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キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは?

HUPRO 編集部
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは?

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle: CCC)という用語を知っていますか?簡単にいえば、企業の資金繰りの余裕の度合いを示す数値です。この数値はあまり経理担当者であってもあまりなじみがないかもしれません。
今回は、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の意味と計算方法について解説します。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは何か

企業は一般的に販売業であれば商品を仕入れてそれを販売します。製造業や飲食業などのサービス業であれば原材料から完成品を製造してそして販売します。
その後販売先から商品代金を回収するということになります。

企業が商品や原材料を仕入れ、仕入代金を購入先に支払って、その後その商品や原材料を加工してできた製品を販売して、その販売代金を回収するまでにかかる日数を示す経理的な指標がキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。

言い換えれば、この一連のお金の流れを把握し、運転資本(Working Capital)の必要調達期間を知ることが目的の指標です。その日数が小さければ小さいほど資金繰りは楽ということになります。

運転資本とは、売掛金・棚卸資産・買掛金といった事業を運営していくために必要な拘束されている資金(資本)のことです。企業の事業活動は、たとえば、メーカーの場合、原材料を仕入、加工して製品をつくり、販売して現金を回収するというサイクルのもとで行われています。

原材料の仕入から売上までには一定の期間がかかりますが、これをキャシュの面から見ると、通常は原材料の仕入れ代金などの支払が先行し、販売代金などの受け取りは後になってしまいます。このようなキャシュの支払いと受け取りの間にタイムラグがあったとしても、資金ショートを起こさずに企業を存続させ、運転を続けていくためには、そのタイムラグを埋め合わせるだけの一定のキャッシュが必要となります。これが運転資本と呼ばれるものの正体です。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の計算方法

キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、資金が投下されてから、その資金が現金に再び変わる(convert)までの期間を表すものです。したがって、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間、仕入債務回転期間を同時に考えることによって計算することができます。ポイントは、現金の流入と流出のサイクルを掴むことです。

計算方法は次のようになります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)=売上債権回転期間+棚卸資産回転期間−仕入債務回転期間

仕入から販売まで30日かかり、そこから販売代金の回収に60日かかるとしましょう。通例、仕入代金の支払いは販売代金の入金よりも早いタイミングで来ることになるので、仕入代金の支払日は40日後とします。そうした場合、現金の支出と現金の回収までの間には50日の日数差が生じることになります。一般に、この現金サイクルの日数差がキャッシュ・コンバージョン・サイクルと呼ばれるものです。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を構成するもの

さきほど書いたキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の計算式で書いた3つの構成要素について説明します。

①売上債権回転期間
②棚卸資産回転期間
③買入債務回転期間

①売上債権回転期間

売上債権回転期間は、売上が発生してからその債権を回収するまでにかかる日数を示したものです。この期間が長いと資金繰りが悪化している可能性があります。

売上債権は、一般的には売掛金と受取手形になります。それ以外にも未収金等の勘定科目に売上債権が含まれている場合にはそれも加える必要があります。

手形割引を利用している場合、受取手形勘定の減額処理をしていたら、その分は加算して計算する必要があります。割引手形勘定を使っていれば、そのままで構いません。

また代金を先に受け取ってから、商品などの販売を行った場合(前受け金)は、売上金額からその金額を差し引いてください。

計算式は以下の通りです。

売上債権回転期間=売上債権÷売上高×365日
売上債権=受取手形+売掛金-前受金

②棚卸資産回転期間

棚卸資産回転期間は棚卸資産を仕入れてから販売されるまでの日数をいいます。
棚卸資産が多すぎると、やはり資金繰りが悪化して経営を圧迫します。

棚卸資産回転日数の計算には、「売上原価」もしくは「売上高」を用います。

回転期間は、棚卸資産を仕入れてから実際に販売されるまでの日数を意味しますから、正確な回転日数を知りたいのであれば、「売上原価」を用います。

計算式は以下の通りです。

棚卸資産回転日数=棚卸資産÷売上原価×365日
棚卸資産=商品+製品+原材料+仕掛品

③買入債務回転期間

買入債務回転期間は仕入代金の支払いについての条件・期間がどれくらいかを示すものです。

支払いサイトが短ければ短いほど、運転資金の調達コストが高くなります。
逆に支払いサイトが長くなれば資金繰りはそれだけ楽になります。

買入債務は、支払手形や買掛金がそれにあたりますが、未払金に仕入債務が含まれている場合は、加算する必要があります。

算定には、棚卸資産回転期間同様に「売上原価」を用います。

買入債務回転期間=仕入債務÷仕入債務支払高×365日
仕入債務=支払手形+買掛金−前払金

なお、計算に使う売上債権、棚卸資産、仕入債務は正確性を期すため、できるだけ期中の残高を用いることが重要です。
そのため、期首(前年度末)残高と期末(当年度末)残高を足して2で割った、「平均残高」で計算します。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を構成するもの

実例

実例をもとにキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を計算してみましょう。

・ある商品を仕入れて、その代金の支払期日は60日後です。
・商品は仕入れてから70日後に販売しました。売上代金の支払期日は、50日後です。
・商品を仕入れてから、売上代金を回収するまでに120日間を要しています。
・商品を仕入れてから、仕入れ代金の支払期日までは、60日です。

こうしてみると、商品の仕入代金の支払期日と売上代金を回収するまでに60日間のズレが生じています。

つまりその分だけ資金繰りが苦しくなるので、場合によっては金融機関などから運転資金を借りる必要があります。

このズレがキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)なので、これが短くなればなるほど資金繰りは楽になります。

適切なキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

商品代金の支払債務期日や売上代金の回収期日は、取引先との力関係に依存するところが大きいのが実情です。したがって、適切なキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の目安というものはありません。

チェックポイントとしては、同業他社のキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と自社のそれと比較するとよいでしょう
短いようなら、資金繰りが楽で業界内での優位に立っているとみることができるでしょう。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)と正常運転資金との違い

同じような概念として正常運転資金(経常運転資金)が挙げられます。

以下の計算式で数字を出します。

正常運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務

事業活動に伴って、原材料や製品の購入代金の未払い分が仕入債務として、原材料や製品の未販売分が棚卸資産として、製品を販売した場合にはその代金の未回収分が売上債権として、貸借対照表に現れます。このうち、売上債権と棚卸資産は、活動を継続するなかでそれだけの資金が拘束されて必要になってくることを意味しています。

一方で、仕入債務は支払いを待ってもらっているということで、それだけの資金的な余裕が発生していることを意味しています。したがって、売上債権と棚卸資産を加え、それから仕入債務を差し引くことによって、必要な運転資本の金額を求めることができるというわけです。

売上債権と棚卸資産の和が仕入債務より大きいのであれば、差額である正常運転資金の分資金繰りは苦しいということであり、自社で用意するべき現預金がどれほどなのかを知ることができます。この運転資本の変化の金額が、各事業年度のキャッシュフローに影響を与えることになります。

たとえば、前期に500万円の運転資本が発生していたとしましょう。もし、毎期の運転資本が一定であったならば、今期も前期と同じ500万円が遅れて現金化されることになります。そして、その今期500万円の遅れは前期の運転資本のうち今期にキャッシュとなる500万円と相殺されて、実際に追加で必要となるキャッシュはゼロとなります。運転資本が増加している場合には、その増加分だけキャッシュフローが減少し、その逆に運転資本が減少している場合には、その分だけキャッシュフローが生み出されることになります。

一方でキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)は金額ではなく期間を表す概念です。仕入代金の支払いから売上代金回収までが何日間かかるのかを表しています。キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)が長いほど資金繰りは苦しくなりますし、逆に短縮できれば楽になります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)が少しずつでも短縮されるような経営を目指すのがよいでしょう。業界平均と比較して、著しく悪化していないかということを確認することもお勧めします。

まとめ

資金繰りは、会社の財務を担当しているひとにとっては非常に気になるところでしょう。その資金繰りの必要性を図る指標が、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。これをチェックして、可能な範囲で支払は遅くし、また回収は早めるように心がけましょう。

一つ一つは小さくても、それが多くなれば会社の資金繰りは楽になります。

この記事を書いたライター

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