年末調整は、勤務先が給与から毎月引去りしている源泉徴収の金額と、年間の総支給額から算出される所得税との差額を調整することです。年末調整では税金が還付されることが多いですが、不足している場合は追加徴収もあります。本記事では、年末調整の還付金が帰ってくる場合と追加徴収される場合、それぞれのケースについて解説します。
毎月の給与から天引きされている源泉所得税は、あくまで概算。そのため、年間の総支給額が定まる12月の給与で調整する必要があります。
この時に、すでに支払い済みの源泉所得税が、本来の所得税よりも多い場合は還付金があり差額税額が還付されるのです。その方法は2通りあります。
(1) 年末調整を行った月分(通常は12月分。納期の特例の承認を受けている場合には、その年7月から12月までの分)として納付する「給与、退職所得及び弁護士、司法書士、税理士等に支払われた報酬・料金に対する源泉徴収税額」のうちから差し引き、過納となった人に還付します。
(2) 年末調整を行った月分の徴収税額だけでは還付しきれないときは、その後に納付する「給与、退職所得及び弁護士、司法書士、税理士等に支払われた報酬・料金に対する源泉徴収税額」から差し引き順次還付しますが、次の場合には、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を作成し、必要書類を添付して給与の支払者の所轄税務署長に提出し、税務署から還付を受けます。
出典:国税庁 WEBサイト
給与明細を確認した際に、毎月であれば源泉徴収されている所得税額の箇所が、還付金がある場合はマイナス表示になります。その分が還付されている金額です。
また、本来であれば年末調整されるはずが、企業の倒産などによって、給与自体の受け取りがなくなってしまった場合や、12月より前に退職して年末調整を受けられなかった場合なども、その旨を税務署に所定の届出をすることで還付を受けることができます。
還付金は月々の源泉徴収が過大になっていた場合に、その金額が戻ってくるケースですが、逆に源泉徴収していた所得税が足りなくなるケースもあります。この時は差額の税額を年末調整をする月分の給与から徴収し、なお不足額が残る時は、その後に支払う給与から順次徴収します。
通常であれば、源泉徴収税額の元となる算出基準は、給与全額に対してやや多めになっているので還付になるケースが多いのですが、年内に給与改定があって、給与が増額したり、インセンティブなどで臨時に多額のボーナスを得たりした場合、扶養家族が減少した場合などにこうした事が起こります。
もし、年末調整をする月分(通常は12月)の給与から所得税の不足額を徴収した時に、その月の税引手取給与(賞与がある場合には、その税引手取額を含む)が、その年1月から年末調整を行った月の前月までの税引手取給与の平均月額の70パーセント未満となるような人については、不足額を翌月1月と2月に繰り延べて徴収することができます。
いくら所得が増えたとはいえ、急激にその月の給与が少なくなってしまっては、生活に支障がでてしまうなどの困難が見込まれるからです。
この場合は、「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を作成して、税務署に提出します。しかし、通常の税額については繰延は認められませんので、年末調整をする月分の給与や賞与についても通常の税額計算は行い、税額を徴収します。
出典:国税庁 WEBサイト
それでは、実際に年末調整の還付金や追加徴収を行う場合にどう仕訳をするのか見てみましょう。
年末調整の仕訳は、「預り金」を使って調整して給与で調整するケースが一般的なので、それで解説します。
(1)還付金がある場合の仕訳
還付金をまとめて給与で精算する場合は、還付金額を「預り金」として、貸方に記載します。
(2)追加徴収する場合の仕訳
追加徴収する場合は、年末調整不足額を「預り金」として新たに貸方に追加します。
当コラム内では年末調整についての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
・「年末調整」についてその手続きについて解説
・税理士が行う年末調整業務って何?わかりやすく解説します!