務のスペシャリストです。よって税務を伴う業務内容である職業は税法のことを0から勉強するわけでもないので転職先として向いているでしょう。
税理士事務所や税理士法人において、クライアントに税務調査が入った際に非常に役立ちます。国税専門官として学んだ知識やスキルを活かして、前の職場である税務署との交渉役として役に立つことができます。
事業会社の経理部の業務内容としては会計と税法の経験を活かして、企業での申告・納税が正しく行われているかをチェックする、事業会社の経理という道もあります。
事業会社の経理実務を経験することで、将来独立した時にアドバイスの幅が広がるので有益な経験になります。税務調査で得た知見を基に、法令を遵守しつつ業績を確保していく経理を目指したいという方にもおススメです。
財務コンサルティング会社では、単なる節税・資金繰りアドバイスだけでなく、元国税調査官の経験と、国税庁OBや国税調査官との交流による最新の動向についての情報収集力が強みとなります。 財務戦略の立案から経営サポート、有能な財務責任者の育成といった人事戦略にも幅広く携わることができます。
国税調査官出身で銀行や証券会社など、民間の金融機関に転職する人は非常に多いです。
国税時代に身につけた税金や法律の知識を活かし、決算書を読み込んだり分析することのできるスキルは銀行員や証券会社でも重宝されるスキルとなります。
銀行の中途採用は比較的少ないですが、銀行が人手不足になっているケースも実はあり、ねらい目となっています。
商工会議所とは、日本の商工業の発展を目的とした経済団体です。
業務内容は多岐にわたりますが、中小企業の振興や企業支援といった点において、青色申告をはじめとした節税方法や複式簿記による帳簿の付け方、届出書の案内など国税専門官の管理運営部門時代で経験のある業務につける可能性があります。商工会議所は実は年収も高く、入社8年目で年収600万、役職付であれば年収1000万も夢ではありません。
ただし、全国の商工会議所の財務状況次第で待遇が変わってくるため、事前の調査が必須となります。
不動産会社の転職のポイントとしては、営業職としての転職ではなく、経理などのバックオフィスとしての転職です。
不動産会社での経験としては、「決算処理」「調査業務」「経理伝票処理」など。国税専門官で積んだ経験を活かせます。
国税専門官から税理士への転身は、決して珍しいことではありません。そこには主に3つのメリットがあります。
一から税理士試験を受験するのには大変な労力が伴いますが、国税専門官は税務署に10年以上勤務すると、税法3科目が免除され23年間税務署に勤務した場合は会計学、税法の全試験科目が免除されます。
例えば、学生時代に必修科目である会計2科目を合格後、卒業後に国税専門官になれば、10年後には税理士試験の合格者となることができます。10年間税務署で税務調査の現場経験を積んでいると思えば、逆に有益な時間を過ごすことができるでしょう。
現在の申告納税制度は、第二次大戦後のアメリカの占領下で制度化されたものです。税理士制度もその時に生まれたのですが、需要に対して圧倒的に数が少なかったため、税務に関するスペシャリストである国税専門職に対して、一定のキャリアを持つ人を無資格でも税理士にする方策が取られたという背景があります。
勤続年数や退職理由によって、国税専門官の退職金は違います。しかし、もともと国税専門官は比較的月額給与が高額のため、ある程度高額の退職金が自主退職でも支払われます。税理士の独立開業の資金として、このような退職金を充てるケースが多くあります。
そして、元国税専門官という事で、税務調査のプロフェッショナルとして今までの知識と経験を活かすことができるほか、顧客にも信頼を与えることができます。もちろん、調査と実際に税理士とは業務の内容は異なりますが、税務職員の習性や考え方を知っているというのは、税理士としても大きなアドバンテージです。
士業は定年退職がないのがポイントです。そのため国税専門官を退職してから税理士に転身するのは、定年退職まで勤め上げた人が多く、実は税理士の平均年齢を押し上げる要因になっています。
国税専門官はもともとの月額給与が専門職ということもあり、他の国家公務員と比べて比較的高給です。そのため、23年間の税理士試験全科目免除後の自主退職であっても、ある程度高額の退職金が支給されます。
さらに、定年退職であれば、退職金と公務員の年金をもらいつつ、ゆとりを持って税理士の仕事を行うことができるのもメリットといえます。
転職する際に気になる点として、また新しく知識をいれなきゃいけない…、勉強しなきゃ…となって躊躇してしまう方もいるでしょう。しかし、国税専門官から税理士に転職するにあたって、前職の知識が直接、転職先に利用できるといった点はかなりアドバンテージになります!
国税専門官が税理士に転職するタイミングは大きく分けて3つあります。
国税専門官として10年以上勤務し、税理士試験の税法3科目が免除となったタイミングでの転職です。この場合は、学生時代・勤務期間で残りの必修兼会計2科目を合格していれば、10年後に5科目合格の状態で退職できます。これから2科目の合格を目指す人ももちろんいます。
税理士試験が全科目免除となる23年後。大卒後すぐに国税調査官となっていたら40台半ばでの転職となります。
年齢的に転職先を探すのが難しくなるため、税理士として独立開業を目指す人も多いです。
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退職後に税理士登録をする人も少なからずいます。しかし、現在では退職OBへの顧客あっせんがなくなっているので、顧客開拓の必要があります。
最後に、税理士と国税専門官の年収の違いについてご紹介します。
多くの税理士は、会計事務所や税理士事務所に勤めています。勤めるところによって年収は違っていますが、優れたクライアントを多く持っていたり、大会社の顧問をしていたりする事務所は、比較的年収がいいケースが多くあるようです。
全体的には、年収の平均は600万〜900万円ですが、ベテランであれば1000万円以上のときもあります。さらに、独立開業して成功するともっと多くの年収を獲得することもできます。
国税専門官の給与体系は、国家公務員の税務職俸給表が適用になります。年収は役職や勤続年数によって違いますが、基本的に昇給が毎年あります。
年収の平均は、40歳以下では630万円くらい、50歳以上では900万円近くになるときもあるようです。
手当については、他の国家公務員と同じように、ボーナスに当たる期末・勤勉手当、地域手当、扶養手当、住居手当などが適用されます。
国税局から税理士に転身をして、独立開業をするケースは多くありますが、近年は、独立開業と共に、転職エージェントを活用しつつ、主に大手の税理士法人や会計事務所にて、元国税専門官のスペシャリスト採用で転職を果たす人も出てきました。
独立開業するのか、あるいは転職するのかは、自分の経験と年齢もあわせて慎重に検討した方が良いでしょう。転職の経験者や専門家への相談をおすすめします。