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公認会計士が監査法人から事業会社の経理に転職する際のポイント

HUPRO 編集部
公認会計士が監査法人から事業会社の経理に転職する際のポイント

1. はじめに

 ここ最近では監査法人が人手不足となっている記事もよく見受けられますが、数年前には大手監査法人において公認会計士やスタッフのリストラが相次いでありました。このリストラの際も職を求めて事業会社に転職する公認会計士の方も多数いたかと思いますが、ここ数年の活況な転職市況からか監査法人から事業会社に転職する公認会計士の方は増加傾向にあります。監査法人の公認会計士の方が事業会社に転職する場合、経営企画部門や財務・経理部門あるいは内部監査部門等が選択肢となるかと考えられますが、やはりその経験を生かして経理部門を転職先として選ぶことが多いことでしょう。この記事では、監査法人で働いている公認会計士の方が事業会社の経理に転職する際に見ておくべきポイントを紹介していきます。

2. 年収・福利厚生や残業の度合いについて

(1)年収・福利厚生等

 ブレはあるかと思いますが、公認会計士の一般的な年収は現在の大手監査法人であれば、スタッフは500~600万、シニアが700万~900万、マネージャーが1,000万円~、シニアマネージャーが1,200万円~、パートナーが1,500万円~といった体系になっているかと思います。中小監査法人ではそれぞれの職階でおおむねマイナス100万円程度の年収となってきますでしょうか。なお、スタッフ、シニアの職階であれば、管理職ではないので残業代が支給されますが、忙しいクライアントを担当しているシニアには残業代によってマネージャーより年収が高くなる方も中にはいます。
 事業会社の経理部門に転職することを想定すると、上記の大手監査法人の年収水準を維持することはなかなか難しいように見受けられます。事業会社であれば、その会社の新卒の初任給を基準として給与体系が設計されているかと思いますが、その基準となる初任給が監査法人の初任給より高いところはまずありません。従業員の平均年収が高い大手企業や外資系企業等への転職でない限り、事業会社の経理部門に転職する場合、筆者の個人的な感覚ですが年収ベースで100~150万円程度はダウンしてしまうのではないかと思います。
 次に福利厚生ですが、一般的には監査法人と比べると事業会社の方が充実している面が多いのではないでしょうか。事業会社では家賃手当や社員寮、社員食堂等の制度を導入している会社もありますが、監査法人でそのような制度を導入しているところはまずありません。大手監査法人の福利厚生制度でもカフェテリアプランというポイントで物品の購入やスポーツクラブ、宿泊施設の利用ができる制度がある程度となっています。しかしながら、最近では事業会社においても福利厚生制度を縮小しているトレンドにありますので、転職先の福利厚生制度が監査法人と特段差がない場合もあるかと思います。
 また、公認会計士資格の年会費等についても考慮が必要です。監査法人に勤めていた時では、公認会計士の資格は業務に必須のため、監査法人が当然負担してくれました。しかしながら、事業会社の経理の場合では公認会計士の資格は業務に必須ではないため、基本的には会社は負担してくれません。ただし中には負担してくれる会社もありますので、交渉次第ではないかと思います。

(2)残業時間

世間の長時間労働に対する姿勢が厳しくなってきており、監査法人に勤めている公認会計士の方の労働環境も改善してきているのではないでしょうか。以前は筆者も残業時間が100時間を切らない月の方が珍しいとか、過労で倒れる人がいたとかを耳にしたりしていましたが、最近は残業時間が減っていると聞いています。年度決算の監査等の繁忙期の時期は休日出勤もあり、残業時間もかなり膨らむと思いますが、それ以外の時期で残業時間が膨らむことはあまりないのではないでしょうか。
事業会社の経理部門では残業時間が多い会社とそうでない会社に別れるように見受けられます。会社の管理体制がしっかりしている会社を転職先として選んだ場合では、繁忙期でもそこまで残業時間が膨らむことはないでしょう。一方で人手が明らかに足りていない会社や、システムが整備されていない会社などに転職してしまうと、残業時間も膨らんでしまい、監査法人に在籍していた時よりワークライフバランスが悪くなってしまうといったことになってしまいます。転職によって残業時間を減らしたい方はエージェント等を通して、転職先の業務量や人員体制を確認しておいた方が望ましいと言えます。

3. CPE「継続的専門研修制度」について

 会計士には資格を維持するためのCPE「継続的専門研修制度」があります。監査法人にいる際は、法人内の研修等で必要な単位数を取得できますが、事業会社の経理部門に転職するとそういったことはできなくなります。自分で協会主催の研修に申し込むか、e-ラーニング等で単位を取得する必要があります。
なお、監査業務に従事していない場合には必要な単位数が減免される制度がありますので、そういった制度を使って研修の負担を減らすことも可能です。

4.転職先の企業内会計士の多さについて

 転職先に企業内会計士が多いかどうかも、転職先の選択の判断材料の一つになりえます。最近では大手監査法人から事業会社への転職者が多く、監査法人から事業会社に転職してみたら周りが会計士の人ばかりだったという話も聞くことがあります。そういった会社は会計士を受け入れることに慣れていますし、周りに同じ肩書を持つ人がいれば居心地も悪くないかもしれません。一方で同じ肩書を持つ人が多くいると、公認会計士であるという自分の個性を出しにくいという面もあります。事業会社の経理部門に転職し、公認会計士という資格を生かして活躍したいという考えをお持ちの方がいれば、転職先にどの程度会計士の方が在籍しているかを確認しておいた方が良いかと思います。

5.さいごに

 冒頭でも記載いたしましたが、最近では監査法人から事業会社に転職する公認会計士の方が増加傾向にあります。今後もこの流れが続いていくかはわかりませんが、公認会計士の活躍のフィールドが広まっていくことは資格の魅力を向上させますし、喜ばしいことかと思います。以前は事業会社の経理部門といえば、監査法人での仕事に疲れた方の転職先という印象だったのかもしれませんが、今では監査法人の公認会計士の方がキャリアを考える上での有力な選択肢の一つになっているのではないのでしょうか。

この記事を書いたライター

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