「収益」と「利益」は言葉が似ているので間違いやすいですが、会計上二つの言葉の意味は大きく異なります。ビジネスにおいて使う場合は、しっかりとその意味の違いをふまえて使うようにしたいですね。本記事では「収益」と「利益」の言葉の意味と内容について説明いたします。
「収益」と「利益」が混同されやすい理由として、実は、日本語の意味としては以下のように「利益」=「収益」なのです。
しゅうえき【収益】 ① 利益をえること。また、その利益。 ② 企業の営業活動などによって縛られた経済価値。出典:大辞林 第三版より
しかし会計上においては、この2つは明確に区分されています。ビジネスでは会計上の意味で用いるため、しっかりと覚えておきましょう。
収益とは、会社が受け取ったお金のことを指します。例えば代表的な物は「売上」です。本来の事業とは別に不動産取引で得たお金や、政府からの助成金なども含まれます。
また、現金だけでなく売掛金も「収益」としてカウントします。
利益とは、収益からさまざまな費用(支出)を差し引いた金額のことです。
つまり、
『利益=収益―費用』の式で表されます。
「費用」には、売上原価や販管費及び一般管理費などがあり、どこまでを含めるかによって利益の計上が異なります。
会社が受け取ったお金全般を指す「収益」ですが、その内訳は大きく、「営業収益」「営業外収益」「特別利益」の3つに分類されます。
企業の営業活動によって生まれた収益のことで、代表的な物は「売上高」です。しかし、売上高と売上値引を区分して、値引分をマイナスの収益として計上する場合もあるので、一概に同じものとは言えない場合があります。
なお、「年商」という言葉がありますが、年商についてもこの営業収益に含まれます。厳密にいうと、「年商」は1年の年度単位の売上を差し、「売上高」というのは一定期間の売上げた金額であるため、その期間によっては必ずしも同じ意味合いではありません。
受取利息や配当金、仕入値引きや雑収入、不動産賃貸収入といった、企業の本来の営業活動以外から生じる収益を差します。
「利益」とついていますが、誤字ではなく、特別利益は収益の1つです。固定資産や有価証券を売却して得た収益など、非経常的な経営活動によって得られた収益のことを指します。
次に「利益」を見ていきましょう。収益から費用を引いたものが「利益」ですが、その「費用」をどこまで含めるかによって、損益計算書上では利益は5つに分類されます。
売上高から商品の原価を差し引いた利益が「売上総利益」で、別名「粗利益」ともいいます。
損益計算書では一番初めに出てくる利益です。売上総利益を売上高(営業収益)で割って計算したものが売上総利益率で、同業他社と比べた場合に、どれだけ仕入れ力があるかなどを見ることができます。
売上総利益から「販売費及び一般管理費」(販管費)を差し引いた利益を営業利益といいます。売り上げのためには仕入れ原価以外にも人件費や広告費などの費用が掛かります。営業利益からは本業での利益が見えるため、営業利益の額が大きいほど優良企業とされています。
営業利益は売上総利益から求めますが、本業以外の活動(保有する不動産からの家賃収入や預金利息など)を営業外利益といいます。経常利益は営業利益と営業外利益を足したもので、企業の事業全体の利益を見ることができる数値です。
毎年どのくらい企業が稼いでいるかを見る指標なので、普段は発生しないような利益や損失は含まれません。例えば会社の不動産を売却した利益については「特別利益」に振り分けられ、経常利益には含まれないようになっています。
法人税などの税金を支払う前の利益です。経常利益には含めなかった特別利益についてはここで加算し、さらにそこから特別損失(天災などで生じた突発的な損失)を差し引いて求めます。簡単に「税引前利益」と呼ばれることもあります。
税引前当期純利益から、法人税などの税金分を差し引いた最終的な利益が当期純利益です。もしこの数値がマイナスの場合は「当期純損失」といいます。
会社の財務分析において重要視される項目の一つであり、前年度・前々年度、競合他社との比較によってその会社の財務状況や成長性をみることができます。
収益は費用を含む金額であるため、収益がいくら大きくても費用がかさむ場合は、肝心の利益がマイナスになることもあります。例えば年商10億円だったとしても、人件費や広告費、オフィスや店舗の家賃などで12億円かかっていたら、マイナス2億円という赤字になってしまいます。
つまり「年商」「売上」の金額がいくら大きくても、その会社や個人がちゃんと「利益」をあげているかどうかというのは別の問題です。
パッと見た言葉に惑わされず、会社の財務状況を確認することでその健全性を見るようにしましょう。