決算といえば3月が多いようなイメージですが、実はセブン&アイ・ホールディングスやイオンをはじめとする大型の小売業は2月の決算が多いのです。それはなぜでしょうか?本記事では、小売業が2月決算を行う理由を解説します。
実は法人の決算月というのは会社設立時に自由に決めることができます。正式には、会社設立日から1年以内の日に設定する(例えば1/1設立の場合は12/31までに決算日を設定する)のが決まりです。
法人の決算月というのは、3月や12月が多いイメージですが、これは、日本が4月から新年度がスタートするため、大企業ほど国や行政機関との関わりが深く、法改正などのタイミングもあわせやすいといった事情もあります。
また、外資系企業の場合は、12月が年度末に当たるので、このタイミングが多くなるのです。
そのため、実に上場企業の約7割弱が3月決算、次に約1割強が12月決算を採用しています。よく、監査法人は3月が激務というのが良くわかる数字ですね。
そして、3月・12月に続いて上場企業の決算が多いのが、本題の2月です。そうはいっても6%なので、いかに3月決算が多いかわかります。
ただ、実は非上場の企業もあわせて全体でみた場合は、3月決算の会社というのは2割未満となります。
小売業が2月決算を行うことが多いのには理由があります。
年間を通じて消費活動が一番盛り上がるのは、夏のお中元やボーナス後の6~7月と、冬お歳暮やボーナス後にはクリスマス、お正月などの行事が目白押しの12~1月。年末年始は小売業にとってはかき入れ時ですが、1月後半あたりから落ち着いてきます。
個人消費関連企業の売上は「ニッパチ」といって、消費活動が盛り上がった翌月の2月と8月には落ち込む傾向があるのです。
近年はインバウンド消費もありますが、年間を通じてある程度繁忙期と閑散期がはっきりしているのが小売業の特徴でもあります。
消費活動の閑散期を狙って、手間のかかる決算業務を行う企業が多く見られます。
というのも、小売業は実際に販売している商品がそのまま資産となるため、店頭や倉庫にある商品の在庫数量を全店分確認し、その在庫の金額がどれだけあるかを数え上げる「棚卸」という作業があります。
決算に関わる業務は経理部門のみの仕事ではなく、各店舗からの売上や経費の締め、商品の在庫の棚卸など多岐にわたります。特に、決算の棚卸は決算月の最終日に行うことになっているので、お店によっては閉店後だけでなく、半日や1日そのために時間を取って行う場合もある程の作業です。
決算においては、売上高より、この在庫金額を引くことで、売上総利益を求めますので、在庫を確認することは非常に重要です。
閑散期である2月・8月は、それぞれのシーズンのバーゲンも終わり、次のシーズンの商品を本格的に仕入れる前で商品在庫も少なくなっているため、在庫の棚卸にかかる時間も短縮できるというメリットもあるのです。
法人税の申告期限は、決算期末から2か月ですが、経理部門での作業はその間が最も忙しくなります。店舗や現場から上がって来た帳簿の内容を確認し、内容に不備がないか、実際の数字が合っているかどうか丹念にチェックを重ねます。
決算業務とチェックが終わったら、税金等の計算を行い、損益計算書などの決算書類の作成を行います。決算書等は取締役会や株主総会を経て承認後、税金を納めるという流れです。
なお、株主総会における決算の報告・承認については事業年度の末日から3ヶ月以内となっていますが、税金の申告期限は2ヶ月以内と、期限が短くなっています。
そのため、規模が大きく、決算にまつわる業務が多岐にわたる上場企業は「申告期限の延長の特例の申請書」を税務署に提出し、申告期限を1ヶ月延長して、株主総会と税金の申告を行っているケースも多くあります。
棚卸や決算業務をスムーズに行うためには、前準備も欠かせません。現場としては決算月当月に行う作業が多いもの。棚卸に備えて、忙しい時にはなかなか手を付けづらい倉庫やバックヤードなどの整理整頓を行ったり、溜まりがちな経費精算を片付けたりなど、来店者が少なくなりがちな2月は、決算業務への準備を進めるのに適しているのです。
なお、2月と8月が閑散期になりがちだということで、2月だけでなく、8月の決算を行う小売業ももちろんあり、良く知られたところでは、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングやビックカメラなどは8月決算を採用しています。
決算自体は、何月に行うことも可能ですが、決算と同時進行で、現況を見ながら売り上げ目標を立てたり、次年度の計画を練ったりというプランニングも行うこと考えると、比較的閑散期といえる時期に決算を行うのは、リソースの観点から見ても必然と言えるでしょう。