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営業マンと会計基準上の売上の認識は違う?

HUPRO 編集部
営業マンと会計基準上の売上の認識は違う?

営業マンから「売上これだけ取れました!」という報告を受けたにもかかわらず、会計上計上されている売上高と大幅な乖離があった場合、社長としては営業マンがウソをついているのでは?とも思うかもしれません。実は両者にはズレがある可能性があります。そこで、営業マンと会計基準上の売上の認識について解説します。

営業マンが主張する売上とは?

例えば、車のディーラーの営業マンについて、最も大事なことはお客さんから車の注文を受けることでしょう。多くのディーラーでは、営業マンに対するノルマとして、「月に○台の受注達成」というように指示します。そのため、営業マンとしては車の受注を受けることに注力をし、受注がとれれば目標達成と言えるわけです。そのため営業マンからすれば受注時に売上計上、と考えているかもしれません。そうでなくとも、お客さんからの入金をもって売上達成、と思うかもしれません。

営業マンの認識する売上と会計上の売上は違う!

お話した通り営業マンは受注時もしくは入金時に自身の作業が終わったということで売上を認識しているかもしれません。しかし、会計上の売上はそのようには認識しません。今までの流れの通り車のディーラーを例にとってお話します。

売上高は顧客との契約に基づいて物品の販売もしくは役務の提供義務が終わった際に計上されます。よって、車であれば実際に顧客の手に渡った時点か、車の登録が行われた日(車検日)に売上計上されることになります。
よって、受注時には特段会計処理はされず、入金時にも前受金として処理するのみとなります。では、売上の会計基準にはどのようなものがあるか紹介していきましょう。

製造業に多い出荷基準

製造業では売上の計上基準として出荷基準を採用していることが多いです。この基準では完成した製品がメーカーからトラック等で発送される日付で売上計上されるため、隣町に出荷する場合も1日以上かかる遠方に出荷する場合も同じ日で売上計上されます。
本来売上は物品を引き渡した日に行われるため原則として出荷基準は認められないのですが、出荷=着荷までそれほどの時間がかからないという理由により実務上かなり多くの企業で採用されている基準となります。

大型機械メーカーに多い検収基準

製造業の中でも大型機械のメーカーでは検収基準を採用することが多いです。検収基準というのは、製品を出荷したのち、先方が検査をして合格を出した際に売上を計上する方法となります。
大型の機械であると、先方の検査を何度も繰り返すことによってメーカーに差し戻されることがあります。それにもかかわらず売上計上をして請求書を発行してしまうのはトラブルの元となります。よって、検収時に売上計上されることになります。

設置工事を伴うものは引渡基準

通常の物品販売であれば出荷基準での売上計上、長期にわたり検収作業が発生するものは検収基準を採用します。数分程度の設置行為が発生するようなものは引渡基準を採用することも多いです。出荷だけでは義務は果たされていないものの、検収基準のような大掛かりなものでない場合は、先方からの受領書を基に売上計上が行われることがあります。
これ以外にも、戸建ての住宅の場合は鍵の引き渡し時をもって売上計上されることとなります。

大掛かりな工事については工事進行基準

ゼネコン等の1件当たりの受注額や工期がとても長いものについては工事進行基準というものが採用されることがあります。これは、例えば100億円の工事であり2年かけて行われるようなものの場合は工事が完成しないと売上計上できない場合、損益がかなり歪んでしまうためです。
よって、工事の進捗具合に応じて売上を認識する工事進行基準というものが採用されることがあります。これは、受注額100億円で総原価80億円と見積もられた場合、決算までに40億円の工事原価が発生したとすると売上高も半額の50億円を計上するという方法となります。多くは建設業で用いられることとなりますが、ソフトウェア開発等の開発を伴う業種でも多く取り入れられる方法となります。

輸出の場合は船積み基準等

輸出業となると、出荷から先方に届くまで1か月かかることも平気であります。よって出荷基準を採用してしまうと、売上の計上が早すぎることとなります。
そこで採られるのが、船に積んだ時点で売上計上を行う船積み基準となります。船積み日は貿易の為の書類に必ず記載されている為、それに沿って売上計上することとなります。この船積み基準は、船に積んだ瞬間に荷物の紛失や損失のリスクが得意先に移る場合に使われますが、海外に到着するまではこちらの責任で運送しなければならない場合は着荷基準という、先方の国についてからようやく売上計上をする方法が採られます。どちらを採用するかは先方との保険の負担や契約書に基づいて判断することとなります。

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