コンテンツ産業とは、アニメや漫画、ゲームなどの放送、出版、キャラクターなどの情報(コンテンツ)に関する産業のことです。日本のコンテンツについては国際的にも評価が高く、キャラクターやゲームなどは世界中で数多く受け入れられているものが多くあります。今回はそんなコンテンツ産業において、特徴的な経理業務について公認会計士が詳しく解説します。
一口で「コンテンツ」といっても内容は幅広く、2004年6月に成立した「コンテンツの創造,保護及び活用の促進に関する法律(略称 コンテンツ振興法)」の定義では、映画、音楽、テレビ番組、書籍、雑誌などの娯楽性が強い情報に加えて、演劇やコンサートなどのライブエンターテインメントも含むとされています。
コンテンツ産業については、2001年から経済産業省 商務情報政策局監修のものと、(一社)デジタルコンテンツ協会により、毎年その経済規模が集計されています。
2019年9月1日に刊行された「デジタルコンテンツ白書2019」によると、2018年の市場は12兆6590億円と大規模な市場を形成しており、なかでもインターネットの発達によるネットワークでのコンテンツが初めて首位となり3608億円、放送メディアを越えてきました。
世界全体で見ると、コンテンツ産業の市場規模はすでに1兆ドルを超えており、日本のコンテンツ産業は今後どのように国際化を進めて海外展開をしていくかが課題の一つとされています。
コンテンツとなる素材は、著作権法で保護される無形資産ですが、映画にしろゲームにしろ完成までには莫大な費用と時間が掛かります。ヒットすれば、投資した資金回収に加えて多額の利益を得、さらにメディア展開などでもさらなる売り上げを上げることができます。
しかし、もし失敗した場合は大損害を被り、コンテンツ産業は出してみるまで分からない、ある意味リスクの高い産業でもあります。
コンテンツ産業の会社に入社したとしても、経理担当者がコンテンツビジネス自体に関わることはあまりないといえるでしょう。もし派遣社員で経理担当となったりしたらなおの事、雇用契約もありますし、専門外のことに携わることはなさそうです。
実は、コンテンツ産業においては、日本の会計基準ではどうするという処理方法が明確に決まっておらず、従前の慣行によって各社で様々な処理がなされているのが現状です。
例えば、コンテンツを製作するための制作費用については、棚卸資産・無形固定資産・有形固定資産などが混在しており、貸借対照表の計上科目が異なる場合があります。
資産計上のタイミングについても、製作費のうちどのフェーズで計上するのかは各社ばらばらだったりするのです。
コンテンツ産業は、製造業の一種ともいえるので、経理業務の内容としては、商業簿記だけでなく工業簿記の知識も必要となるでしょう。
以下の記事は工業簿記について記述していますので、参考にしてみてください。
関連記事:難しい?工業簿記の勉強法について解説します|Hupro Magazine
通常業務は一般的な簿記知識で対応可能ですが、
例えば、テレビであれば放送日基準による費用計上、映画や番組の出演者や権利者に対するギャランティー支払いといったようなコンテンツはそれぞれの特徴に応じた特殊な会計処理が行われることもあるので、要注意です。
また、会計ソフトも一般的に知られたものではなく、業界独自の業務に使いやすいように専門のものが導入されていることもあるので、操作方法についてなどの習熟も求められるでしょう。
コンテンツ制作費の会計処理については、前述の通り業界・会社ごとに異なります。
例えば出版業界であれば、出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる再販制度という特殊な販売形態をとっています。
書店は本を買い切るのではなく、売れ残った書籍については、委託期間内であれば取次店を通して返品されます。
そのため、出版社では、出荷して売上に計上したものが返品されるのに備えて「返品調整引当金」を設定し、返品額と返品された出版物の原価の差額(=利益部分)を引当金として計上しています。
ゲームソフト会社などでは、ゲーム開発費については製品マスターを作り上げるまでは「研究開発費」とし、出来上がったゲームソフトは「無形固形資産」として資産計上するなどの会計基準を採用しています。
映画・音楽業界であれば、コンテンツ製作途中は仕掛品として棚卸資産として取り扱うことが多く、その後はコンテンツの内容によって複数の処理を行います。というのも出来上がるものが1つではなく、映画であれば映画そのものの製品のほか、配給権や上映権、キャラクターグッズの販促品など多岐にわたるからです。
また、予算や資金繰りについての管理や、スタッフや出演者、アーティストへの報酬の計算なども一定ではなく、その成果に応じて支払われることも多いので、それぞれの対応が求められます。
コンテンツ産業自体が、画一的な会計基準を模索中でもあり、まだ業界統一基準といったものが策定されていないので、まずは基礎となる簿記知識をベースに、所属する会社の実務の中で対応していくことが求められるでしょう。
コンテンツ産業の大きな特徴は扱う商材が「無形資産」であるということです。完成までにかかる投資に対して、利益が見込めるかはわからない、不安定な産業ですので、将来予測を立てるのは難しい業界です。
経理処理に関しては、日本の会計基準でどうすべきかがしっかりと定められているわけではなく、各社の用いる商材の種類に最も適したやり方を用いたり、独自の科目を用いたりして、処理を行っています。
どういった処理を行うことが適しているのか、やりながら対応していく必要があります。
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