税務調査とは、納税者が正しく税金を申告し、納税しているかを確認するための、税務署による調査です。税務調査の対象は、法人及び個人事業主です。しっかりと納税しているはずなのになぜか確認にやってくる税務調査を、多くの人が厄介だと思われているでしょう。
そこで今回は、法人や個人事業主、そして相続税を支払った場合の税務調査の時期について説明します。実は、税務署の仕事のルーティーンなどを考慮すると、どの時期に税務調査が行われる傾向にあるかを知ることができるのです。どうぞ最後までご参考ください。
法人に対する税務調査は「決算期」に左右されます。法人ごとに定款で定める決算期には違いがあるので、「税務調査が入るのは〇〇月」と明確に示すことはできません。
一般的な税務調査時期のイメージは以下の通りです。
2月~5月が決算期の法人:税務調査は7月~12月
6月~翌年1月が決算期の法人:税務調査は1月~6月
現在の日本では、3月頃(前後の2月~4月頃)を決算期に設定している法人の割合が高いという背景があります。したがって、税務調査が入る時期は、7月~12月がメインとなります。そして、後述するさまざまな事情から、特に9月・10月に税務調査が集中することとなります。「税務調査は秋頃に多い」と言われるのは、このような理由によるものです。
税務署は、事務年度を「7月1日~翌年6月30日」という期間で設定しています。会社における事業年度と同じようなものです。そして、7月10日前後に人事異動が行われます。
このような事情から、6月頃の税務調査は避けられる傾向があります。なぜなら、仮に着手した税務調査が長引いてしまうと、人事異動に重なってしまう可能性があるからです。引継ぎが発生した場合の手間を考えると、そもそも6月の税務調査自体を回避すべきでしょう。また、人事異動の時期ということもあって、7月も税務調査は積極的に行われません。
法人と同様、以下の場合には、個人に対して税務調査が行われる場合があります。
・個人事業主
・相続税を支払った場合
個人事業主とは、フリーランスなど、個人で仕事を行っている人のことです。株式売買やFXなどで収益を上げている人や、個人商店を経営している人で法人化していない場合、あるいはYoutuberとして活動している人も個人事業主に含まれる場合があります。
このような個人事業主だけではなく、相続税を支払った個人に対しても、税務調査が行われる場合があるので注意が必要です。
なお、この個人事業主に関しては、近年高額の申告漏れ事案が増えているため、税務署が積極的な調査に乗り出しています。
国税庁発表データによると、平成29年度に高額な申告漏れ事案が多かった業種は以下の通りです。
1位:キャバクラ
2位:風俗業
3位:不動産代理仲介
4位:システムエンジニア
5位:防機械器具・部品修理水工事
参考データ(国税庁):
事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種
個人事業主に対する税務調査の時期は、法人と同様、9月~10月頃が多いとされています。
ただし、税金の申告時期を考慮すると、法人に対する税務調査時期と個人事業主に対するそれとでは微妙な違いが生じる可能性があります。
というのも、日本の法人は、その多くが3月決算です。3月に決算期を迎えた場合、法人税の申告がなされるのは5月です。これに対して、個人事業主が確定申告をするのは3月です。つまり、両者の税金の申告時期については約2ヶ月程度のズレが存在します。
仮に、税務調査の時期が税金の申告時期をベースにして期日設定されているとすれば、個人事業主に対する税務調査は、9月~10月よりも2ヶ月程度前倒しの8月頃に集中するとも考えられます。
いずれにせよ、これらはあくまでも「傾向」でしかありません。税務調査時期に関する定めがない以上、原則としていつ税務調査が入ってもおかしくないということだけはご理解ください。
相続税を支払った個人に対する税務調査は、相続税を申告した翌年の8月~12月、もしくは、翌々年の8月~12月に実施されることが多いようです。
例えば、2019年4月1日に相続が発生した場合は、相続税の申告期限はその時点から10ヶ月後の2020年2月1日です。したがって、相続税の税務調査が入る可能性が高いのは、2021年もしくは2022年の8月~12月と考えられます。
なお、相続税の除斥期間は原則5年間なので(相続人が故意に相続税の納税をしない場合には7年間)、その期間経過後は、税務調査が入る可能性は0となります。
税務署の年間スケジュールを参照することで、税務調査の実施可能性が高い時期について今一度整理をしてみましょう。
一般的なイメージはこの表の形となります。ただし、これはあくまでも一例でしかありません。税務調査については、そもそも時期の定めがないので、いつ税務調査について事前連絡があってもおかしくないのです。常々、税務処理については意識を高めておくべきでしょう。
税務調査は、強制調査と任意調査に区別できます。
強制調査は、脱税などの疑いが強い事案における強制力を伴った税務調査なので、事前連絡がされることはあり得ません。これに対して、大部分の税務調査は、一般の方を対象として税務処理の公正を保つことを目的としてなされる任意調査です。この任意調査が行われる場合には、事前連絡をした上で、申告者の同意のもとで税務調査が行われることになります。
おおまかな税務調査の流れは以下の通りです。
1. 事前連絡:税務調査の日程調整のため、10日前頃に連絡される
2. 事業概要の説明:税務調査初日は、経営者が税務署職員に対して事業概要を説明
3. 聞き取り調査:事業概要の説明の後、売上の管理体制等に関する聞き取り調査
4. 帳簿チェック:税務調査2日目以降、帳簿チェックが行われる
5. 結果の告知、指導:約1ヶ月後に結果連絡。修正申告を求められるケースも
「税務調査はいつされても仕方ない。ただし、一般的に多いのは9月~10月頃である。」という認識を持つようにしましょう。大切な日常的な心がけです。
なぜか税務調査は億劫に感じるものですが、適正な申告と記帳を心がけていれば恐れることはありません。今では簡単に扱うことができるソフトが多く販売されているので、これらの活用もご検討ください。