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はじめての会計監査対応。監査を受ける際に担当者が知っておくべきポイント

HUPRO 編集部
はじめての会計監査対応。監査を受ける際に担当者が知っておくべきポイント

上場企業などの会計監査を受けることが法律で定められている会社の経理部門に勤務している方には、監査対応は避けて通れない業務です。経理部門に配属されたばかりの頃は上司、先輩社員が対応にあたってくれるかと思いますが、年次が上がったり、役職についたりすれば自分一人で監査対応する機会もでてきます。監査と聞くと尋問をされるようで、身構えたり、気後れしたりする方もいらっしゃるかと思いますが、事前に過不足なく資料等の準備をしておけば、特段滞りなく進行していきます。この記事では監査法人や会計士による会計監査の対応の際に、現場の経理担当者が気をつけるべきポイントを紹介していきたいと思います。

そもそも監査とは何かあまりよく分かっていないという方は下記のコラムで詳しく解説しているのでご覧ください。
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そもそも監査とは何か

監査という場合、上場企業を想定すると、監査法人や会計士が行う監査は会計監査内部統制監査の2つに大別されます。

会計監査は企業の財政状態を表す貸借対照表、あるいは経営成績を表す損益計算書といった財務諸表が会計基準に準拠して、適正に作成されているかを判断するために実施されます。会計年度末の監査作業が一番重点的に行われますが、監査法人や会計士が財務諸表を適正と判断するには財務諸表の個々の項目について監査証拠を積み上げていく必要があるため、監査作業は監査計画に基づいて1年を通して行われます。この監査作業は企業が作成した各種の決算資料や会計記録をもとに行われます。

次に内部統制監査は、経営者が自社の内部統制について作成した内部統制報告書が適正であるかといったことを判断するために実施されます。内部統制監査についても会計監査と同様に1年を通して監査作業が行われ、企業が実施した内部統制の評価をベースとして行われます。

監査法人や会計士が見ているポイント

監査にあたって監査法人や会計士が見ているポイントは端的にいうと以下の2つになるかと思います。

①帳簿等の会計記録の根拠が確かか

会計士や監査法人が行う監査手続は、分析的な決算数値の比率分析や増減分析もありますが、会計記録に記載されている各種の取引について請求書や契約書等といった証憑と突き合わせをすることも重要な手続きとなります。帳簿等の会計記録が請求書や契約書等の外部資料と整合的であるかといった点は、監査法人や会計士が見ているポイントです。

さらに、監査法人や会計士は実査、棚卸立会や残高確認といった、自ら直接的に会社の会計記録の根拠を入手するような監査手続きを実施します。このような監査法人や会計士が監査手続きを経て入手した根拠と、会社の会計記録が整合的であるかといった点もポイントとなります。

②会計数値がしかるべきプロセスによって作成されているか

会計数値は、経営者や経理担当者が勝手に作成するものではなく、企業が構築した適切な財務報告プロセスを経て作成される必要があります。例えば、会社によっては会計上の重要な見積もりを行う際は、経理部門内での承認のみでなく、取締役会の承認も必要とするといった意思決定プロセスを設けている場合もあります。このように、会計数値がしかるべき承認や査閲のプロセスを経て、適切な会計基準、処理を適用されて作成されているかといった点は監査法人や会計士が見ているポイントとなります。

監査法人や会計士が見ているポイント

監査対応にあたって経理担当者が注意する点・準備すること

監査対応にあたって、経理担当者が注意する点・準備することは主に以下の3点かと筆者は考えています。

①担当した決算資料、業務範囲について理解していること

当たり前のことを言っているように感じられる読者もいるかと思いますが、決算資料のスプレッドシートを前年から使い回ししていたり、決算資料の作成のみに注力していたりすると決算数値について質問された際に、意外に説明に窮したりします。監査対応の前には、ご自身が担当している勘定科目の決算数値がどのように作成されているか、あるいは前年からどのように増減したかなどを十分に説明できるかどうか、振り返りをした方が良いかと思います。

監査作業の際、監査法人や会計士は決算資料についてヒアリングをすることも多々ありますが、経理担当者に要領を得ない受け答えや曖昧な回答をされた場合には、適正であるとの十分な心証を得ることができません。追加で監査資料を依頼されたり、上司や先輩に質問が行ってしまったりしないようにするためにも、ご自身が担当した決算資料、業務範囲について理解していることは必須となります。

②会計処理について適宜、相談すること

決算において新しい会計基準が適用される場合や、自社が重要な取引を実施する場合などには、事前にその会計処理を監査法人や会計士に相談しておいた方が望ましいと言えます。このような会計処理は監査法人や会計士も注目しており、監査作業や監査意見を形成する上でのポイントとなりえます。監査法人や会計士がすぐに会計処理に問題がないことを判断してくれれば不都合はありませんが、複雑な取引が実施される場合などには会計処理の検討には時間もかかります。

決算の作業が実際に開始されてもまだ、会計処理に関して自社と監査法人や会計士との間で意見に食い違いが生じているようでは、決算スケジュールの遅延を招くだけではなく、最悪の場合では計算書類や四半期・有価証券報告書の作成期日までに決算作業を終わらせることができないといった事態にもなりかねません。上記のような場合には、決算作業が開始される前に、自社が適用しようとしている会計処理に問題がないことを監査法人や会計士に確認し、認識を合わせておくことが重要となります。

③監査法人や会計士のリクエストを監査作業の前に把握しておくこと

監査法人や会計士は必要に応じて、会社に来訪して監査作業を実施します。来訪の前には監査作業にあたってどのような資料を用意して欲しいか、あるいはどのようなことをヒアリングさせて欲しいかといったリクエストをします。監査対応の際には、このリクエストに過不足なく対応することが重要と言えます。

監査法人や会計士が会社に来訪するのに、リクエストされた資料が全く用意できていないと、監査時間の浪費につながってしまいます。また、リクエストされた監査作業ができなかった場合には、追加の監査作業が発生してしまうことにもなりえます。こういった監査時間の浪費や、追加の監査作業の発生は、自社が監査法人や会計士に支払う監査報酬の増額にもつながりかねないので、避けなければなりません。

最後に

いかがでしたでしょうか。冒頭にも記載いたしましたが、監査対応は事前の準備が過不足なく行えていれば、特段難しいものではございません。そのためには、事前に監査法人や会計士のリクエストを把握し、相談するべきことを相談するといったコミュニケーションが必要となります。監査対応をすることになった際には、これまでご紹介したポイントをふまえて、監査法人や会計士と気後れせずコミュニケーションをとってみてください。

この記事を書いたライター

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