当座借越とは、当座預金にお金が無い状態で、小切手を振り出した場合のことで、事実上の銀行に対する借金のことです。当座預金口座を開設する際に、銀行と、「当座借越の金額はxx円までOK」というような契約が必要になります。その金額を超えれば小切手を振り出すことはできないという仕組みになっています。今回は当座借越について仕訳方法とあわせて詳しく解説します。
通常は当座預金の残高よりも多額の小切手を振り出したならば残金が足りないため不渡りとなります。しかし、事前に銀行との契約を結んでおくことで一定額までは銀行に立て替えてもらうことができ、不渡りを回避できます。この建て替え分のことを「当座借越」と言います。
銀行に対して行う借金ともいえます。これを行うには銀行と当座借越契約という契約を結ぶ必要があり、これが結ばれることで当座預金が不足していても契約した限度額までの小切手を振り出せるようになります。
当座借越が絡む仕訳は、主には以下の2パターンがあります。ひとつは、当座預金にお金が無い状態で小切手を振り出した場合と、もう一つは当座借越を返済した場合です。「当座借越」は借金ですので、負債という扱いになります。負債は貸借対照表へ記入することが決まっています。
なお、銀行視点から見た場合には、こうした処理は顧客に一時的に資金を貸すことになるため、当座貸越(とうざかしこし)と呼ばれています。借越と、貸越は立場の違いによって起こるものです。
当座借越の仕訳には、二勘定制と一勘定制があります。
二勘定制とは、資産の勘定である当座預金勘定と、負債の勘定である当座借越勘定の2つの勘定を用いて処理をする方法のことです。
まず、当座預金の残高を超えて小切手を振り出した場合には、当座預金勘定から全ての金額を引き出して、足りない金額を当座借越とします。 その際は、当座借越勘定の貸方に記入するものとなります。
実際の取引と仕訳から考えてみます。
また、当座預金の預け入れが行われたときには、当座借越がある場合は当座借越を先に返済し、余りがあるときは、当座預金に預け入れることになります。まずは、 借金を返してからということです。
先程の取引例で生じた当座借越は50,000円で、仮に現金300,000円を当座預金に預け入れたとします。この場合、まず当座借越の金額を確かめ、当座借越は50,000円です。当座預金の預け入れをする際には、 当座借越を先に返してからになるので、250,000円を当座預金に預け入れるという計算になります。
一勘定制とは、二勘定制のように当座預金勘定と当座借越勘定を分けずに、 当座勘定という一つの勘定で処理をする方法です。
二勘定制では、小切手を振り出した時や当座預金に預け入れをする場合、 当座預金残高や当座借越の残高を調べる必要があったため、手間が多く非常に面倒な部分もありました。しかし、一勘定制では当座勘定だけで処理を行うので、スムーズに仕訳ができるのが魅力です。
まず、当座預金の残高を超えて小切手を振り出すとき、当社の当座預金残高は、100,000円で銀行とは借越限度額300,000円の当座借越契約を結んでいることとします。
とある商店へ買掛金支払のため、150,000円の小切手を振り出して支払いました。
そして、単に振り出した小切手の金額を当座勘定の貸方に記入するだけで終わりです。
さらに、当座預金の預け入れが行われた場合には、一勘定制では、当座預金に預け入れた際は、当座借越の返済を気にせずに当座勘定の借方に記入します。取引例で当座借越50,000円のあと、現金300,000円を当座預金に預け入れました。そして、借方、貸方の両方に300,000円と記載するだけスムーズにできます。
しかし、これでは金銭の流れがわからず、当座借越に返済できたのかわかりません。その場合には当座の勘定口座を見てみると分かります。当座の勘定口座を見て、残高が借方ならば当座預金の残高ということです。当座の勘定口座の残高が貸方ならば、 当座借越の残高となります。
以上、「当座借越」について仕訳方法とあわせて解説しました。企業の経理担当者など会計を学ぶ方にとっては、覚えておくべき会計用語の一つですので、是非この機会にしっかりと理解しておきましょう。