土地建物などの不動産を、売買したり賃貸したりといった業務全般に携わる不動産業。土地開発から分譲まで行う不動産ディベロッパーから、個人で不動産を運用している人まで幅広い人が携わる業界です。不動産業で経理業務を行う場合、何か業界における特徴的なものがあるのでしょうか?本記事で詳しく解説します。
実は、「不動産業」と一口に言っても、多種多様な業務があります。その中でも代表的な業務は「不動産売買」「不動産賃貸」「不動産仲介」の3つです。
「不動産売買」は、不動産売買は、土地や建物を仕入れて売却することで、その差額が収益となります。商品が土地や建物ではありますが、性質は小売業や卸売業といった仕入れ販売に近いです。
「不動産賃貸」は自己が所有する土地や建物を賃貸することで、その使用料を収益とします。その業態はレンタカー業のような物品賃貸業に似ています。
そして「不動産仲介」は、直接には在庫を持たず、不動産売買や賃貸を仲介することで、手数料収入を得るという業態です。証券会社やクレジットカードのような手数料収入を主としたサービス業に類似した事業形態です。
このように同じ「不動産業」でも、収益を得る元はバラバラなので、経理処理においてもそれぞれの業態による特徴があります。
不動産業は「不動産売買」「不動産賃貸」「不動産仲介」といった業態ごとに収益を得る方法が異なるので、経理における会計処理も異なります。それぞれの業態に合わせた会計処理や仕訳が必要です。
不動産業の経理の平均年収は、400~500万円です。経理は一般職の中でも専門的な知識が必要な分、高い傾向にあります。ただし、営業に比べると低くなりやすいです。
<関連記事>
不動産業における経理の仕事内容は、入出金の記録・税金計算・決算書作成といった業種にかかわらず発生する日次・月次・年次業務と、「不動産売買」「不動産賃貸」「不動産仲介」に関する会計処理に分けられます。
<関連記事>
不動産売買の経理の特徴は、販売すべき不動産の売上と仕入(原価)のほか、在庫が計上される点と、消費税の課否判定です。
売上や仕入れの計上タイミングは不動産の引き渡し時なので、あまり悩むことはありませんが、特に注意が必要なのは、在庫の計上についてです。不動産の購入にはその価格だけでなく、仲介手数料などの取引に必要な費用も含まれます。この費用は資産計上すべきですが間違えやすい箇所です。
また、一般的な経理処理では、建物は減価償却されますが、不動産売買においては建物はあくまで商品です。そのため、減価償却せずに売却時に仕入れに振り替える処理が必要です。
自社オフィスとして使用する建物は減価償却されるので、混同しないようにしましょう。
次に、消費税の課否判定についてですが、土地と建物で税金のかかり方が異なります。
土地の売買は非課税取引なので消費税はかかりません。
しかし、建物の売買は消費税がかかります。
土地建物を同時購入する場合でも、それぞれの内訳が不明な場合があります。この場合は消費税額から逆算して建物の金額を算出するか、もし消費税の記載がない場合は土地建物の固定資産税評価額などを見て判断することになります。
不動産売買は、土地や建物を購入するには多額の資金が必要なため、金融機関からの借入金が多くなる業種でもあります。有利な条件で融資を受けるために、クリーンな決算書を作るための経営管理が欠かせません。
不動産賃貸は、購入した不動産を賃貸することにより収益を得る業務です。
そのため、不動産売買の際には、仲介手数料といった取引に直接関連する費用も含めて固定資産に計上する必要があります。
また、不動産売買とは違って、建物は減価償却の対象になりますので、土地と建物を同時に購入した場合についてのそれぞれの費用算出にはより細心の注意が必要です。
建物は設備や建築方法において、耐用年数が異なるため、その備品などについてもそれぞれ減価償却の必要があります。固定資産管理が非常に大きなウエイトを占めるのが特徴です。
売上である賃貸料については、基本的に前払いであり、滞納が生じる場合もあるため、売上に関しては債権債務として処理を行うことになります。
消費税の計算も煩雑です。居住用物件は非課税取引ですが、それ以外の賃貸は消費税がかかるなど、物件ごとの消費税の取り決めによっても変わってきます。
不動産賃貸は、不動産売買と同様、土地建物の購入に置いて、借入金が多くなる業種です。そして、投資した資金を賃貸料として回収するのに時間がかかります。物件の経年劣化に伴う修繕費などもありますので、長期的な視点での経営計画が必要です。
不動産仲介は、不動産売買と不動産賃貸とは異なり、不動産を保有しませんので、土地建物を計上する資産や減価償却費が少ないのが特徴です。
売上については、税務上は
・仲介手数料にかかる契約の効力発生日
・仲介サービスの提供完了時
のいずれかで計上すべきとされていますので、基準を統一しておき、万が一変更になる場合は客観的に妥当性のある根拠を提示できるようにしておく必要があります。
消費税については、外国人(非居住者)との取引のような特殊な取引でない限りは、全ての取引において消費税が必要なので、これも、不動産売買と不動産賃貸とは異なる箇所です。
不動産仲介業における特徴としては、営業社員数が多いので、人件費が販売管理費として費用の大半を占めます。売上原価というものがほぼありませんが、勤怠管理や社員の成績による給与の変動などについて、会社規定に基づいて、毎月反映させて支払う必要があり、人件費の費用計上時期についての注意が必要です。
不動産業の経理転職で求められるのは、簿記の知識と実務経験です。最低でも簿記3級程度の知識が必要になります。
簿記3級以上を取得していれば、経理未経験でも転職できる可能性はあります。宅地建物取引士の資格を取得することで不動産取引の流れを理解できるようになりますが、経理としては必須の資格ではありません。
経理はお金にかかわる仕事なので、正確性が求められます。日々の業務の大半をパソコンで行うため、基本的なパソコンの操作ができるようにしておきましょう。人と関わる機会も多いのでコミュニケーション能力も重要です。
<関連記事>
不動産業といってもそれぞれの職種で特徴的な経理が存在し、ひとくくりにすることは難しいですが、まずは日商簿記3級レベルの知識の習得をしておくと、スムーズにその流れをつかめるでしょう。また、不動産取引自体についての知識を深めることも不動産業での経理業務には役立ちますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
士業・管理部門に特化!専門エージェントにキャリアについてご相談を希望の方はこちら:最速転職HUPRO無料AI転職診断
空き時間にスマホで自分にあった求人を探したい方はこちら:最速転職HUPRO
まずは LINE@ でキャリアや求人について簡単なご相談を希望の方はこちら:LINE@最速転職サポート窓口