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譲渡制限付株式とは?詳しく解説します

HUPRO 編集部
譲渡制限付株式とは?詳しく解説します

譲渡制限付株式とは、売却を一定期間制限する株式報酬制度のひとつ。英語ではRestricted Stock 、略してRSとも呼ばれます。ストックオプションなどと違って、役員らが株式を直接保有するのが特徴です。本記事では、比較的新しい制度である譲渡制限付株式について、詳しく解説します。

譲渡制限付株式とは

譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストックRestricted Stock: RS)とは、平成28年の税制改正を受けて初めて登場した株式報酬制度です。欧米では、すでに株式報酬の方式として広く普及しています。日本では新しい制度にもかかわらず、すでに「株式交付信託」や「ストックオプション」など、他の株式報酬制度よりも多く採用されるようになりました。
結果的に従業員や役員が中長期の株保有者となるため、企業価値を高めるための経営努力を促す効果を期待できることと、機関投資家へのアピールにもなるからです。
また、社外取締役となる人材の確保の促進にも使われています。

譲渡制限付株式は、売却期間を「5年間」「退職時まで」というように制限されているほかは、通常の株主と変わりなく、株式保有期間中は通常の株主と同様に、株主総会において議決権を行使したり、株式により配当を受け取ったりすることができるのが特徴。
ポイント制で株式を取得する株式交付信託や、取得時からの差額の利益のみを受けるストックオプションよりも、株主としての自覚が生まれやすい制度です。

それまで日本では、株式を役員や従業員に直接交付することは税法上できませんでしたが、2016年の税制改革と会社法の整備により、譲渡制限付株式の導入が可能となりました。しかし、適切な導入方法や会計処理を踏まなければ、金融取引法に抵触する恐れがありますので注意が必要です。

近年の「働き方改革」による勤務時間の短縮により、残業手当が減少して給与が減った従業員への福利厚生の一環として付与する事例も増えています。

譲渡制限付株式の付与の流れ

譲渡制限付株式の導入には開示義務、事前確定届出給与(損金算入の対象となる経費)としての届出が必要です。実際の付与の流れについてみてみましょう。

①金銭報酬債権支給

発行会社は、取締役会の決議に基づき、あらかじめ定められた範囲内での金銭報酬債権を役員等に支給します

②払込(現物出資)

役員等は、金銭報酬債権の全部を現物出資財産として払い込みます。
これは、日本における会社法の関係で、株式を無償で交付できないことになっているため、役員等が保有する金銭報酬債権を会社に現物出資して株式を受け取るという手続きを踏むことになります。

③株式交付(譲渡制限設定)

発行会社は、②の現物出資に対し、譲渡制限付株式を役員等に割り当てます。割り当てた株式には、一定の期間において譲渡制限をつけます。

④譲渡制限解除

発行会社は、所定の期間が経過した後、譲渡制限を解除します。

⑤譲渡制限が解除されなかった株式

譲渡制限付株式の割り当てを受けた役員または従業員が、その制限期間の間に退任または退職した場合など、勤務継続条件などで譲渡制限が解除されなかった株式は、発行会社が無償で取得します。

譲渡制限付株式の会計処理について

経済産業省が公表した「攻めの経営を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆるリストリクテッド・ストック)の導入等の手引~」には、譲渡制限付株式を交付した後は、その譲渡制限期間を基礎とする役務に相当する額を算定して費用計上することとされています。

所得税

特定譲渡制限付株式が付与される役員に対しては、特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日に、同日における特定譲渡制限付株式の価額(譲渡制限解除時の時価)にて給与や退職金として課税されます。

法人税

法人税法上の損金算入時期は、役員に給与等課税事由が生じた日(特定譲渡制限付株式の譲渡制限が解除された日)の属する事業年度となります。
損金算入される金額は、譲渡制限が解除された特定譲渡制限付株式の交付と引換えに、その役員により現物出資された金銭報酬債権等の額です。

譲渡制限付株式の問題点

税制改革による会社法の整備によって、導入された譲渡制限付株式ですが、問題点がないわけではありません。
例えば、付与された株式については一定の譲渡制限期間が設けられていますが、その期限が到来したら付与された株式を一斉に売りに出して退職してしまうリスクがあります。株自体は実質無償でもらえるため、譲渡制限期間の間は会社に在籍していれば、株価が値下がりしていたとしても自分自身としては少額でもプラスになるからです。
また、株式が事実上無償で発行されることになるので、株式の希薄化が生じる危険もあります。

日本企業の成長の停滞は、その役員報酬制度が、長らく給与による固定報酬(役員給与)または利益連動給与を採用していたことに起因するといわれてきました。業績を上げてもさほど報酬が上がらない状況では、モチベーションも低下による経営状況の悪化を招きかねません。そこで、中長期的な業績によって連動する報酬として取り入れられたのが、譲渡制限付株式や株式交付信託です。
企業経営のグローバル化により、こうした業績連動型の報酬制度はこれからも拡充・整備されていくでしょう。

この記事を書いたライター

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