士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

財務諸表規則とは?徹底解説!

公認会計士 大国光大
財務諸表規則とは?徹底解説!

会社は決算を提出するにあたって様々な規則に沿った会計処理をしなければなりません。会計処理の後は、どのように開示するかを決定しなければならず、今回紹介する財務諸表規則はその一つとなっています。
そこで、今回は財務諸表規則について解説します。

財務諸表規則とは?

財務諸表規則とは、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の略称であり、実務上は「財規(ざいき)」という名称がよく用いられます。
財務諸表規則は昭和38年に当時の大蔵省から発効された規則ですが、今まで少しずつカスタマイズされて今日まで使われる規則となります。

財務諸表規則は通常上場会社が準拠すべき規則であるため、中小企業にとっては特に関係のない規則と言えるかもしれません。
これは、中小企業では会社法に準拠していれば特に財務諸表規則に準拠する必要はなく、税務申告書が合っていれば特に問題ないとされるためです。そのため、例えば借入金について短期と長期にわけるべきか悩んだ末に全て短期にしたり長期にしたりしても特に誰からも問題とされなかったりします。

しかし、最近では金利を優遇してもらうために「中小企業の会計に関する指針」に沿って会計処理をすることを求められるようになったため、財務諸表規則について全く準拠していないということはなくなってきたと言えます。

財務諸表規則を遵守しなければならない会社は?

先ほどお話した通り、財務諸表規則は上場企業において遵守されるべき規則という話をしました。ではどのような点で遵守しなければならないのでしょうか。
財務諸表規則では、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書について遵守すべき表示の配列やどのような科目を別掲しなければならないかが記載されています。その為、上場会社では自主的に財務諸表規則に準じた方法で開示書類を作らなければならないですし、公認会計士等による監査についてもこの規則に準じているかどうかを見られることとなります。

ちなみに、子会社が無い場合は財務諸表規則のみに準じた開示をすればよいこととなりますが、これが子会社を有していて連結財務諸表を作成しなければならない会社の場合は、昭和51年に発行された「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」すなわち連結財務諸表規則に準じて連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書を作成することとなります。
両者の規則はそれぞれバラバラに適用される基準ではなく、相互に補完しあって作成されている基準ですので内容が似ています。

財務諸表規則と他の規則との違い

財務諸表規則は上場会社が適用するべき規則というお話をしました。しかし、他にも財務諸表を作成するにあたって企業が遵守すべき規程は存在します。
まず、どの会社も準拠しなければならない規則としては、会社法があります。会社法と、会社計算規則に沿って計算書類等を開示しなければなりません。ちなみに、上場会社では基本的に財務諸表規則に沿って財務諸表を開示することとなりますが、株主に開示する計算書類については会社計算書類規則に沿って開示することとなります。つまり、2つの開示書類を作成しなければならないので、試算表までは同じものを使い、その後の開示書類は用途に合わせて変化させることとなります。
この他に、各種の会計基準や実務指針や適用指針等が個別の論点について存在する場合、その会計基準等に沿って会計処理、開示を行う必要があります。

なぜ様々な規則が存在するのか?

財務諸表規則以外に連結財務諸表規則、会社計算規則、各種会計基準や実務指針がありますが、なぜこのように様々な規則が存在するのでしょうか。

まず、財務諸表規則は投資家目線に立って比較可能性を担保するために設けられています。それぞれの会社が大雑把に会計処理を行わないように、一律の基準を設けているのです。

また、会社計算規則は既存株主が議決権を行使するために必要最低限の開示内容を定めています。財務諸表規則よりも簡素な財務諸表となりますが、細かい会計内容については会社の帳簿を請求して見ることも理論上は可能であることも理由の一つとなっています。
さらに、それ以外の会計基準や実務指針については、財務諸表規則等では網羅しきれない細かい内容について触れられており、会計処理を行う上での指針となっています。

まとめ

財務諸表規則は主に上場会社が従うべき規則ではありますが、近年は様々な様式の決算を作成することが負担であると考えられるため、一本化する動きがあります。また、中小企業では公開する目的よりも、既存株主の議決権行使の為や税務申告書作成のために作られることが多い為、あまり細かい内容を求めないようになっています。
各社、どの規則に合わせて開示書類を作るかどうかを判断して財務諸表を作成する必要があります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事