財務や経営分析をするとき、分析対象の企業のパフォーマンス力を把握することは基本中の基本です。一つの切り口として、社員一人あたり生産力を求めることで、企業全体の生産性をおおよそ推測できます。今回は財務分析における、企業生産能力の適切な求め方について紹介します。
「生産性」とは「人」「モノ」「金」「情報」などのリソースがどれくらい「価値」を生んだかを指し示します。
より少ない労力でより高い成果を生み出したら生産性は高いですよね。労力は人的リソース、物的リソース、金銭リソース、無形のリソース(情報)があります。これらを投下することにより、価値=リターンを得ることで会社は売上を上げることができるのです。
どれだけリソースが少ないか、得られる価値=リターンが大きいかで生産性は高くなってきます。
生産性分析とは、生産性について財務指標を用いて定量的に算出し、比較検討を行い解釈を得ることを言います。
生産性のもとになる「人」「モノ」「金」「情報」などのリソースや、生み出した「価値」を具体的な指標に置き換えて分析することを指します。
生産性分析と関わりの深い財務用語に「収益性分析」があります。
これは、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を分析し、会社あたりでどれくらいの収益を獲得しているのかを分析するものです。
会社の活動すべてを合計した収益力を比較することで見えてくるものを比較したり解釈したりするものです。
まとめると、生産性分析は総合的な収益を生み出すために、会社が持つ資源がどれくらいの生産能力を持っているを表しており、収益性分析を補足する役割があります。
国の発展度を比較するときにGDPを使いますよね。GDPは国内総生産のことで、これを国民の数で割ると国民一人あたりの労働生産性が求められます。
近年日本の国民一人当たりの労働生産性が低下してきていることが問題になっていますが、これは各企業が生産性を分析比較し、企業ごとに生産性を高めていくことで高まっていくのです。
また、近年働き方改革や少子高齢化が進むなかで、人というリソースあたりの生産性を上げることで経済を発展していく必要があるので、生産性分析の重要性が高まってきているのです。
さらに、各企業において生産性分析をするメリットは、少ないリソースで高いリターンを得ることで利益率を高め、その稼いだ利益を次の生産=リソースに活かせているか確認することができ、その基礎となるため重宝されているのです。
まず生産性の計算式からです。
生産性は「人」「モノ」「金」「情報」などのリソースがどれくらい「価値」を生んだかなので、下記になります。
成果が「価値」となるので、売上高、利益、付加価値額、生産数量などとなります。生産要素が「リソース」となるので、従業員数や人件費、時間、設備費用、設備数、固定資産、原材料費などとなります。いずれにしても、少ない「リソース」で高い「価値」を生み出すことが重要です。
生産性が「人」「モノ」「金」「情報」などのリソースがどれくらい「価値」を生んだかとなるので、それを表す指標はさまざまあります。では生産成分性はどの指標のような具体的な指標があるのでしょうか。
要素を構成するものとしては、「価値」としては売上高、利益、付加価値額、生産数量など、「リソース」としては従業員数、人件費、時間、設備費用、設備数(台数)、固定資産費、原材料費などとなります。
生産性を構成する要素は「価値」と「リソース」となるのですが、その構成要素によって算出される生産性の種類は分類されます。
ここでは代表的な2つを紹介します。
労働生産性は労働者一人あたりが生み出す「付加価値」のことです。
計算式は
となります。
これにより、会社に所属する人あたりがどれだけ付加価値を生み出しているかがわかり、これを比較することで比較対象に対して、従業員の価値が高いことを示すことができます。
労働分配率は企業が生み出した付加価値に対してどれだけの人件費がかかっているかを求めることができます。
計算式は
となります。
この割合が低いことで生み出した「価値」に対して「リソース」(人件費)が低い、つまり生産性が高いということがわかります。
計算方法がわかったところで、どのように分析していくのでしょうか。
まず、分析の目的がない場合はデータを集めましょう。財務諸表をよく見て、「価値」と「リソース」に分類し、組み合わせて計算します。その上で比較対象の企業や過去の同様の指標と比較して良い悪いを見極めます。
そうすれば必然的に何を明らかにしたいのかがわかってくるはずです。労働生産性なのか、労働分配率なのか、など「価値」に焦点を当てるべきなのか、「リソース」に焦点を当てるべきなのかといった具合です。
それはすなわち何を高めたい(抑えたい)のか、高める(抑える)べきなのかにつながってきます。「価値」を高めたいのか、「リソース」を減らしたいのか、またはすべきなのかということです。
ここまでくればあとはそれに基づいて、例えば「就業時間を減らす」のか「従業員を減らす」なのか「付加価値を高める」なのかなど生産性の高め方が見えてきます。
文章だけでは分かりにくいため、ここでは具体的な数値を使って生産性分析を行って行きます。一般的な「中小企業庁式(控除式)」を使って付加価値を算出します。
以上の計算式から、この企業は仕入れたものを独自製法で加工し4千万円の利益を生み、一ヶ月に従業員一人あたりが50万円の利益を産出しているということになります。さらに、労働分配率が60%という結果から、付加価値の中から企業が6割を人件費として分配しているということが分かります。
これらの結果を同業他社のデータと比較することによって自社の経営効率や人件費にかける割合などが適正であるかどうかなどを客観的に判断することができます。
このように生産性分析は企業が企業たる活動をする上で、とても基本的なことであることがわかりました。
近年働き方改革などが声高に叫ばれていますが、純粋に就業時間を減らすのではなく、生産性を維持しながらどのように働き方を変えていくか、など身近なところにも生産性分析は役立ちます。上記を意識しながら、分析を進めてみてください。