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消費税計算における個別対応方式と一括比例配分方式の違い

公認会計士 大国光大
消費税計算における個別対応方式と一括比例配分方式の違い

消費税の計算は経理担当者を泣かせるほど細かい規定がたくさんあります。本則課税方式や簡便法等もありますが、個別対応方式や一括比例配分方式等もあり、どちらを選択すべきか、それとも選択できないのかも含めてわからないことだらけです。そこで今回は個別対応方式と一括比例配分方式の違いを現役公認会計士が解説します。

消費税計算の種類

消費税の計算方式は一般課税方式(通称本則課税)と、簡易課税方式があります。特に届け出を出さない場合は本則課税となりますし、基準期間における課税売上高が5,000万円以上である場合も本則課税方式となります。
本則課税方式によると、課税売上によって預かっていた消費税から、課税仕入によって支払った消費税を差し引いて最終的な税額計算をし、消費税を納めることになります。ここで、課税仕入の計算方法には、個別対応方式と一括比例配分方式の二通りあります。どちらで計算するかによって消費税額が異なります。

個別対応方式の区分

個別対応方式とは、仕入に関する消費税を三つの区分に分類して消費税を計算します。

課税売上のみに対応するもの

課税売上のみに対応する消費税については、全額仕入税額控除対象となります。これは、仕入高や運送費等の売上高に直結するものが対応します。製造業であれば製造に関連するものが対象となります。

課税売上と非課税売上の両方に共通しているもの

課税売上と非課税売上の両方に共通している消費税については、課税売上割合分の仕入税額控除ができます。これには、家賃や水道光熱費などの経費が該当します。工場と管理部門が同一敷地内にあった場合に、このような共通経費を課税売上割合分の割合で控除すべき金額を決定します。

非課税売上のみに対応するもの

非課税売上のみに対応している消費税については、全額控除できません。これには、有価証券を売却した時の手数料や土地を売却した際に発生する費用が該当します。

一括比例配分方式とは

個別対応方式に対する方法として、一括比例配分方式というものがあります。一括比例配分方式では、先ほどの個別対応方式とは違ってすべての仕入にかかる消費税額について、課税売上割合分のみ控除します。
よって、一括比例配分方式ではいったん全ての課税仕入を集めて、課税売上高と非課税売上高の割合に応じて控除対象とするかどうかが決まります。ですので、一つ一つの課税仕入に対して色を付けなくとも期末に一括して計算できるため、比較的簡便な方法であるといえます。
なお、個別対応方式と一括比例配分方式はどちらを選択することもできますが、一括比例配分方式を選択した場合は2年間継続する必要があるので注意が必要です。

どんな時に個別対応方式が有利なの?

それでは、どんな時に個別対応方式が有利なのでしょうか。
先ほどお話しした通り、一括比例配分方式では課税売上にかかる仕入高かどうかにかかわらずすべてをまとめて計算を行います。よって、課税売上割合が高いわりに課税売上にかかわらない費用が多額に計上されている場合には一括比例配分方式が有利となります。
具体的には、土地が売却されて非課税売上が計上されているものの、売却額が課税売上に比してそれほど大きくないが、支払手数料が比較的多額になった場合などが該当します。
一方で、仕入高のほとんどが課税売上に対応するものであるが、非課税売上が割と大きい場合は個別対応方式のほうが有利になる可能性が高いでしょう。
ただし、個別対応方式はすべての課税仕入高について、分類しなければならないため手間と実益を勘案して決めることとなるでしょう。

課税売上非課税売上共通しているものの分け方

個別対応方式の計算をするうえで最も難解なのが、課税売上と非課税売上と共通しているものの区分けでしょう。
例えば、電気料金というのは通常建物一体にかかっているものであり、課税売上非課税売上共通しているものと言えるでしょう。しかし、だからといってすべての金額を共通費用としてしまうと損をしてしまう可能性があります。なぜならば、製造や営業で使用されている電気料というのはすべて課税売上に対応するものであるのに、共通費用としてしまうと非課税売上割合によっては大きく損をしてしまうからです。

そこで、課税売上に対応するものと共通するものとを区分けする必要があります。例えば、電気料金は使用している面積によって異なるということであれば、工場と営業部門の敷地面積と、管理部門の敷地面積に応じて割り振るという考え方もあります。
電話料金についても同様に共通部分を算出したい場合、面積よりも人員に応じて料金が変わる可能性が高いので、人員割合に応じて割り振るという考え方もできるでしょう。
ただし、あまりにも不合理な割合で行うと否認されてしまうので、より実態に合うように課税仕入を割り振ることが大切です。

まとめ

いかかでしたでしょうか。消費税の計算は細かく、課税売上なのか非課税売上なのか、どちらにも共通していないか、それらを見極めて損が発生しないようにする必要があります。個別対応方式は仕入れに関する消費税を3分割して計算を行っているのに対し、一括比例配分方式ではすべての仕入れにかかる消費税額から課税売上割合分を控除して計算しています。計算の仕方がかなり異なるため、どちらを適用すべきか、業種による売上と仕入の特徴を見極めて変更するのがよいでしょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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