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公認会計士が解説!上場準備会社とは?経理が求められる役割は?

公認会計士 大国光大
上場準備中の会社が経理に求めることは?

よく経理の求人で「上場準備中」や「○年後に上場を目指している企業です」と記載されている会社を見かけることがあると思います。今回は、上場準備中の会社が経理に求めることについて現役公認会計士が解説します。

上場準備中の会社ってどんな会社?

上場準備中の会社というのは、これから上場して会社の株式を一般の投資家が売買できるようにする会社を言います。

一般的には今後の成長性が認められるため成長が著しい会社であると言えます。

上場準備中の会社は急成長していることが多い為、営業部隊や特定の技術部門は充実していることも多いです。

一方で、大規模の会社と違って上場準備中の会社は組織が不完全なことが多く、特に管理部門に手が回っていないことが多いと言えるでしょう。

上場するために会社にとって必要なこと

上場準備中の会社が上場するために必要な事項として挙げられることの一つに、規程類の整備が必要となります。

また監査役等必要な役員の人数が必要となります。これ以外にも内部統制監査制度の構築や必要な組織の構築等があります。

多くの事項を解決しなければならないのですが、経理をはじめとする管理系の内容が多い為、ここからは経理に絞った必要事項をお伝えします。

上場準備会社には【経理】と【財務】の分離が必要

中小企業では経理と財務の要員が一緒で、仕訳を記帳する人と現預金を管理する人が同じであることが多いです。これは、現預金を管理して都度仕訳を記帳したほうが効率的ですし、コスト面で管理の人員にそれほど割けないためです。

しかし、上場準備会社では仕訳を記帳する経理担当と、資金を管理する財務担当を分離することが必須となります

これは両方の作業を同一人物が行ってしまうと、仮に担当者が不正をしてしまった場合にチェック機能が効かないため、誰もその不正に気付かないためです。

そのため、これから上場を目指そうとしている会社や上場準備会社では経理もしくは財務の募集をすることが多いと言えます。

上場準備会社には経理と財務の分離が必要

上場準備中の会社に求められる経理能力

上場準備中の会社はこれから上場に向けて様々なことを行わなければなりません。よって、経理担当者には様々なスキルが求められます。

まず、上場準備会社では上場会社並みの経理知識が求められます。これは、上場していない会社は税法基準で決算書を作成していることがほとんどですが、上場準備中の会社は上場会社と同様の決算書を作成しなければなりません。

また、会社内にそのような知識を持っている人もいないことが多い為、上場会社の決算書をある程度理解している必要があります。

また、上場準備会社では「*決算短信*」や「有価証券報告書」など投資家に対する公開書類を作成しなければなりません。

これらの書類は上場していない会社では作ることがないため、科目の表示方法や必要記載項目の漏れを無くすことなど、様々な点で注意が必要となります。ただし、決算短信や有価証券報告書は監査法人や印刷会社から色々なアドバイスをもらえることや他社例がインターネットや印刷会社から入手できるため、初めて作成する場合でも結果的にはなんとかなる分野と言えるでしょう。

上場準備中の会社の経理で増える仕事

上場準備中の会社では、経理担当者は経理以外の仕事も増えます。
まず、規程の整備は上場準備室や上場準備プロジェクトで行うことになりますが、経理がそのプロジェクトを担当することも多いですし、そうでなくとも経理関連の規程の整備が求められます。

経理関係の規程について、そもそも無い会社がほとんどと考えられます。この点、経理規定はひな形が専門書などに付属していることが多いので、大手監査法人が出版しているものを利用することが多いです。

しかし、あくまでも一般例であるためその会社の実態に合うように作り替えなければなりません。

また、上場準備中の会社では「内部統制の評価」が義務付けられます。ここでは、会社で必要な規程を作りこみ、その規程通りに業務を運用し、その運用が正しくできているかどうかを監査します。

経理担当者がその仕組みを構築する役割を担うこともありますし、経理関係の内部統制の構築は経理が行うこととなります。例えば、経理作業の業務手順書を作成したり、チェックリストを作成したりするのも経理の仕事となります。

上場準備中会社の経理の給与は高い?

上場準備中の会社は、これまでお話した通り高度なスキルが求められます。しかし、これまで管理にコストをかけてこなかった会社が多い為、びっくりするほど給与が高いわけではありません。

しかし、上場が近づくにつれて企業もそのような能力を持った人材を確保したいと考えるため、給与水準が上がったりその人の能力を判断して募集しているよりも給与水準を上げたりすることも考えられます。また、能力を評価されればそこからの昇給も柔軟に考えてくれる企業が多いと考えられます。

よって、まずは応募してみて能力を判断してもらうという考えかたも一つの方法であると言えるでしょう。

まとめ

上場準備会社は、上場するためのあらゆるハードルや要件をクリアしなければなりません。その中でも、経理・財務面は上場前の会社は人員が不足しているなどで、万歳ではないことが多いです。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:転職・業界動向

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