土地や建物に対して固定資産税が課されるように、一定の事業用の資産については、償却資産税が課されます。事業を営んでいる以上、償却資産に該当するものを所有している場合には、毎年申告の上、納税しなければいけません。
今回は、この償却資産税について、その内容及び申告手順を解説します。見落としがちな税目ですので、是非ご参考ください。
償却資産税とは、固定資産税の一部を占めるものです。土地及び家屋以外に所有する事業用の資産のうち、減価償却に係る部分が課税所得を計算する際に損金や必要経費として取り扱われるもの(これを「償却資産」と呼びます)に対して課税されるものです。
償却資産税については、原則として市町村が課税業務を取り扱います。例外的に、東京都23区においては、東京都がこれを取り仕切る運用がなされます。
償却資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点における当該償却資産の所有者です。償却資産の所有者であれば、個人と法人を問いません。この意味で、すべての土地建物に課税される純粋な固定資産税とは扱いが異なる点に注意が必要です。
償却資産税の税率は、当該償却資産の評価額の1.4%です。
償却資産税の対象について説明します。すべての事業用の資産がこれに含まれるわけではないのでご注意ください。
償却資産税の対象となるのは、以下に該当するものです。
1. 構造物:舗装路面、庭、門・緑化施設・塀などの外構工事、広告塔などの看板設2備、受変電設備、予備電源装置、ゴルフ練習場設備、その他の建物設備や内装造作物など
2. 機械・装置:製造設備などに設置している機械や装置、クレーン設備、機械式駐車設備など
3. 船舶:釣り船、漁船、遊覧船、ボートなど
4. 航空機:飛行機、ヘリコプター、ハンググライダーなど
5. 車両、運搬具:大型特殊自動車(分類番号:0、00~09、000~099、9、90~99、900~999)など
6. 工具、器具、備品:パソコン、什器、ネオンサインなどの看板、医療機器、各種測定器具、金型、理容及び美容機器、衝立など
大まかな分類はこのようになります。もちろん、各業種によって償却資産としてカウントされるものは更に細かく生じるので、詳細は税理士などの専門家にお尋ねください。
償却資産に含まれそうなイメージをもたれがちな自動車ですが、これは自動車税及び軽自動車税の対象として扱われるので、償却資産税は課されません。
また、以下のものについては、先に列挙したものには含まれませんが、償却資産税の対象となります。
・福利厚生のために使用するもの
・建設仮勘定で計上されている資産のうち、1月1日の基準日において事業の用に供することができる状態にあるもの
・改良費
・使用可能な期間が1年未満または取得価額が20万円未満の償却資産のうち、個別に減価償却をしているもの
償却資産税については、上記の区分に当てはまっていても、以下の内容については、課税・申告の対象外となります。
・購入代金が10万円未満で消耗品費にて購入したもの
・20万円未満で3年均等の一括償却をしたもの
・自動車税、軽自動車税の課税対象となるべきもの
・無形固定資産 (例:アプリケーションソフトウェア、特許権、実用新案権等)
・繰延資産
・平成10年4月1日以降開始の事業年度に取得した償却資産で、耐用年数が1年未満又は取得価額が10万円未満の償却資産について、税務会計上固定資産として計上しないもの
それでは、ここからは償却資産の申請手続きを順を追って説明します。具体的には以下の流れです。
1. 申告書の提出
2. 価格等の決定及び課税台帳への登録
3. 課税台帳に登録した旨の公示
4. 課税台帳の閲覧
5. 審査の申し出
6. 税額の算出及び納税通知書の交付(課税)
7. 審査請求
8. 納期
それでは各段階について見ていきましょう。
申告期日は1月31日(1月31日が休日の場合はその翌日)です。この日までに、該当の市区町もしくは都税務署に対して申告書を提出してください。償却資産を複数の場所に所有している事業主の方は、その資産が所在する担当役所に対して、それぞれ申請をしなければいけません。償却資産税は人に対して課されるものではなく、償却資産を基準として課されるものだからです。
申告の際に必要な書類は、「償却資産申告書」「種類別明細書(増加資産用)」「種類別明細書(減少資産用)」です。後2者については、前年度と比べて所有償却資産に変動があった場合にだけ提出するものです。
書面で申告書を提出しても良いですし、電子申告による方法でも可能です。前年度と比較して、償却資産の増減があったものを申告する一般方式と、所有するすべての償却資産を申告する電算処理方式があるので、適宜ご選択ください。
償却資産の価格等は、申告書の内容に基づき調査が行われ、これによって決定されます。決定された価格等については、償却資産課税台帳に登録されます。法人税などは申告者側で計算する必要がありますが、償却資産税に関しては、申告者側で計算する必要はありません。
価格等が決定し、償却資産課税台帳に登録されれば、その旨が公示されます。
償却資産台帳に登録された価格等の情報は、閲覧することができます。閲覧できるのは、所有者、納税管理人、代理人など、固定資産税の課税に関して直接関係を有すると考えられる人のみです。公示された日から閲覧可能となります。
償却資産課税台帳に登録された価格等に不満がある場合には、公示の日から以下で述べる納税通知書を受け取った日の後3ヶ月以内に、固定資産評価審査委員会に対して審査請求を行うことができます。審査請求に対してなされた決定に対してさらに不服がある場合には、審査決定に対する取消訴訟を提起して争うことになります。
課税標準額の1.4%が償却資産税として課されます。6月上旬頃に納税通知書が交付されます。
なお、償却資産の価格評価により、課税標準額が150万円未満の場合には、償却資産税は課されません。この場合、納税通知書の送付もないのでご注意ください。
課税内容について不服がある場合には、審査請求をすることができます。
4回の納期に分けて分納することも可能です。東京都23区所在の償却資産については、6月、9月、12月、2月です。口座振替での納税も可能です。
意図的な申告漏れは厳禁ですが、償却資産はどこまでが課税対象に含まれるか複雑なので、見落としが少なくありません。その場合、5年に遡及して請求されるので(不正によって申告を免れた場合には7年遡及)、ご注意ください。
また、過年度分について追徴を受けた場合には、納期は1回です。高額の追加納税を求められるケースもあるので、申告の際に漏れがないように留意してください。
以上で償却資産税に関する説明を終わります。経営する事業内容によっては、どこまでのものが償却資産に含まれるか判別が難しい場合があります。また、自宅と事業所を兼ねているケースも、どこまでが償却資産としての扱いになるのか、微妙な問題を孕みます。申告漏れの際のペナルティを考慮すると、最初から適切に申告をしきることが大切です。ぜひ専門家に相談の上、償却資産税の納税手続きを行いましょう。
償却資産については、こちらのコラムでも紹介しています。ぜひご参考ください。
・固定資産税の対象である償却資産ってなに?手続きも含め解説します