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40代公認会計士の転職とキャリア!監査法人からの転職成功事例を含めて現役会計士が解説!

公認会計士 大国光大
40代公認会計士の転職とキャリア!監査法人からの転職成功事例を含めて現役会計士が解説!

20代で公認会計士になり、監査法人で10数年働くと40代となり、そろそろ転職を考える時期に差し掛かります。一方で、転職は30代までと言われることもあるため、このまま残る方が良いのかも含めて様々悩む方も多いと思われます。今回は、そんな40代会計士のキャリア形成について現役公認会計士が解説します。

公認会計士の転職事情

まずは公認会計士の全体的な転職事情を見ていきましょう。
「公認会計士は就職できない」などという言葉を目にしたことがあるかもしれませんが、難関国家資格の有資格者ということもあり、公認会計士の売り手市場になっているのが実情です。

BIG4を中心とした監査法人が、リーマンショックの影響で2010年~2011年に大規模なリストラを実施したことから就職できないという言葉が残ってしまっているようですが、経済が回復したことにより公認会計士のニーズが高まっているのが現状です。

また近年は監査法人や企業の管理部門以外でも様々な職場に公認会計士が必要とされており、転職先の選択肢も増えている状況です。

またFASやM&Aアドバイザリー会社では、市場の成長が著しい中で、公認会計士のニーズがより高まっており、採用要件を引き下げている企業も多く、募集する年齢層の幅も広げています。

40代会計士が転職を考えるのはなぜ?

40代になって転職を考える公認会計士は、なぜそのような決心をしたのでしょうか?

今の職場でのキャリアプラン以外に挑戦したいと考えている

40代の会計士というと、監査法人ではマネージャーからパートナーへ上がれるかどうかを考える時期です。パートナーとなって定年まで勤めあげるか、パートナーにあがれないとなれば定年までマネージャー職で現場に往査をするかなど、悩む方は多いです。
監査より他に自分にやれることはないか?という考えが40代になると浮かんできます。20歳代前半でスタートして、60歳を定年とするとちょうど折り返しの時期である40代。残り20年ほどあるキャリアをどう歩んでいくか悩む方は実はとても多いのです。

今の職場でのキャリアップの可能性が限られてくる

40代になるとある程度、今後のキャリアアップの可能性や選択肢が限られてきます。そのポジションを目指して働き続けられる人もいれば、期待していたキャリアとの相違があったり常に広いキャリアの選択肢があった方が良いという人もいます。
後者ような40代会計士にとっては、現職で働くモチベーションは徐々に下がってしまうでしょう。そういった会計士は他の職場で働くことでキャリアチェンジをしていきたいと考えるようになるのです。

職場に求める希望条件が固まってくる

40代は人生の中でも折り返し地点になるので
、人生の後半戦をどう生きていくか、これまでの経験をもとに設計する人も多いです。また、親の介護子どもの養育など、仕事以外でもやることが増えていきます。

40代はこういったことを契機として、どのような環境で働いていきたいかという条件が明確になっていく時期なのです。転職エージェントである「ヒュープロ」にて40代以上の公認会計士からよく伺っているのは、以下のようなご希望条件です。

・年収をこのくらい上げたい
・残業時間を減らしたい
・リモート勤務がしたい

このような希望条件と今の職場の環境がマッチしていないと、転職を検討するようになります。

40代公認会計士の転職は難しい?

一般的に転職は40代になると難しいとされています。「ポテンシャル採用」と呼ばれる実務経験やスキルが乏しくても将来的な活躍ができる潜在能力を買って採用する選考方法が、40代以上では適用されることがほぼ無いからです。

公認会計士なら40代以上のニーズも高い!

ただし、公認会計士については、40代以上でも比較的転職を成功させやすいといえます。
20代、30代のうちに資格を取得した公認会計士であれば、監査法人などで資格を活かした実務経験を積んでいるケースがほとんどでしょう。ですので、即戦力となる人材を採用したい企業からの需要が高いわけです。
一方、40代になって資格を取得した公認会計士は実務経験を多くは積めていないこともあります。しかし、公認会計士は昨年の試験では7.7%しか合格していないほどの難関資格ですので、その知識を活かせる職種は多くあります。特に未経験の場合は求人が限られてしまいますが、転職が難しいというわけでは決してないのです。

公認会計士なら自信を持って転職活動できる!

40代の転職が難しいと言われるもう一つの理由として、求人情報などから自分のキャリアに自信が持てず、転職への意欲が湧きづらいという点があります。公認会計士であればそのような懸念なく、自信を持って転職活動をして問題ないので、挑戦してみるのがおすすめです。
実際、当社転職エージェントのヒュープロを利用している公認会計士のうち、約29%が40代以上ですので、ご転職を積極的に検討してみてはいかがでしょうか?

40代会計士の主な転職先とは?

公認会計士は多様なジャンルの企業からのニーズがあります。それは40代だからと言って減るわけではありません。もちろん組織編成の都合上、採用したい年齢層が設定されている求人もありますが、公認会計士の転職市場では年齢よりも資格を持っていること、さらにそれに加えた実務経験が重視されるのです。では、実際どのような転職先があるのでしょうか。主な転職先を見てみましょう。

監査法人

公認会計士の約9割ほどが監査法人に就職するといわれ、最も代表的な就職先と言えます。監査業務を中心に、資格取得の際に培った知識を最大限に活かしやすい職場です。中小規模の監査法人とBIG4を筆頭とした大手の監査法人に分けられることが多いですが、中小から大手へ転職するケースもよく見られます

一般事業会社の財務部門

公認会計士は一般企業で企業内会計士として働く選択肢もあります。
企業の財務諸表作成や税務申告が主な仕事で、税制や会計基準が複雑化するのに対応し、企業の財務健全性を維持するためのアドバイスを提供します。
働き方を重視したい人や幅広い事業内容から興味あるジャンルを選びたい人に人気の転職先です。

会計事務所

公認会計士は税理士試験の全科目が免除されるため、税理士としての登録も可能です。会計事務所に就職した公認会計士は、クライアントからの税務相談に対するコンサルティング業務を行いながら、会計監査の面で問題が無いかのチェックも行えるため、唯一無二の活躍をすることができるのです。

コンサルティングファーム

公認会計士は財務および会計に関する高度な専門知識を持っており、コンサルティングファームにおけるクライアントに対するアドバイスや戦略策定に貴重な役割を果たします。他の就職先に比べ比較的給与水準も高く、キャリアを積んでいけば、年収数千万も期待できるでしょう。しかしながら、コンサルティングファームでの勤務はかなりハードワークなこともあるので、ワークライフバランスを重視する方にはあまりお勧めはできない場合があります。

独立開業

企業や事務所に所属せず、公認会計士として独立するのも選択肢の一つです。公認会計士事務所として開業し、監査業務を請け負ったり、税理士としての登録して税務コンサルを行うのがよくある独立のケースです。公認会計士の独立について、詳しくは以下の関連記事にてご紹介しております。
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M&AアドバイザリーやM&A仲介会社

M&AアドバイザリーやM&A仲介会社は、M&Aの売り手企業や買い手企業に対してM&A業務のサポートを行います。M&A業界は公認会計士や資格取得を目指す方にあまり馴染みがないかもしれませんが、会計や監査の専門的な知識をする業務も多く、ニーズの高い業界なのです。詳しくは下記の関連記事をご覧ください。
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40代会計士は転職で年収アップできるのか?

40代は子どもの養育費や親の介護などでお金はあればあるほど助かる年代ですので、年収アップを目指して転職活動をする人も多いのが現状です。しかし、前職の年収や転職先の事業形態、給与体系などにもよりますが、一般的には転職において年収が大きく上がることは期待しない方が良いでしょう。
もし公認会計士として年収アップを目指した転職活動をするのであれば、職種全体の給与水準が高いコンサルティングファームやIPOをするにあたって高額の給与を支払ってでも公認会計士を採用したいIPO準備企業が狙い目です。

40代会計士が転職を成功させるには

スキルや経験が成熟したこの40代に転職を考える際には自己分析が欠かせません。自分は何ができて、何ができないか。そしてこれからどうなりたいか。以上をしっかり言語化できるようにしておきましょう。

40代会計士の転職成功例

今回は私の周囲の実体験をいくつか紹介させていただきます。
公認会計士として、監査法人以外のキャリアとしてどんな道があるのかを是非参考にしていただければと思います。

1. 監査法人から上場準備会社のCFOに転職

40代会計士で元々の年収が1,000万円程だった監査法人勤務者が、上場準備会社のCFOとして年収750万円で転職した事例があります。
年収としてはかなり減ったように見えますが、監査法人では繁忙期は終電当たり前でチームの作業が終わらないと全員で残業をしていました。しかし上場準備会社では確かに忙しい毎日となりましたが、自分で時間を決めて動くことができるようになり、ワークライフバランスがとてもよくなったそうです。
また、社長の保有する株式を格安で購入できたため、上場時に2千万円程の値上がり益を獲得できたようです。今まで監査という立場で、会社の決算を批判する立場だったのが、短信、有価証券報告書、招集通知、上場申請書類等普段やらないことを行えたということで仕事も充実しているそうです。
この後年収も適正報酬まで上がっていき、結果としてはとても良い転職をした事例の一つと言えるでしょう。

2.監査法人から東証1部上場会社の経理部に転職

40代会計士で、監査法人から東証1部の経理部に転職した事例があります。年収は前職を加味するということで監査法人時代とほぼ同一賃金となりました。
M&Aを積極的に手掛けている会社であったため、M&A戦略室の室長に任命され、財務デューデリジェンスやのれんの評価(PPA)、連結パッケージの導入等で日本全国及び海外出張も増えました。
室長といいつつも実務の大半を自分でこなすために部下はあまりいませんが、締め切りに間に合えば自身のペースで仕事ができることや、旅行とは違いますが海外に行けるチャンスも増えたため充実した日々を送ることができているそうです。
また、上場企業ということもあり福利厚生や退職金制度もしっかりとしている為、実質的な年収は上がり、仕事も充実して良い転職をしたと言えるでしょう。

3.監査法人から税理士法人に転職

40代会計士が税理士法人に転職した事例があります。税務は未経験で、資産税及び事業承継専門の税理士法人に転職をした方がいます。
年収は若干下がりましたが、これからの頑張りに応じて増えていくということで、未経験である資産税・事業承継について勉強をし、実務経験を積んでいきました。
その結果、給与が上がったのみならずその分野の専門知識をつけることができたため、数年後に独立をすることになりました。
しかし、その事務所の共同パートナーとして独立採算制で支店を出さないかと言われ、低リスクで独立開業のような自由さを手に入れることができました。
税理士法人への転職は、申告書作成の練習だけではなく、特定の専門知識を身に着けるにもとても有用です。

4.ベンチャー企業に転職した例

40代会計士が従業員20名程度のベンチャー企業に転職した事例もあります。年収は600万円とかなり下がったようですが、経理や人事面のみならず会社の成長戦略を社長と一緒に考え、共に成長をしていった事例です。
給与面は下がったものの、IT関連の企業であったため見るものすべてが目新しく、最終的には創業者の一人としてキャピタルゲインを享受できました
ベンチャー企業は規則も制度もほとんどないに等しく、全てを一人で作り上げなければなりませんが、かえって過去のしがらみがなく社内での反対はあまり出ないまま物事を進めることができたようです。
また、通常会計士の転職というのはバックヤードの事務的な仕事が多くなる一方で、ベンチャー企業では戦略も経営陣と一緒に考えることができたためとても充実した業務を行うことができた事例と言えるでしょう。
給与だけではなくやりがいを求める会計士にとって、ベンチャー企業はとても魅力的に映る転職の一つだと言えます。

最後に

40代はキャリアの折り返し。ここで何を選択するかで人生の後半が充実するかどうかが決まるでしょう。監査法人は他のフィールドに比べて、年収は高く転職の際には一定数年収のダウンは発生します。
しかし、年収が多少下がってもスキルUPややりがいを得られるというフィールドがありそれを通じて年収以上のものを手にする可能性もあります。何よりも自分がどうしたいかによって判断して、最適な転職活動ができるようにしましょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:転職・業界動向

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