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仮勘定に気を付けよう!多用は厳禁

公認会計士 大国光大
仮勘定に気を付けよう!多用は厳禁

勘定科目を選ぼうとすると、仮と名の付く勘定科目があります。仮払金、建設仮勘定、仮受金等が有名な勘定ですが、企業によっては仮売上や仮仕入等計算上の数字を入れる会社もあります。

この仮勘定はどのような時に使うのでしょうか、また気を付けるべきことを現役公認会計士が解説します。

仮勘定とは?

仮勘定というのは、実際に計上すべき勘定とする前に一旦おいておく項目を言います。具体的には、仮払金、建設仮勘定、仮受金、仮売上高、仮仕入高等を言います。

仮払金というのは、将来どのような費用や資産になるかが現状不明であるため一旦計上しておく科目を言います。従業員が出張の際に多額の立替が必要な場合、あらかじめ一定の金額を渡しておく場合に仮払金という勘定と共に現金が払い出されます。出張が終わりその精算が終わると、仮勘定から使用した内容に応じて費用計上が行われ、残額の返金が行われます。

建設仮勘定というのは将来固定資産として計上されるもののうち、先に先方に支払っているものを言います。将来仕入に充てられる金銭は前渡金として計上されるのに対して、固定資産の取得に充てられるものが計上されます。

仮受金というのは、他者から金銭が振り込まれた際に、どのような名目の金銭か不明である際に一時的に計上される科目を言います。

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この他にも、企業によっては決算時に正式な売上ではないものを仮売上として計上し、その原価を仮仕入などとして計上する場合もあります。

仮勘定が決算書に残っているとどのようなことが起こる?

仮勘定は基本的に決算書には残らない科目と考えた方が良いです。例えば仮受金というのはどんな科目で処理していいのかわからないから仮受金にしているだけで、決算日から決算書が提出される2か月の間にはその用途が判明していなければおかしいからです。また、仮払金についても精算が終わっているにもかかわらず処理が行われていない場合は費用の計上漏れとなってしまいます。

また、税務署からすれば、仮受金は売上等の収益科目ではないかどうかを疑います。例えば先方は売上代金と思って支払っていたにも関わらず、会社が入金の意味を分かっておらず仮受金にしていたとして、実は単なる請求書の発行漏れであった場合は売上の計上漏れとなってしまいます。売上計上漏れとなると、その分の税金プラス加算税を取られることになってしまうため、税務署としては仮受金が最終的にどうなったかを追跡してきます。

また、銀行の観点からも仮勘定はマイナスに映ります。まず、銀行は資産や負債を種類別に評価しますが、仮受金等の仮がつく勘定は決算書全体としての信頼性が薄いということで実質的な査定を下げてきます。また、仮払金が多額にあった場合は本来費用処理されるべきものが先送りになっているのではないかという疑念が残ります。
このように、税務署目線でも銀行目線でも仮勘定を計上している会社の印象はとても悪いものとなってきますので、決算時には基本的に解消が求められます。

その他の仮勘定を使う場合は?

会社によっては仮売上という勘定を使うことがあります。例えば企業がレンタル会社であり、毎月20日が締め日であり請求書を発行するタイミングで売上計上をしているとします。すると、決算月では21日から月末までの売上は翌期に計上されてしまいます。
このように期をまたいでしまうと税務署からは売上の計上漏れを指摘されたり、監査の観点からも同様に計上する方法を考えるように指導されたりします。

よって、例えば翌月請求予定金額の3分の1を仮売上で計上する方法や、実際に10日間で請求する予定分の実際額を計算して売上で計上する方法が採用されることがあります。この時通常の売上高と区別するために仮売上として計上することがあります。
注意したいのは、売上に対応する仕入や原価も計上しなければならないのですが、この点原価率を用いたり、実際発生額を計上したりする方法が採用されることが多いです。

仮勘定の多用には気を付けよう

仮勘定はこのように一旦わからない勘定をプールする等使い方によっては重宝される為、ついつい使いたくなってしまう科目かもしれません。しかし、仮勘定の多用をすると様々な危険が存在します。

まず、仮勘定の振り替え漏れが発生する可能性があります。仮受金としてそのまま放置してしまって結果決算時に何のお金かわからないままとなってしまい、結果として先方との入金差異の原因がわからなくなってしまうことがあります。

また、一度に正式な勘定科目にするよりも仮勘定を通した場合のほうが、伝票を起票する回数が増えます。というのも、例えば先方から売掛金に対する入金があった際、売掛金から直接減額できれば1つの伝票で済むのに対し、仮受金をいったん通すともう一枚伝票が必要となってしまいます。

このように、仮勘定は使い勝手が良い場合もありますが、極力使わない仕組みづくりをすることが大切と言えます。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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