どんな仕事を選ぶにしても、やはり気になるのが収入です。とくに初任給については、転職の際には最も注目する点のひとつなのではないでしょうか。会計事務所の初任給は、無資格の場合では低めな傾向があります。しかしその後は順調に昇給していくところが多いようです。今回は会計事務所の初任給について解説していきます。
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厚生労働省が行った、平成30年の初任給についての賃金構造基本統計調査結果によると、学術研究・専門・技術サービス業の大学卒の場合の初任給は224.5万円でした。これらを産業別に見ると大学卒と大学院修士課程修了でトップとなっています。
参考:平成30年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:3 主な産業別にみた初任給|厚生労働省
ただし、学術研究・専門・技術サービス業には、税理士事務所以外に自然科学研究所やデザイン業・広告業、土木建築サービス業などのさまざまな業種が含まれており、上記はその平均の初任給となっています。
そこで、実際に会計事務所に勤務していた方の証言や関連記事などをウェブ上で調査し、総合的に考慮したところ、会計事務所の初任給は20万円程度、初年度の年収は250~300万円程度というところが多いようです。
一般に会計事務所の給与額は、関連資格の有無や実務経験年数、入所時の年齢などによって変動します。また、給与体系が固定給か歩合給か、ボーナス制度があるかないかによって年収が変わってくることがあります。
会計事務所の初任給や初年度年収は、その業務の専門性から考えると少し物足りないところがあります。
この理由としては、会計事務というのがホワイトカラーの仕事の中で比較的人気のある職種だからというのが考えられます。求人募集をすればたくさんの応募があるため、会計事務所にとって買い手市場になっている部分があるのです。
一般的に会計事務を希望する人には勉強が好きな優秀な人材が多いので、短期間で業務を覚えられる人が多い傾向があります。そのため、会計事務所側としては、給与額に不満な人は辞めてもらって代わりの人材を探せばよいという状態になります。
以上のような需給面に加えて、将来的に税理士として独立するための修行期間として、低い給与でも割り切って考えている人もいるという要因もあるでしょう。
このような事情により、会計事務所の初任給はそれほど高めとは言い難いです。しかし、以下記事によりますと、会計事務所の平均年収は約471万円となっています。
また、厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査の平均賃金において、学術研究、専門・技術サービス業に従事する35~39歳の男性では410.4万円、女性では297.7万円、40~44歳の男性では445.1万円、女性では323.4万円でした。
参考:平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況 第5表 主な産業、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び年齢階級間賃金格差|厚生労働省
賞与が月収4か月分として月収に換算しますと、30代後半で月収25万円、40代前半で月収28万円ほどになる計算です。年齢が上がるにともなって、着実に昇給していることが読み取れます。
なお、40歳前後になりますと、実績や実務能力などでの個人差も大きくなっているはずです。つまり、平均給与からの隔たりを現す分散や標準偏差の値が初任給のそれと比べて大きい形になっていることが推測されます。
漫然と会計事務所で勤務年数を重ねるだけでは、あまり大きな昇給は期待できないでしょう。給与額を上げるためにはいくつかのポイントが考えられます。
まず思い浮かぶのは、簿記や税理士試験科目合格などの資格でしょう。ただ、これらの資格を取得していることは考慮されないわけではないのですが、想像しているよりも昇給に関しては影響が少ない傾向があります。
資格よりも重視されるのは、実務能力のほうです。会計事務所といえど営利組織ですから、より多く稼げる能力のある人ほど給与額が高めになる傾向があるのです。
具体的には、なるべく多くの顧客を担当できること、医療法人や相続などに関する案件を担当できることなどが挙げられます。前者は量的に、後者は質的に、会計事務所の売上げに貢献できる能力となります。
また、いわゆるBIG4を頂点として、会計事務所の規模の大きなところほど収入額が大きい傾向があります。折りを見て給与や待遇の良い会計事務所への移籍をするのも選択肢になります。
会計事務所は未経験での初任給は低めですが、以上の点を意識していけば順調に昇給していく可能性が高まるでしょう。
最後に、税理士の平均年収をみてみましょう。平成30年の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によりますと、公認会計士・税理士の平均年収は892万円ほどとなっています。
独立すれば年収が数千万円になる可能性もありますし、税理士の資格があれば70代でもそれなりの高給で働ける可能性が高いので、生涯年収も高くなる傾向があります。また、「日本税理士共済会」では、税理士本人とその家族のための年金積立や生命保険などの各種制度を運営しており、福利厚生面でも充実しています。
なお、税理士の初任給に関しましては以下の記事に詳しく紹介されていますので、ぜひご覧ください。
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