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本支店会計とは?公認会計士がわかりやすく解説します。

公認会計士 大国光大
本支店会計とは?公認会計士がわかりやすく解説します。

日本の大企業は海外を含め、多くの地域に拠点を置いています。子会社で管理しているところもあれば、○○支店としているところもたくさんあります。子会社であればその会社独自で会計をすればよいのですが、支店の場合は本支店会計を使うことがあります。そこで、今回は本支店会計について現役公認会計士が解説していきます。

本支店会計とは?

本支店会計とは、本社と支店であたかもそれぞれが独立した会計単位として機能していると仮定して処理を行う会計です。

本店つまり本社機能がある側では支店勘定を使い、支店側では本店勘定を使います。それぞれの使い方ですが、本社が支店に資産を移転した場合、例えば資金を支店に異動した場合は借方に支店勘定、貸方に現預金を仕訳します。反対に送金された支店側では借方で現預金を増やして貸方に本店勘定を起票します。

このように、支店に対して資産を計上する場合は借方に支店勘定を、反対に負債を計上する場合は貸方に支店勘定を用いて、支店では反対の仕訳を起票することになります。

このように、両者が対になって仕訳を起票するため最終的には両者の試算表を合計した場合に本店勘定と支店勘定はバランスすることになります。
このように、本店と支店を別会社と見立てて会計処理することを本支店会計といいます。

本支店会計のメリットは?

本支店会計をしないとなると、例えば資金移動をしたとしても口座の付け替えをするだけでいくら支店に送金しているかが不明確となります。

しかし、本支店会計を用いると今までどれだけ支店に金銭を送金したかや逆に支店が本店に稼ぎをどれだけ送金しているかがわかります。

このように、本支店会計を導入するメリットは、支店がどれだけ過去に稼いだかまたは本店のお世話になったかが明確になり、その支店の過去の損益状態が明確になることが挙げられます。

本支店会計はどのような会社に適しているの?

では、本支店会計はどのような会社に適しているのでしょうか。まず、支店に独立採算制をとらせていて、製造から販売まで一貫している場合に有用です。というのも、本店の作る製品に不具合が出ている為支店が儲からないとすると、いくら支店の負債側に本店の負債がたまっていたとしてもその責任を負わせるのは酷だからです。しかし、一連の流れについて支店で解決できるのであれば、支店の損益を明確にするメリットがあります。

また、多角化している会社にも本支店会計はメリットがあります。多角化しているとそれぞれの事業部で扱っている商品が異なるため、単純に支店間の損益を見るのは酷ですが、本支店会計であればその支店規模と蓄積された本店勘定とのバランスによって評価することが可能だからです。

さらに、多角化している場合は支店相互で商品を融通することも考えられます。その時、支店同士の損益を付け替えるのに本支店会計はとても有用となります。

本支店会計と似た会計処理方法は?

本支店会計と似た会計処理として、カンパニー制が挙げられます。カンパニー制では単なる本支店会計にとどまらず、支店を一つの会社とみなして会計処理されます。

一つの会社として会計処理されるため、資本金も擬制したり本支店の貸し借りにも利息を付与したりして損益管理をします。

本支店会計が緩やかな独立採算制であれば、カンパニー制は一つの会社内でより強力な独立採算制がとられていると言えるでしょう。

本支店会計と連結会計との違い

それでは、本支店会計と連結会計の違いはどのようなところにあるでしょうか。
本支店会計ではあくまでも一つの会社の中で帳簿を擬制して計算されるのに対して、連結会計では親会社と子会社では全く別に記帳を行い、税金計算まで行われます。連結会計では親会社では売上を認識しているにも関わらず子会社で仕入処理していないということも稀にあり得ます。

しかし、本支店会計ではそのような処理をしてしまうと貸借がバランスしないため必ず両者が一致するように帳簿が作成されます。

また、それぞれの会社で税金計算を連結会計では行うため、一方の会社が損失を計上していて、もう一方の会社が利益を計上している場合、利益が出ている会社がその分の税金を支払わなければなりませんが、本支店会計では合算した利益に対して税金が計算されるため、結果として税額が少なくなることが特徴です。

ただし、連結納税を採用している場合は法人税部分が合算されるため、多少そのデメリットは和らぎます。

本支店会計のデメリットは?

本支店会計はしっかりと記帳できれば損益管理にとても有用であるお話をしました。しかし、本支店会計はそれぞれの支店で経理担当が存在しないとそのメリットはかなり少なくなります。

支店に経理担当がいないと本社で全ての損益をつけねばならず、支店の動きをよく知らない経理担当者では会計処理を間違えやすくなります。また、支店に経理担当がいたとしても、その分人件費がかかるためあまり利益が出ていない支店にとっては酷です。

このように、費用や適時性の観点を総合して本支店会計導入の可否を決定することが大事となります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び
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