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カンパニー制とは?制度の概要や事業部制との違いを解説

HUPRO 編集部
カンパニー制とは?制度の概要や事業部制との違いを解説

カンパニー制とは、1つの企業の中に複数の”カンパニー=会社”が存在している組織形態のことです。元々はソニーが導入し、トヨタ自動車(ランドクルーザー・プリウスなどの製品軸)やみずほ銀行などの大手企業も参画しています。

そこで今回は、カンパニー制の制度概要やメリットなどのポイントを中心に紹介します。また、類似制度として事業部制との違いにも触れるので、近年の多様化する企業形態への理解を深めるきっかけとしてご活用ください。

カンパニー制とは?

カンパニー制とは、企業の中の部門があたかも1つの会社として存在するかのように管理・運営する方式を言います。法形式上は、あくまでも一般的な企業と同様です。しかし、各部門が会社としての独立性を有するような形式として擬制されていることから、部門ごとの独立性が高められることになります。

カンパニー制の特徴1:部門内ですべての業務が完結する

通常、企業では部門ごとに職責・権限の範囲が決められています。たとえば、営業部門であれば営業に関する権限と責任を負い、仕入に対する権限と責任は負いません。また、製造部門であれば製造に関する権限と責任を負っていますが、その他の責任は基本的に負いません。

これに対して、カンパニー制では、基本的にこれらの各部門内に全ての業務性能が兼ね備えられており、営業、製造、経理などの管理部門も設置されるのが一般的です。つまり、カンパニー内で一連のすべての業務に対する権限・責任が発生するので、セクションごとの連携が取りやすいという特徴が見出されます。

カンパニー制度の特徴2:カンパニー単位で意思決定を行う

カンパニー制の最大の特徴として、投資の意思決定や資金調達等の重要事項もそのカンパニーごとで行うことが挙げられます。わかりやすく表現すると、カンパニー単位で決算書が作成され、それを最終的に全社で連結をするようなイメージです。

また、カンパニー制では、投資(資金調達方法や資本金・借入れ方法などを含む)・人事・採用・配置などの権限も各カンパニーにあるとされます。つまり、社内制度上は、カンパニーに高度の独立性・自治権が与えられていると扱われます。

ただし、カンパニーは一種の擬制であり、本当の会社ではありません。したがって、対外的には、カンパニーから提出された決算書等は、あくまでも会社内の1部署の決算にしか過ぎないという点に注意しておく必要があります。

カンパニー制と事業部制の違い

カンパニー制と似た制度に、事業部制組織というものがあります。事業部制とは、カンパニー制と同じように”○○事業部”という単位を取り、基本的にカンパニー制と同様に、営業、製造、管理といった機能が同時に設置されます。

ただし、事業部制組織では、投資や資金調達に関する意思決定はできない、もしくは、経営層に伺いを立てねばいけないという条件が課されている点に注意しなければいけません。つまり、事業部制は、意思決定の柔軟さや迅速性の点においてカンパニー制よりも劣ると考えられます。

もちろん、意思決定の柔軟性に劣ることが制度全体として劣後することを意味するわけではありません。なぜなら、カンパニー制のように各部門に全面的な裁量を与えることを許してしまうと、セクションごとの能力が低いケースや、セクションに対して随時モニタリングを要するようなケースに支障が出るからです。

つまり、会社ごとの特徴・各セクションが担当する業務の内容などを総合的に考慮して、業務の迅速性・独立性を最優先にすべき場合にはカンパニー制が、ある程度の監視体制を構築しておくべき場合には事業部制が適していると考えられます。

カンパニー制のメリット・デメリット

このように、カンパニー制では各セクションが1つの会社として取り扱われるため、他の組織とは異なるカンパニー制度特有のメリット・デメリットが生じることになります。そこで、ここからはカンパニー制の特徴ついてそれぞれ詳しく解説します。

カンパニー制のメリット1:臨機応変な経営展開が可能・高度な独立性

カンパニー制では各セクションに大きな裁量権が与えられていることから高度な独立性を保つことができます。その結果、部門内において臨機応変な対応・迅速な意思決定が可能になるので、フットワークの軽い事業展開が可能となります。

たとえば、一般的な製造業では製造部門と営業部門で生産計画について話し合いをしますが、営業部門は大量に作って欲しいと主張し、製造部門ではそれほど作れないという主張をします。特に、多種多様な製品を作っている場合では、営業部門の意見がいろいろな形で飛び交ってくるため、なかなか両者が合意できず、調整に時間がかかってしまいます。

この点カンパニー制では、両者は同一の会社としてみなされている為迅速な意思決定が行われるため、機動性に優れていると言えるでしょう。

カンパニー制のメリット2:部門ごとの裁量が大きい

カンパニー制において各セクションに与えられる裁量権の大きさにより、カンパニーの長はほとんど制約のない状態で、いわば組織のトップ・経営者として事業を展開することができます。これは、事業部制組織との違いにおいて明らかな部分です。

たとえば、通常の組織では、トップが決めた設備投資や資金に基づき活動を行わなければいけません。カンパニー内の判断としては、新規の設備投資をして増益を目指したいと考えたとしても、会社全体の経営判断として設備投資が認められなければ、老朽化した設備のなかで非生産的な工程を繰り返さざるをえません。

これに対して、カンパニー制では、カンパニー長の責任と権限により設備投資も行えるため、事業展開の自由度が各段に広くなるというメリットが得られます。設備投資はもちろんのこと、そのための資金調達の方法などにも制約は課されないので、必要なときに必要な形で部門全体の効率性向上を見据えた事業展開を行うことができます。

カンパニー制のメリット3:経営能力の高い人材育成が可能

高度に独立性の高いカンパニー制を適切に運営するためには、カンパニー内に経営的な視座に優れた人材を集める必要があります。また、実際にカンパニー内の業務に触れることによって、経営の経験の少ない従業員を育成する機会も増えるでしょう。

したがって、結果として経営能力の高い人材が集中し、カンパニーだけではなく会社全体として優秀な人材という資源が確保できるというメリットが生じます。

カンパニー制のメリット4:部門間の比較をしやすい

カンパニー制は意思決定の迅速さがメリットという話もしましたが、部門間の比較にも優れている組織となります。というのも、A部門とB部門が全く異なる商品を販売していて、規模も全く違う場合、本来ならば、賞与などの査定を決めることはとても難しいものとなります。

一方で、カンパニー制組織を採用していれば、通常の利益額での比較だけではなく、自己資本経常利益率や経常利益率等様々な指標を用いて部門の査定もできますし、そもそもその事業から撤退すべきかどうかを利益水準のみならず、借入の多さや自己資本の低さなどを総合的に考えて決定することができます。

部門ごとに経営状況を判断できるので、会社全体としての経営判断もスムーズに行えるでしょう。

カンパニー制のデメリット1:コスト面のリスクが高い

カンパニーごとに独立した工程をもつことによって機動性を高めることはできますが、同時に、コスト面にリスクがある点を見逃してはいけません。というのも、各部門ごとに独立して組織が成立するように構成されるため、人材採用、経理・財務、設備投資などの業務のなかで、重複が生まれてしまうからです。

たとえば、カンパニーごとに人事を行うとなると、採用~給与計算に至るまでを、独自にセクションを設けてこなすことになります。しかし、どの部門にも共通するような業務については、本来なら会社全体で統一して処理してしまった方がコスト削減につながるはずです。もっとも、カンパニー制ではこのような同時並行は難しいという実情があります。

もちろん、独立性を維持することによってカンパニーごとの競争意識を高めることは可能ですが、各カンパニーが重複した業務を担当することによって若干の非効率性を痛み分けする状況になり得るという点には注意しましょう。

カンパニー制のデメリット2:企業全体の統一感が失われる

カンパニー制が有する高度な独立性は、企業全体の統一性を失うというデメリットを生み出してしまいます。

たとえば、カンパニーごとに連絡をとることがなくなるので、同一企業に所属しているにもかかわらず連帯感が生まれることはありません。また、技術力の共有や人事の交流も生まれにくくなるので、場合によってはカンパニー内に閉塞感・停滞感さえも生じかねないでしょう。

つまり、新たな価値観・技術・考え方・人材を契機として価値を創出するのが難しくなるリスクがあるので、カンパニー制を採用する場合には、企業側が積極的に交流の機会を設ける努力をする必要があります。

カンパニー制のデメリット3:カンパニーの利益だけが優先される

カンパニー制では、他のカンパニーと軋轢が生じる可能性があります。たとえば、Aカンパニーで生産しているものをBカンパニーでも扱いたいと思った時、AからBに商品を販売し、Bカンパニーはそれをお客さんに販売することになります。Aは自身のカンパニーの利益を優先するため高値で販売してしまった場合、Bカンパニーの儲けはあまりなく、結局販売をやめてしまうかもしれません。となると、会社全体の利益獲得のチャンスを逃すことになってしまうのです。

このように、カンパニー制では部門の利益を優先するあまり会社全体の利益が優先されない可能性が高まるというデメリットが存在します。

カンパニー制を採用すべきかは会社ごとに判断すべき

「独立性が高い」という特徴だけを見ると、カンパニー制が極めて優れた組織体制であるようにも思えます。しかし、「カンパニー制が正しい」という表現は正確ではなく、「カンパニー制が適切な会社もある」という言い方こそが正確です。実際、トヨタ自動車やソニーでは今でも採用されていますが、NECや富士ゼロックスではカンパニー制を採用した過去があるにもかかわらず、途中で廃止をしてしまっています。

つまり、カンパニー制が適している会社は、次のような特徴を備えた企業だと考えられます。

・部門ごとに取り扱う業務を差別化できる
・各部門への信頼感が高い

たとえば、同じような業務を担当している部門がいくつもある会社では、わざわざカンパニー制に移行をするメリットはありません。なぜなら、重複業務が過度に発生して、コストが増大するだけだからです。また、各部門への信頼度が低い場合や監視体制の構築などが必要なケースでも、独立性の高いカンパニー制は不適切でしょう。

このように、カンパニー制は多様化した組織形態の1種であると考えられます。M&Aによって組織再編をする手間を省きつつ、自社内で機動性を確保した経営を実現できるというメリットは看過できません。その一方で、他の組織再編手法と同様、カンパニー制にも向き・不向きがあるので、各社における運用が適切に行えるか否かを事前に精査する必要があると考えられます。

組織再編の手法については以下のコラムでも詳しく解説しています。あわせてご参考ください。

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