前回、会社が従う開示の規則として財務諸表規則を紹介しました。しかし、会社が従うべき規則は財務諸表規則ばかりではありません。
今回紹介する財務諸表等規則ガイドラインはそんな規則の一種となります。そこで、今回は事務諸表等規則ガイドラインについて解説します。
まずは前回ご紹介した財務諸表規則についておさらいします。
財務諸表規則とは、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の略称であり、実務上は「財規(ざいき)」という名称がよく用いられます。財務諸表規則は通常上場会社が準拠すべき規則であり、会計処理によって積み上げられた試算表をベースに投資家目線で開示する書類についてのルールを定めた規則となります。
通常財務諸表規則は上場会社が適用すべき規則となりますが、最近は保証協会などから「中小企業の会計に関する指針」に沿って会計処理をすることを求められるようになったため、財務諸表規則について全く準拠していないということはなくなってきたと言えます。
財務諸表等規則ガイドラインとは、正式には『「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について』をいいます。名称が長いので、通称「財規ガイドライン」と呼ばれます。
財務証憑等規則ガイドラインは、財務諸表規則に記される開示内容について、細かく内容を定めたものとなります。財務諸表規則が従うべき規則であれば、財務諸表等規則ガイドラインはルールの解説書とも言えます。
よって、財務諸表規則と財務諸表等規則ガイドラインは独立して使用するものではなく、それぞれが補完しあっているルールであるため、同時に参照する必要があります。
財務諸表等規則ガイドラインは、財務諸表規則の数だけ種類があります。
具体的には、まず単体決算を開示するための財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則についての財務諸表等規則ガイドラインが存在します。これは、全ての上場会社が主に適用するべき財務諸表規則とそのガイドラインとなります。
また、子会社があり連結財務諸表を作成している会社の場合は連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則についてのガイドラインである、連結財務諸表等規則ガイドラインに従うこととなります。
この他、上場会社は四半期決算を行う必要があるため、四半期連結財務諸表規則ガイドラインや、四半期財務諸表等規則ガイドラインに従う必要があります。
この他、ゴルフ場等の上場はしていないものの有価証券報告書を提出しなければならない会社の場合は半年に一度提出する半期報告書のための中間連結財務諸表規則ガイドラインや中間財務諸表等規則ガイドラインが必要となります。
財務諸表等規則ガイドラインに似たガイドラインとして、財務諸表等規則に係る事務ガイドラインが存在しました。
これは、各種公表されている細かい会計基準やその適用指針に係るガイドラインにあたり、財務諸表等規則ガイドラインよりも細かい取り扱いが記載されていました。
例えば、「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」の取扱いについて、「1株当たり当期純利益に関する会計基準」の取扱いについて、「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」の取扱いについて等が存在しましたが、平成21年に一斉に廃止されました。
廃止はされたものの、これらの規則の考え方自体は大きく変わっていないため、今でも根強く考え方は残っています。
財務諸表等規則ガイドラインは財務諸表等規則の解説書のような位置づけであるとお話しました。では、具体的にどのようなことが記載されているのでしょうか。
例えば、財務諸表等規則ガイドライン32-1-11にはこう書かれています。
「当初1年を超えた後に費用となるものとして支出された前払費用について、1年内に費用となるべき部分の金額がある場合において、その金額が僅少であるものについては、当該金額を流動資産として区分しないで、規則第32条第1項第11号の長期前払費用に含めて記載することができるものとする。」
財務諸表等規則では具体的な分類方法が記されていますが、ここまで詳細には記載されていません。よって、この例で言うと財務諸表等規則ガイドラインに沿って重要ではない1年内に費用化される長期前払費用も重要性に応じて固定資産に分類することができることがわかります。
これより細かい重要性の判断については企業に任されるものの、ある一定のルールとしては会社と監査をする公認会計士との間での共通認識となります。
財務諸表等規則ガイドラインは上場会社が従うべき財務諸表等規則の解説書であり、会社のグループ構成によって様々な財務諸表等規則ガイドラインがあることが分かったと思います。
表示に関してはかなり細かく記載されている為、上場会社等で経理する場合は必ず参照しなければならない重要な基準のガイドラインであると言えるでしょう。
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