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金融商品の種類は?それぞれの会計処理について解説

公認会計士 大国光大
金融商品の種類は?それぞれの会計処理について解説

現在日本には投資目的やそうでないものも含めて様々な金融商品が存在します。金融商品が増えれば増えるほど企業の財務諸表に計上される金融商品も増えるため、それぞれに会計処理が決まっています。
今回は金融商品の種類と、それぞれの会計処理について現役公認会計士が解説します。

金融商品とは?

一般的に金融商品というと、先物やFX等が思い浮かぶかもしれませんが、会計基準では金融商品が定義されています。
金融商品会計基準によれば、金融資産とは、現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引(以下「デリバティブ取引」)により生じる正味の債権等をいうとされています。
金融負債とは、支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務等をいうとされています。
このように例示列挙されていることから例示に沿って会計処理を解説します。

金融資産の会計処理

①現金預金

現金預金の会計処理は通常の簿記で行う処理で問題ありません。期末時点での預金残高を貸借対照表に計上し、受け取った利息を営業外収益の受取利息に計上すればほぼ終わりです。
預入期間が1年を超える定期預金については固定資産の投資その他の資産に含めて表示することとなります。

②受取手形及び売掛金

受取手形及び売掛金についても、売上の発生時に売掛金を認識し、受取手形を受け入れた際に受取手形勘定とします。
受取手形と売掛金は、期末時点での貸倒発生率を過去の実績より見積り、貸倒引当金を計上します。ただし、破産している、実質破産しているような債権は個別に貸倒引当金を計上します。
また、基本的には入金時にこれらの債権を消滅させる仕訳をしますが、ファクタリングや割引を行った場合は債権をオフバランス処理することとなります。

③有価証券

有価証券は、保有目的に応じて処理方法が異なります。
まず、売買目的有価証券は期末時点での時価に貸借対照表価額を修正するとともにその評価損益を営業外損益で有価証券評価損益として計上します。実務上売買目的有価証券に分類するためには、有価証券売買の専門部署があり、売買に関する規程が存在し、頻繁に売買している実績が求められます。よって、期末に利益が足りないからといって勝手に売買目的有価証券に振り替えることはできません。

また、満期保有目的の有価証券(社債、国債など)については取得原価によって貸借対照表価額となります。取得原価と満期の返還金額に差がある場合には、その差額について一定の方法で損益を認識していきます。

子会社株式や関連会社株式などの関係会社株式については、取得原価を貸借対照表価額とします。ただし、決算時に対象の有価証券の実質価額(純資産価額等)が取得原価を著しく下回っている場合は減損処理をして特別損失に計上します。著しく下回るというのは概ね時価が半額となっていることを言います。

これらに分類されない有価証券は、その他有価証券とされ、時価がある場合は決算時の時価によって評価をし、その差額は有価証券評価差額金等の勘定で純資産の部に計上されます。時価が無い場合は取得原価で計上されますが、子会社株式と同様に実質価額が著しく下落している場合は簿価を時価まで切り下げ特別損失処理が行われます。

④デリバティブ取引

この他に、先物取引やスワップなどのデリバティブ取引があります。デリバティブ取引はその内容によって会計処理が様々ですので具体的な会計処理は割愛しますが、基本的にデリバティブ取引を時価評価し、そのデリバティブ価値を貸借対照表に載せるとともに損益を計上することとなります。
しかし、ヘッジ会計と呼ばれる商品のリスクを軽減するような金融商品を保有している場合はそのリスクをヘッジした会計処理が行われます。

デリバティブ取引について詳しくまとめた記事はこちらです。

関連記事:デリバティブ取引とは?3つの種類とメリット・デメリットを解説

中小企業と金融商品会計

この他にも金融商品会計は様々な会計が記載されており、網羅するにはとても労力がいります。上場企業や会社法適用会社では当然のように適用しなければならない基準となります。
一方で、中小企業においても中小企業の会計に関する指針というものがあり、そこでも金融商品については基本的に同じように処理しなければならないとされています。この会計処理が行われているかどうかは中小企業の会計に関する指針チェックリストにも記載されており、これが確認できないと保証協会の利率を下げることができません。
しかし、中小企業で実務上金融商品会計について詳しく適用している会社がどれほどあるかは未知数であり、デリバティブなどの複雑な金融商品を持っている会社も限られていることから会計実務上それほど多くの実例が見れないかもしれません。よって、金融商品会計を適用している会社を見かけたら良い勉強だと思って見てみると良いでしょう。

まとめ

金融商品とは、取引における一方に金融資産(現金、売掛金など)を生じさせ、一方に金融負債(支払手形、買掛金など)を生じさせるものを言います。
それぞれの金融資産における会計処理は上記のように場合によって異なることもありますので、注意が必要です。
また、中小企業においても大企業と同じ会計基準が適用され、処理の仕方は同じです。しかし、実際に詳しく適用されているかどうかに関しては、明確な数値が出ていないため、実例を見れることは難しいでしょう。
細かく会計基準が設定されていますが、それに沿った処理を行うことは必須ですので、経理担当者はコツコツ学んでいく必要があると言えます。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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