従業員が確定申告をするためには、年末調整をした結果が載った源泉徴収票が必要です。しかし、源泉徴収票に正しい計算結果を示すためには、税に関する深い知識が必要です。扶養控除申告書、保険料控除申告書といった書類の内容確認、税額計算、源泉徴収表の発行など、年末調整業務は多岐にわたりますが、専門知識がないと対応が難しく、時間もかかります。はじめて確定申告をするのでやり方がわからない人や、手続きが面倒な人は、税理士に年末調整業務を任せることができます。この記事では、税理士による年末調整についてわかりやすく解説していきます。
年末調整とは、毎月の給与から引かれている所得税を、1年間の所得税として過不足が無いよう年末の最終給与・賞与で調整・清算することを言います。給与から毎月引かれている所得税は概算で計算されているので、年末調整をすることによって正しい所得税を計算します。
源泉徴収をした税額の1年間の合計額は、給与の支給を受ける人の年間の給与総額について納めなければならない税額と一致しないのが普通です。その原因としては、①源泉徴収税額表は、年間を通して毎月の給与の額に変動がないものとして作られており、実際は年の中途で給与の額に変動があること、②年の中途で控除対象扶養親族の数などに異動があっても、その異動後の支払分から修正するだけで、遡って各月の源泉徴収税額を修正することとされていないこと、③生命保険料や地震保険料の控除などを挙げることができます。
会社は、従業員から適用される所得控除や税額控除の情報を集めることによってはじめて正確な所得税額を計算することが可能です。つまり、概算で給与天引きしていた所得税額とその差額を調整するのが年末調整と言えます。年末調整をした結果、本来納めなければならない税額よりも少ない場合には、正しい額の税金を収めるためにお金を徴収しなければなりませんし、逆に、多かった場合には、払いすぎている分を還付金として従業員に返さなければなりません。原則として、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人に対しては、年末調整を実施して、正しい計算結果の源泉徴収票として発行する必要があるので、正しい源泉徴収票を発行するためにも、きちんと税金の計算をしなければなりません。
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年末の忙しい時期で、経理スタッフの手が回らないなどの場合、税理士に年末調整を委託することが可能です。また、中小企業などにおいては、税制度の専門知識が不足しているために、実務が正しくできているかがわからない場合などにも、税理士に年末調整を任せれば安心です。税理士は税金に関する専門知識が豊富なので、申告漏れやミスなどが発生しなくなります。間違った計算・経理処理によって従業員に損害を与える可能性もありますし、源泉徴収が必要な従業員に対して適切な書類が提示できないことは会社としては致命的です。そのような場合には、税理士に年末調整業務を任せてしまいましょう。
税理士に年末調整を任せる場合には、税理士事務所に連絡しなければなりません。税理士事務所によっては、年末調整業務のみの依頼を断っているところもあるので注意が必要です。
税理士に年末調整を任せるメリットは、確実に申告ができるということと、手続きに必要となる時間を大幅に節約することができることです。
年末調整を税理士に依頼する場合には、税理士に必要な書類を渡さなければなりません。税理士が年末調整のために必要とする書類は、源泉徴収票、保険料控除申告書、扶養控除等申告書、給与をまとめた表(給与台帳)などの書類です。これらの書類がなければ、どんなに優秀な税理士でも年末調整業務はできません。
これらの書類があれば、税理士が、本年分の給与総額を計算し、給与所得控除後の給与金額の計算が可能となります。その後、各種保険料の控除額の計算、扶養控除等の計算、配偶者特別控除額の計算などがなされます。こうした控除を経て、課税給与所得金額が計算されることで年末調整が可能となります。
税金の計算方法などは、税法の改正によって毎年のように変わります。また、複雑な計算をしなければならないために、計算ミスも起こりがちです。年末調整は年末の繁忙期に行なうことがほとんどであるため、時間がないなかで計算をしなければなりません。
そんな状況のなかで、自分の会社だけで正しい税金を計算し、年末調整をすることはたいへん難しくなります。特に、専門的な税金に関する知識を有する人材が不足しがちな中小企業では、間違った計算をして従業員に損害を与えたりするリスクがあります。そのようなリスクが気になる場合には、年末調整を税理士に任せてしまうと安心です。税理士は税務の専門家なので、年末調整に必要な手続きを全て適切に行ってくれます。