合併企業、被合併企業にも大きな影響をもたらすのが合併です。合併を行えば、市場はそれに反応することになるので、株価は大きく変化します。しかし、合併を行ったからといって、株価が大きく上がるかと言えば、必ずそうなるわけではありません。合併を行なったとしても、株価が変動しなかったり、むしろ、大きく下げることもあります。
したがって、どのような合併であれば、株価を大きく上げることができるのかについて明らかとする必要があります。そこでこの記事では、企業と企業が合併した場合に、株価がどうなると考えられているのかについて、最新の研究結果にもとづきながら明らかにしていきます。この記事を読めば、どのような合併であれば、株価を向上させることができるのかがわかるようになります。
合併とは、2個以上の会社が合体して1個の会社になることを言います。合併には、当事者会社の1つが存続し、他の会社が解散してそれに吸収される「吸収合併」と、当事者会社のすべてが解散し、それと同時に新会社を設立する「新設合併」の2種類の形態がありますが、通常、合併に際しては、吸収合併の形態が採用されることがほとんどです。
合併すると、消滅する会社の権利・義務は全て存続(新設)会社が継承することになります。したがって、簿外債務のような認識していなかったものについても承継されるリスクがあることから、合併を行なうに際しては、デューデリジェンスの手続きが重要な意味を持ちます。
また、会計・税務上、合併による資産等の移転は、原則として時価による資産等の譲渡として取り扱われることになるので、その譲渡利益額又は譲渡損失額は合併の日の前日に属する事業年度の益金・損金の額に算入しなければなりません。ただし、一定の要件を満たす場合には「適格合併」に該当し、最後事業年度終了の時における帳簿価額による資産等の引継ぎが行われたものとして譲渡損益の計上が繰り延べられます。
合併が行われると、買収企業・被買収企業ともに色々な面で大きな影響を受けます。合併とは結局のところ、資本市場において株式という資産を売買することに他ならないので、その効果は株価をみることによってその成否を判断することが可能です。
こうした考え方のもとでは、企業の価値は全て株価に集約してあらわれること(株式市場の効率性)を前提として、合併の前後における株価(企業価値)に焦点をあてて合併の効果を測定します。
株価に対して短期に(合併発表後 3 日以内に)現れる合併の効果は、 合併の効果についてはまだ現実のものとはなっていないものの、何かしらの合併の効果が将来予想されることから株価が変化することを意味します。
研究結果として、企業合併の結果、買収企業の株式価値は有意に上昇する(合併という戦略は企業価値を高めるうえで合理的である)という結果を得ているものもあります。合併によって期待される各種の経営改善効果は、かなりの時間を経過した後にはじめて実現するものなので、長期的な視点で合併の効果がどのようなものであるかを明らかとしなければなりません。しかし、この点については依然として研究でも明らかとはなっていないのが現状です。
近年の研究からは、日本企業の合併は、全期間を通してみれば効率化に資する結果が得られていると言えるものの、比較的古い時期(M&A 急増に転じた 1990 年台後半より前の時期)における合併は、合併による経営効率化効果があまり検出されていません。
その理由は、この時期の合併は系列内部での合併、あるいは経営救済的な合併が比較的多かったためと推測されています。1990年代後半の時期においては、企業存立のため企業グループ内での企業再編ないし事業再編が積極的に行われていたものの、それらは積極的な企業経営効率化を目的とした合併というよりも、経済環境の変化に伴って、いわば受動的に経営効率化をせざるを得ないものであったからです。
経営の安定化効果に比較すると、合併による企業の効率化効果はより確実に現れるうえ、時にはその規模がきわめて大きくなる場合もあることから、合併は日本経済の構造変革を効率的かつ迅速に進めるうえで非常に有効な(時間を買う)手段として位置づけることができます。
合併を行なうことによって、株価は向上する可能性があります。それは合併によって、企業の効率化が進むと市場が期待するからです。したがって、企業が合併をする際には、合併を行なうことによって、どれだけ経営資源を効率的に運用することができるかを考えなければなりません。
それが達成できない場合には、市場からの期待がなくなって、株価が大きく下がることもあります。したがって、合併は闇雲に行われるべきものではありません。合併は、企業の経営資源を有効に活用するための手段であるという点を見誤ってはいけません。