同一労働同一賃金改正法が、2020年4月1日より施行されることになりました。この制度施行により、労働者の待遇面での格差が改善されると考えられています。今回は、この同一労働同一賃金改正法がどのような背景をもとに施行されることになったのか、メリットやデメリットにはどのようなものがあるのかについて解説していきます。
正社員と非正社員の格差はあり、給与面はもちろんのこと福利厚生においても大きな差が生じてきました。もちろん、正社員と非正社員において業務内容が責任の重さが異なるのであれば、報酬の差も自然なことといえます。
しかし、業務内容などが同じであるのにもかかわらず、正社員と非正社員で待遇に差が生まれていることは良いこととはいえないという考え方のもとで想起されたものが、この2020年4月1日より施行される同一労働同一賃金改正法です。
この同一労働同一賃金改正法の対象とされる労働者は、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者です。同一労働同一賃金改正法が施行されれば、これらの雇用形態で働いている人たちの社員と正社員の待遇格差は解消されることになります。
実は、2018年の時点で、非正社員として働いている労働者は2,120万人もおり、労働者市場全体からみると4割近くを占めているとされています。また、今後もますます増加傾向となるだろうと考えられているのです。終身雇用の時代も終わり、定年退職まで安定して働き続けることが一般的ではなくなりつつある今、誰でも非正社員として働く可能性はあります。
今回の同一労働同一賃金改正法で、大きく影響を受けるのは、企業側といえるでしょう。では、同一労働同一賃金改正法を導入する企業側のメリットとデメリットはどのようなものが挙げられるのでしょうか。
同一労働同一賃金改正法がきちんと社内に浸透し、それが社外にも広まっていけば、「この会社はきちんと労働者のことを考えてくれる会社だ」と評価されるでしょう。そうすれば、優秀な人材の採用も増える可能性が高まりますし、すでに働いている優秀な人材も他の会社へ転職するという可能性は低くなるでしょう。
これまで非正社員であるというだけで正当な評価をされていなかった人材にとっては、同一労働同一賃金改正法が企業で導入されることにより、日頃の評価を認めてもらえる機会となるでしょう。同じ職場で働いている正社員と同じ給与体系になり、評価も受けられるとなれば、非正社員のしごとに対するモチベーションは向上し、労働生産性も高まることが期待できます。
企業側からすると、人件費が高くなったと感じるかもしれません。これは正確には、高くなったのではなく適正な人件費になったのです。しかし、これまで正社員と非正社員の格差が当たり前だという認識が広まっていたため、「人件費がかかるようになった」という考えをもつ経営者もいるでしょう。
同一労働同一賃金改正法では、社員より企業に対して「どうしてこの給与額なのか」「どのように評価されているのか」という説明を上司に対して請求できる権利を得ることになります。あらかじめ企業より社員に対して、詳しい説明は行われておくべきですが、個別に対応を求められることもあるでしょう。これまで求められていなかったことが求められることになるのですから、これらを負担だと感じる経営者もいるはずです。
では、労働者側から見た場合の同一労働同一賃金改正法の施行はどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。ひとつずつみていきましょう。
正社員は正社員に転職できても、非正社員は正社員に転職できないという状況が解消されていくでしょう。まさに実力主義型の働き方になり、正社員かどうかではなく、仕事ができるかどうかという基準によって仕事が決まっていくようになります。つまり、賃金の問題だけではなく、非正社員の社会的な見方が変わっていく機会となるのです。
同一労働同一賃金改正法によって正社員や非正社員の評価が正しく行われるようになるということは、これまで社員に支給されていた給与が、適正な基準にまで減少する可能性があるともいえます。今まで通り一生懸命業務に携わりつつ、自分の評価が正しく行われているのかどうかを確認する習慣を身につけて置くようにした方が良いでしょう。
同一労働同一賃金改正法により、企業側も従業員側も、これまでとは違った意識で仕事を進めることが求められます。また、企業側は正しい評価をし、それを給与に反映させるという責任も負うことになるでしょう。企業側にとっても非正社員にとっても、メリットの多い職場環境になることを願わずにはいられません。