「連結財務諸表」とは、法的には別企業である親会社と小会社を、単一の企業組織と見て作成する財務諸表のことです。親会社がグループ企業の経営・財務状況を総合的に報告するために作成します。本記事では、連結財務諸表の作成について、その手順などを含めて解説いたします。
大会社では一般的に、親会社と子会社や孫会社など支配従属関係のある会社で企業グループを構成して事業を行っています。
例えば、子会社が製品を製造し、販売も子会社が行い、親会社がその統率を行っているような製造業や、銀行や保険などの金融業で、持ち株会社が親会社を含めて総合的に管理している企業グループなどです。
企業グループで事業を行っている場合、各企業の個別の財務諸表では、グループ全体の経営実態を確認することができません。そのため、企業グループ全体を連結して決算を行い、財務諸表を作成することで、全体の財政状況や経営成績を把握できるようになります。
連結財務諸表の作成手順は、まず、子会社や孫会社などのグループ企業から、財務諸表作成に必要な情報を収集し、個別に作成した親会社とグループ企業の財務諸表を合算、グループ内部取引や内部利益など、連結決算に伴う調整作業を行うことで連結財務諸表が完成します。
その手順について順番に見ていきましょう。
連結決算は、企業グループ内で行った取引を同じ会社での取引とみなして消し込む作業があるのですが、その準備として、事前に子会社・孫会社それぞれの基本情報や取引情報を収集し、内容を整理しておきます。
・投資時期や投資額
・持ち株比率等の資本関係
・取引形態
・債権債務の状況
・過年度の未実現損益など
子会社・孫会社に関する事前調査は連結初年度だけではなく翌年度以降も実施することで、情報を更新しておけば、連結財務諸表の作成をスムーズに進めることができます。
親会社にて、子会社・孫会社にて作成した個別財務諸表など、連結財務諸表を作成するために必要な情報・資料を集めます。
(2)にて集めた親会社と子会社の個別の財務諸表を合算して、連結調整前財務諸表を作成します。
親会社と子会社の決算書を合算する前に、親会社または子会社の個別決算上の会計処理が異なる場合には、連結会計方針に従った場合の会計処理に修正を行います。
もし、子会社・孫会社に日本国外の子会社がある場合は「外貨建取引等会計処理基準」に従って、以下の日付のレートにて円換算します。レートがそれぞれ異なりますので要確認です。
・損益計算書:期中平均レートあるいは決算日レート ・資産・負債:決算日レート ・親会社による出資:取引日レート ・評価換算差額、少数株主持分:決算日レート
親会社と子会社で勘定科目や会計基準が異なる場合、子会社を連結決算用に修正・統一します。その上で、連結注記事項として連結財務諸表にて開示します。
グループ会社全てが同じ決算日とは限りません。原則としては連結決算日に正規の決算に準じる合理的な手続きを用いて決算を行うことになっていますが、決算日が3ヶ月以内であれば、子会社の決算を用いて連結決算を行うことが容認されています。
個別財務諸表では、それぞれの法人は別ものとして存在していますが、連結財務諸表上においては同一会計とみなされます。そのため、グループ内で行われたお金のやり取りを消去する必要があるのです。
例えば、親会社と子会社の貸借対照表で重複している取引などを相殺して消去したり、親会社からの投資が子会社にされている場合は、子会社の資産を消去したりといった修正を行います。連結仕訳は必ず換算、組替、そして合算を行なってから連結仕訳という順序で行います。
連結調整仕訳には以下のものなどがあります。
連結決算については、過年度の連結仕訳を引き継ぐための開始仕訳が必要です。この作業にて、期首の利益剰余金と前期末の利益剰余金を一致させます。
親会社の子会社・孫会社に対する投資と、子会社・孫会社の株主資本については、同グループ内の取引なので相殺消去します。
連結会社間で債権・債務を貸借対照表状に計上している場合は相殺消去します。
企業グルーム内で商品の販売があった場合、連結会計上は内部取引とみなして相殺消去します。
企業グループ内で販売された商品には利益が含まれているので、この分を在庫から削減します。
内部取引の消去で売掛金を消去している場合、売掛金に対して設定した貸倒引当金も調整します。
今までの仕訳による消去や調整にて、税引前当期純利益が変動しますので、個別財務諸表との差異が生じます。よって、連結調整分のみ税効果の金額を調整する必要があります。
ここまでの作業を経て、連結財務諸表が完成します。作成するものは以下の通りです。
・連結貸借対照表
・連結損益計算書
・連結包括利益計算書
・連結株主資本等変動計算書
・連結キャッシュ・フロー計算書
・連結注記表(各連結財務諸表の注記事項を表す)
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