今回は、税理士と社労士の資格をダブルライセンスで取得することのメリットについて解説いたします。実務上のメリットに重点を置きながら解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
まずは税理士と社労士の違いについて、いくつかの観点から見ていきましょう。
同じ士業の資格とはいえ、その仕事には大きな違いがあります。
その代表的な業務として、それぞれに独占業務と呼ばれる資格を持っていないと行えない業務が存在することが挙げられます。お互いの独占業務に重複は無いため、違いの一つといえるでしょう。
税理士の独占業務は以下の3つと定められています。
税務の処理や節税対策など、法人・個人に関わらずニーズの高い業務のため、税理士を取得するメリットは大きいといえます。
一方で、社労士の独占業務については以下のように定められています。
これらの業務についても、従業員を雇う企業では確実に必要とされます。税理士とは違う分野ではあるものの、社会的ニーズの高さは同程度にあるといえます。
年収の違いを示す数値としてそれぞれの有資格者の平均年収があります。賃金構造基本統計調査によると、社労士の平均年収は約496万円、税理士は約958万円であり、これだけを見ると税理士の方が年収が高いと判断できるでしょう。
ただし、一概に税理士の方が年収が高いと結論付けるのは尚早です。なぜなら「独立しているかどうか」「どのような職場で働いているのか」など、様々な条件によって年収が変動するからです。
独立すれば2,000万円や3,000万円といった高年収を目指せるものの、経営をうまく軌道に乗せることができなければほとんど稼ぎが無くなったり廃業しなければならないリスクもあります。
一方で企業などで雇われて働く勤務税理士や勤務社労士の場合、収入はある程度安定しているものの、所属先の給与レンジ以上の収入を稼ぐことは難しいでしょう。
税理士試験も社労士試験も、ともに難関国家試験と言われることもあるほど、合格率は低いです。2023年試験の合格率を比較してみると、税理士試験の全科目合格(官報合格)率は1.8%、社労士試験は6.4%でした。
また必要とされる勉強時間については、税理士試験が4,000時間、社労士試験が1,000時間程度であると言われています。
これらに加え、社労士試験の方が受験資格のハードルが低めであることを踏まえると、税理士試験の方が難易度は高いといえます。
結論から申し上げますと、税理士と社会保険労務士の両方を取得することには大きなメリットがあります。
その大きな要因として、税理士と社労士の業務の親和性が高いことが挙げられます。
両者の扱っている業務は異なりますが、企業にとっては同じ行政に提出する書類の作成です。提出書類によって、依頼先が変わるのは企業にとっては手間になりますし、連絡等が時間も無駄になります。
しかし、税理士と社労士のダブルライセンス保持者がいる事務所であれば、企業は申請書類を一任することが可能です。企業にとっては、申請する書類ごとに依頼先を変える必要がありませんし、仕事を受ける側としては2倍の仕事を請け負うことができるので、Win-Winの関係となります。
いくら難関資格の保持者といえど、税理士は80,000名以上、社労士は40,000名以上が登録しています。そのため、どのように差別化するかが、仕事を獲得すること、生活を続けることに繋がります。そんな差別化を図る手段として、ダブルライセンス保持者になることは有効と言えるのです。
士業として顧問契約を結べるのは、継続的に事業を行っている会社や個人です。会社を運営すれば確定申告は毎年必要ですし、社員の流動性が高ければ、厚労省に申請する書類も多くなります。税理士や社労士のみの業務なら、顧問先を変更することもありえるでしょう。
その面、双方の業務を担っている事務所に依頼できるとなれば、顧客との長期的な関係構築がしやすくなるのです。
税理士や社労士の試験は、長期間にわたって計画的に勉強を進めていくことが求められます。
学生の方など、学習に専念できる環境の方ならば大きな問題は生じないですが、社会人の場合は「働きながら合格を目指す」のが基本となるでしょう。
税理士試験は科目合格制度を利用できますから、1年に1科目などのかたちであれば、働きながらであっても現実的な受験計画を立てることは可能です。その際、受験する試験科目と、実務とをリンクさせながら学ぶことができれば効率的です。
会計事務所(税理士事務所)での仕事では、税理士や社労士試験の受験科目を実務として経験することが可能となりますので、試験のために勉強する内容についても深く理解することができるでしょう。
また、受験勉強が進むほどに実務能力が向上していくことも期待できますから、仕事をしながら勉強をすることには大きなメリットがあります。
これから税理士や社労士の資格取得を目指す人は、会計事務所や社労士事務所で働きながら試験勉強を進めていくこともぜひ検討してみてください。
税理士のダブルライセンスにオススメの社労士以外の資格をあえて1つ挙げるとすれば、公認会計士資格でしょう。公認会計士は企業の会計監査の専門家であり、監査業務は独占業務に該当します。
業務の親和性が高く、資格試験の試験範囲も重複する部分も多いことがオススメの理由です。もしまだ税理士を持っていないという方の場合は、公認会計士を取得すれば税理士試験の全科目が免除となりますので、公認会計士の取得から目指すのもよいでしょう。
ただし、公認会計士は税理士よりもさらに難易度が高い資格ですので、その点はご注意ください。
今回は、税理士と社労士の資格をダブルライセンスで取得することのメリットについて解説いたしました。求められる知識の関連性が非常に高いため、ダブルライセンスを目指して勉強を進めることには大きなメリットがあるといえます。
一方で、いずれの資格も難関レベルの試験となりますから、長期間にわたって計画的に勉強を進めていくことが求められることに注意しておきましょう。
例えば現状に満足しておらず、ダブルライセンスを取ることでステップアップを考えている場合は無理して資格所得を目指すよりも、転職などでステップアップを目指すことをオススメします。片方の資格を持っていれば、望んでいる条件の企業がきっと見つかるはずです。
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