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時価純資産方式とは?メリットデメリットを解説します

公認会計士 大国光大
時価純資産方式とは?メリットデメリットを解説します

株式の評価には様々な方法があります。DCF法や収益還元法、類似会社批准方式等があり、そのうちの一つとして時価純資産方式というものがあります。
今回は、時価純資産方式の概要とそのメリットデメリットについて現役公認会計士が解説します。

時価純資産方式とは?

時価純資産方式は、株価算定の際に使われる方式の一つです。

時価純資産方式は、会社の株価を算定する基準日時点での資産及び負債の時価を算定し、その差額を会社価値として、発行済株式総数で割ると1株当たり株価が算定されます。時価のある資産は時価で評価し、時価が無いものについては基本的に簿価で評価されますが、滞留している債権や在庫については一定の金額まで減額する方法が採られることが多いです。

時価純資産方式とよく対比される方法としては、簿価純資産方式があります。簿価純資産方式は決算書に計上されている貸借対照表金額をそのまま使うのに対して、時価純資産方式では時価を用いるため、評価する人によって評価が異なる可能性があります。

時価純資産方式のメリットは?

時価純資産方式のメリットは、他の評価方法よりも客観的な評価が行えるという点があります。

例えば、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法を採用している場合は、将来の収益計画に大きく株価が左右されます。この収益計画を高く評価すればするほど株価は上がりますし、低く評価すれば株価は下がります。この点、時価純資産方式では将来計画を使うことがない為、数値が客観的であると言えるでしょう。

DCF法についてはこちらの記事を参考にしてください。

また、時価純資産方式とよく対比されますが、簿価純資産方式では企業の決算書をそのまま使うため、土地や株式の含み損益が反映されません。しかし、実際に土地や有価証券を市場で売買した際は売却損益が出るため、本来株価に反映させるべきだと言えます。
この点時価純資産方式では、企業の保有する土地や有価証券の含み益を評価に反映されるため、より適切な評価ができると言えるでしょう。

時価純資産方式のデメリットは?

時価純資産方式のデメリットは、評価結果が企業の精算価値を表すため、将来の収益獲得能力が反映されないことです。

例えば、DCF法では将来の収益計画を反映させるため、企業の将来価値を表すと言えます。企業の株式を購入する人にとっての最大の関心事は、その株式が値上がりしたり配当を獲得したりすることであり、会社が精算したり過去の成果を評価したりすることではありません。

この点時価純資産方式では一定の時点での会社の資産負債の時価を基に計算されるため、会社が精算した時の価値を示すことになってしまいます。
また、今まではそれほど収益獲得能力が無く純資産があまり厚くなっていなかったとしても、将来大幅な利益獲得が予定されている場合はそれを反映すべきであると言えます。時価純資産方式では、このような将来の収益獲得能力が反映できないというのが最大のデメリットとなります。

さらに、企業を支配する立場ではなく多数の株主のうちの一人として企業の株式を保有する場合、非上場企業であれば、株主は企業の配当が唯一の投資回収方法となります。この点時価純資産方式では配当によって得られる収益が全く反映されないため、株主の期待する利益とそぐわない結果となる可能性があります。

時価純資産方式以外の株式評価方法は?

時価純資産方式による評価方法は、企業の資産負債に着目したアセットアプローチと表現されることがあります。アセットアプローチは、これ以外には簿価純資産方式が使われることがあります。アセットアプローチは時価の客観性を示すのに非常に優れた手法であるため、株価評価の際には必ずと言ってよいほど参考にされる指標となります。

類似会社比準方式

これ以外の方法としては、類似会社比準方式というものがあります。これは、非上場の株式を評価する際に上場会社の株価を参考に会社の株価を評価する方式です。
株式の価値は本来もつ企業の価値よりも、市場で取引される価格の方が現実的であるため、評価対象会社と類似する上場会社があれば、その株価を基準として評価したほうがより現実的な評価とされます。

類似業種比準方式(マーケットアプローチ)

類似会社比準方式以外では、類似業種比準方式という、業種別の株価を参考として評価するものがあります。これらの方式は株式市場を参考にしているため、マーケットアプローチと呼ばれています。

インカムアプローチ

これらの方法以外では、インカムアプローチというものがあります。インカムアプローチは会社に流入する収益に基づいて株価評価を行う手法となります。先にお話をしたDCF法が最もポピュラーな方法であり、それ以外にも配当還元方式というものがあります。

配当還元方式

配当還元方式というのは、企業が過去に行った配当を基礎として、将来の配当を推定して株価を算定する方法となります。これらの方法は、将来の収益力を加味する方法であるため、企業の将来性を株価に反映させることができる点がメリットであると言えます。

まとめ

いかかでしたでしょうか。株価を評価する際に用いられる時価純資産方式に関して、そのほかの方式と比較して説明をしてきました。それぞれの方式にはメリットとデメリットがあり、会社が持っている資産や評価したい内容など、目的に応じて選択する必要があります。この記事を読んで、それぞれの方式の特徴との違いを含めて、時価純資産方式について学んでいただけたら幸いです。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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