公認会計士は弁護士、医師と並ぶ三大国家資格の一つで、最難関の公認会計士試験に合格しなければ監査という専門性の高い職責を全うすることができません。それだけに、合格したらそれなりの高収入は期待できそうですよね。
そこでこの記事では、公認会計士はどれくらい稼げるのか、その年収について解説します!
2024年最新の厚生労働省の調査によると、公認会計士の平均年収は746万円です。
月給 | 506,400円 |
賞与等 | 1,390,500円 |
年収 | 7,467,300円 |
前年の平均年収である627万円から119万円増加しました。
ただ、この職業区分は公認会計士だけでなく税理士も含んでいるため、公認会計士単体で見ると平均年収はより高くなることが予想されます。
どちらにしても、日本の平均年収である461万円に比べると、約300万円ほど高くなっていることからも、公認会計士の年収は一般的な平均年収と比べても高いと言えるでしょう。
参照|令和5年 厚生労働省 賃金構造基本統計調査
参照|令和5年分 民間給与実態統計調査
平均年収はかなり高めだといえる公認会計士ですが、初任給についてはどうなのでしょうか?
公認会計士試験に合格した9割以上が働く監査法人の初任給は、平均30~35万円程度です。
参考までに一般的な新卒社員の初任給は21万円程度ですので、1年目の年収で考えた際には、月給と賞与を含めて200万円以上違いが出る場合もあるという計算になります。
このことからも、公認会計士のもらえる給与はかなり高いと言えるでしょう。公認会計士の初任給については、以下の記事でも詳しく解説しております。
〈参考記事〉
このように公認会計士の年収が高いのはなぜでしょうか?その理由として、「専門性・需要の高さ」および「監査法人の年収水準の高さ」があります。
それぞれ解説していきます。
公認会計士資格は、医師や弁護士に並ぶ三大国家資格の一つであり、専門性と難易度が非常に高いです。
合格率も約10%と、誰でも簡単に取得できるものではありません。
さらに、公認会計士しか行えない監査というのは、ほとんどすべての企業が義務付けられており、需要も高いです。
このように、公認会計士の業務は専門性も需要も高いため、高い報酬が支払われ、必然的に年収も高くなります。
〈参考記事〉
公認会計士試験に合格した人の約9割が監査法人に就職してキャリアをスタートさせます。
監査業務の専門性が高いことや依頼主となるクライアントの多くが大企業であることもあり、監査法人の年収水準は非常に高いです。また、そこでキャリアを積んだ公認会計士が転職する際に、転職先の企業がオファーとして提示する年収も高くなります。
こういった背景から、公認会計士が転職する際には非常に高い金額でオファーを獲得することができ、結果的に公認会計士の年収が高くなっているのです。
ここまで公認会計士の年収が高い傾向にあることをお伝えしましたが、もちろん様々な条件によって個々の年収は変わってきます。
この章ではまず、役職および年齢による年収の変動について解説します。
監査法人で働く公認会計士の年収は役職によって変わります(別の監査法人に転職するとしても、同じ役職で転職することが一般的です)。そんな役職と年収の相関関係は下図の通りです。
当然役職が上がるに連れて年収も上昇しますが、ピラミッドが示すように、高い役職ほどその人数は少なくなっています。
また、特に規模感の大きい法人においては年功序列の傾向が強く、実務経験の長い4,50代の社員がシニアマネージャーやパートナーになることが多いです。
年齢別の公認会計士の年収に関しては、下表の通りです。
20 ~ 24歳 | 4,496,200円 |
25 ~ 29歳 | 5,896,100円 |
30 ~ 34歳 | 6,828,000円 |
35 ~ 39歳 | 8,288,900円 |
40 ~ 44歳 | 8,776,700円 |
45 ~ 49歳 | 8,377,200円 |
50 ~ 54歳 | 9,304,200円 |
55 ~ 59歳 | 6,222,900円 |
60 ~ 64歳 | 8,702,700円 |
65 ~ 69歳 | 7,228,300円 |
70歳~ | 6,860,800円 |
50代までは基本的に役職と年収が連動しているため、年齢が上がるほど年収も上がるという構図になっています。
もちろん30代以降で公認会計士試験に合格したリ、合格はしていたけどしばらくは別業界で働いていたという方に関しては、上記の相場より低い年収の可能性が高いでしょう。また、若いうちから独立したり、監査法人で結果を出してスピード出世を果たした場合などは、逆により高年収を稼げる可能性もあります。
ただ大枠で見るとそのようなケースは稀であり、50代前半までは一定のペースで年収が上がっていくと考えるのがよいでしょう。
その一方で、50代後半以降は上下のバラつきがあることが分かります。50代に差し掛かると、公認会計士として十分なキャリアを積んでいれば多様なキャリアパスを描くことができるため、年収も差が出やすいのがその要因といえるでしょう。
この年齢層では、監査法人のパートナーへの昇進やや独立開業により年収を上げていく方がいる一方で、年収はそこまで高くないもののライフスタイルに合わせた仕事をするという選択肢もあります。このように、50代後半以降の年収のブレは、ご自身の希望に合わせた働き方や仕事ができることの裏返しとも言えるでしょう。
〈参考記事〉
公認会計士の多くが監査法人で働きますが、その規模感によっても年収が変わってくる傾向にあります。監査法人の中で特に規模の大きい法人として認知されているのが、Big4です。そこで、ここではBig4とそれ以外の監査法人の年収の違いを見ていきましょう。
Big4監査法人の平均年収を一覧でご紹介すると、下表の通りです。
公認会計士を持っていない一部の社員が含まれているにも関わらず、各法人で700万円~900万円弱のかなりの高年収が実現できるといえます。
このような高年収が実現できる理由としてまず挙げられるのが、クライアントの規模感の大きさと案件の多さです。Big4の四法人だけで監査法人の9割ほどのシェアを占めているため売上金額が大きく、その分社員の年収にも反映されているのです。
また、外資系企業や子会社を持つ企業など、監査の難易度が高い企業からの依頼を多く受けていることも、Big4監査法人の年収が高い要因といえます。
〈参考記事〉
Big4以外の監査法人の年収は、600万円~700万円が相場とされています。Big4と比較するとやや低めの年収ということになります。
ただし、Big4ほど明確に役職が分かれていないケースもあり、昇給ペースが速い傾向にもあるため、実力で年収を上げていきたいという方には向いている職場でしょう。また、Big4に比べてハードワークになりにくいため、安定した働き方をしたい方にも向いています。
〈参考記事〉
ここからは、仮に監査法人で働かない場合、年収はどのように変わるのか就職先ごとに解説していきます。公認会計士のキャリアとして、勤務会計士として一般事業会社などで働くケースと、独立開業するケースがあります。
まず最初に、企業で勤務会計士として企業で働く場合の年収を見ていきましょう。
企業で働く場合には、勤務先の事業規模や職種などにより年収も変化します。
〈参考記事〉
勤務会計士として働ける代表的な職場として、監査法人以外だと以下が挙げられます。
それぞれの職場における年収を見ていきましょう。
公認会計士の資格は税理士の資格も兼ねているため、税理士法人や会計事務所で働くということもできます。
事務所の規模感にもよりますが、会計事務所での勤務となると、監査法人に比べて年収が下がってしまうことがほとんどでしょう。
その理由としては、税理士法人や会計事務所の主な業務は税務顧問業務であり、監査法人での経験だけでは即戦力として活躍することが難しいからです。しかし、税務業務をキャッチアップしていったり、M&AやIPO業務などの税務+αの付加価値を発揮することで、監査法人時代よりも高収入を得ることも可能です。
〈参考記事〉
公認会計士の就職先として、FAS事業を行っているコンサルティングファームも挙げられます。
他の就職先に比べ比較的給与水準も高く、キャリアを積んでいけば年収数千万も期待できるでしょう。
コンサルティングファームでの勤務はかなりハードワークなこともありますが、その分多くの経験を積むことができ、成果を出せれば年収アップも期待できるでしょう。
〈参考記事〉
公認会計士の資格がある場合、一般事業会社でインハウスの会計士として働くこともできます。
一般事業会社に勤務する場合、その人の経験年数と該当する会社の規模やポジションによって大きく異なるというのが実情です。
■ 大手企業に転職する場合
例えば、誰もが知るような大企業に公認会計士資格保有者として就職する場合は、同じくらいの年齢の職員にプラスして資格手当が与えられる程度と考えてください。とはいえ大手企業の年収水準は高いので、30代で1,000万円程度の年収は確保できるでしょう。
■ ベンチャー企業のIPO業務を担当する場合
また、IPO準備中の会社に就職する場合には、経理部長や経理担当取締役として迎えられることが多いです。
これから上場を目指すため、他の従業員の平均年収はそれほど高くはありませんが、経理部長以上の待遇での採用となるため、700万円~1000万円あたりでの募集が多くなります。また、上場に成功した際に株式を保有していた場合はキャピタルゲイン等のメリットを享受できる可能性はあります。またCFOなどの役員のポジションを狙うことも可能です。
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公認会計士のキャリアとして独立開業もあります。
公認会計士の中には、監査法人で数年間キャリアを積み、将来的には自身で会計事務所やコンサルティング会社を立ち上げる方もいます。
そんな独立している公認会計士の年収は1,000万円~3,000万円と大きな幅があるのが特徴です。これはあくまで平均値に近い数字であり、実際は100万円程度の人もいれば、5,000万円以上の人もいるのが現実です。
この差をつける要因となるのは、公認会計士としてのスキル以上にクライアントを獲得する営業力やプロモーション能力、一企業を運営する経営力などの有無です。
収入の安定性は無いものの、資質や努力次第では超高年収を実現できるのがメリットといえるでしょう。
〈参考記事〉
ここからは、性別ごとの公認会計士の年収を見ていきましょう。
下記は令和5年賃金構造基本統計調査書の公認会計士・税理士の企業規模の年収相場です。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
全年齢平均 | 738万円 | 555万円 |
20~24歳 | 366万円 | 378万円 |
25~29歳 | 557万円 | 414万円 |
30~34歳 | 699万円 | 457万円 |
35~39歳 | 804万円 | 621万円 |
40~44歳 | 840万円 | 647万円 |
45~49歳 | 835万円 | 687万円 |
50~54歳 | 990万円 | 815万円 |
55~59歳 | 591万円 | 570万円 |
60~64歳 | 1,031万円 | 663万円 |
65~69歳 | 729万円 | 440万円 |
全体的に男性の方が年収が高い傾向にあることがわかります。
また男性の場合、60~64歳で最高額(1,031万円)に達し、女性の場合には50~54歳で最高額(815万円)という結果でした。
ただ、全体の男女別の年収差は約287万円であることを踏まえると、公認会計士の性別による年収の違いは少ないと言えます。
この年収差は女性の方が正社員ではない就業形態で働いたり、正社員でも時短勤務や残業なしでの働き方をする割合が高いことに起因します。つまり、ほとんどどの業界でもこの程度の差分は発生してしまうのです。公認会計士は資格があって成り立つ専門的な職業ですので、男女の仕事内容の差も実質的な待遇の差もほとんどないと言えるでしょう。
〈参考記事〉
これまで、公認会計士の年収についてや職場ごとの比較を見てきましたが、公認会計士が年収アップを目指したい場合はどのようなプランがあるのか、解説していきましょう。
まずは、オーソドックスに監査法人で昇格していくという方法です。
先ほどご紹介したように、監査法人の職階はかなり明確でキャリアステップの計画を描きやすいのが特徴となります。業績の評価を得て、勤務年数と共にキャリアステップを踏んでいけば確実に年収をアップさせることができるので、安定的に年収をアップさせるにはとても良いでしょう。
先ほどもご紹介しましたが、公認会計士の資格は税理士資格も兼ねているので、税理士事務所を開業することができます。大手監査法人と年収が変わらないこともありますが、個人で業務を遂行することができるため、業務量の調節もでき、ワークライフバランスを保つことができます。
公認会計士の年収は、就業先によって大きく異なってくることも事実です。例えば、BIG4系の監査法人に勤めた場合と、小規模監査法人に勤めた場合とでは年収も昇給スピードも変わります。今いる職場でこれ以上の年収アップが見込めないと思う場合には、他の監査法人に転職をすることもおすすめです。
年収の水準が高い職場に転職するだけで、年収が大幅にアップすることも考えられます。
ご自身で、転職先を探すのには不安があるという方はぜひ転職エージェントを活用してみましょう。
ヒュープロでは、会計士をはじめとした士業部門でのご転職をお考えの皆さまをサポートさせていただいております。
まだ転職を考えていないが、情報収集をしたいという方もお気軽に会員登録をしてみてください。
上記のような年収アップのコツはあるものの、年収3000万円はかなり高い目標に感じるでしょう。しかし、実現できるとしたらモチベーションが上がる数字ですよね。果たして、公認会計士の資格を活かして年収3000万円は目指せるのでしょうか?
年収1,000万円は公認会計士であればだれでも目指せる範囲です。
監査法人において実績を積んでマネージャーなどに昇進することで、最短で入社10年以内には年収1,000万円が目指せるでしょう。また、一般企業でも1,000万円以上のオファーで公認会計士を採用するケースもあるため、どのフィールドであっても公認会計士が年収1,000万円を実現することは十分できるといえます。
実績やスキル次第で年収2,000万円も可能です。
監査法人においてはパートナーになると年収2,000万に到達できるといえます。また一般事業会社であれば、ベンチャー企業のCFOであったり、外資系のコンサルタントなど、報酬そのものが高い会社に転職することで実現できるでしょう。
年収3,000万円は狭き門ではあるものの、目指すことは可能です。**
上述した監査法人のパートナーとして経験を一定数積んだ会計士や、会計事務所やコンサルティング会社を独立開業させた上で、法人化をするなど事業拡大を実現した会計士が年収3000万円を叶えられます。
ここでは実際に転職で年収UPに成功された公認会計士の事例を紹介させて頂きます。
24年の経理業務経験があるSさんは、監査対応や税理士対応に加え、業務フロー構築の経験もされていました。
業務フロー構築は難易度がかなり高い経験ではあるものの、なかなか個人で探すのは難しいポジションでした。
ですがSさんは、転職活動の早い段階からヒュープロをご利用いただいていたため、求人の選定に時間をかけず、マッチした求人を専任エージェントから提案してもらうことができました。
結果的に、業務フロー構築の経験を評価され、年収も上げることができ、さらなるスキルアップができる企業への転職を成功されました。
中小監査法人で残業時間がかさんでしまっていたFさんは、働き方を改善すべく転職を検討していました。
資格や経験は十分なものの、面接選考への不安があったFさんですが、弊社の専任エージェントから、各選考フェーズに応じた面接対策を実施させていただくことにより、見事BIG4の1つからの内定を勝ち取ることができました。
公認会計士の年収については以上です。大手監査法人に所属してその中でキャリアを積んでいけば、ある程度の段階で年収1,000万円以上は当たり前、さらに高い年収を狙うのも不可能ではありません。難易度の高い国家試験に合格した価値があると言えるでしょう。
また、先ほども紹介したように公認会計士は監査法人で経験を積んだ後も、独立や事業会社への転職など幅広いキャリアが選択可能です。大切なのは、公認会計士になってからどのような専門性を高め、どのようなキャリアを歩むかということです。ぜひ自分なりのキャリアプランを設計して実現してください!
公認会計士試験に合格すれば、必ずしも高年収が保証されるわけではありません。それでも、挑戦する価値はあると思います。資格さえ手にすれば、監査法人勤務後、独立して年収数千万円を手にする可能性もあります。
簡単な試験ではありませんが、勉強すれば結果が出る試験でもあります。公認会計士となって社会で活躍する姿をイメージすれば、やり切れるのではないでしょうか。ぜひ、これから公認会計士試験に挑まれる方は頑張ってください!
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最後に、公認会計士を目指す方からよく寄せられる疑問についてQ&A形式でご紹介していきます。
公認会計士は、その市場価値の高さから非常勤でも生活を保てるほどの収入を稼ぐことができるとされています。そのため、他の仕事やライフステージに合わせて非常勤で働く公認会計士もいらっしゃいます。
非常勤の公認会計士の多くは、企業の非常勤監査役などとして働いており、その時給は5,000円~8,000円ほどとされています。
定年で監査法人を退職した60歳以上の会計士にも人気の働き方でもあることから、公認会計士が永続的に活かせる資格だということがお分かりいただけるでしょう。
一般的には、税理士よりも公認会計士の方が稼げると言われています。
その理由として、公認会計士の方が税理士に比べ取得が難しいこと、また公認会計士資格があれば税理士業務にも対応できるということが挙げられます。
また、公認会計士のキャリアとして代表的な監査法人に比べると、税理士は主に小規模や零細の会計事務所で働く場合が多く、それに伴い年収も低くなるという傾向があります。
〈参考記事〉