企業が資金調達の手段として、投資家から資金を募るために発行する「社債」。社債の発行のために支出した費用は「社債発行費」の勘定科目を使って記帳します。本記事では、社債発行費に含まれる内容とその会計処理について解説します。
「社債発行費」とは、企業が資金調達のために社債発行を行った際に支出した費用を処理するための勘定科目です。具体的には以下のような費用が含まれます。
※ただし、社債発行差金については含まれない
会社を債務者として、広く一般から資金を調達するために発行する債券。確定利付証券であるため、一定期間後には元本が償還されますが、株式とは違って会社に対する議決権はありません。金融機関が発行する金融債、電力会社が発行する電力債などもありますが、一般的に社債という場合は、一般事業会社が発行する事業債のことを差します。
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社債発行費については、営業外費用として処理する「原則処理」と、繰延資産として計上する「容認処理」のふたつがあります。
社債発行時の会計処理は、原則として支出時に費用「営業外費用」として処理します。「財務諸表等規則93条」においても営業外費用として処理する旨が記載されています。
原則処理による仕訳では、
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
租税公課 | 10,000円 | 未払消費税等 | 10,000円 |
といった仕訳になります。
しかし、社債発行費については、その効果が将来にわたって続くと期待される費用であるため、企業会計基準委員会「実務対応報告第19号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」において、繰延資産として計上することができる旨が規定されています。これが次に解説する「容認処理」です。
容認処理では、社債発行費を繰延資産に計上することができます。
繰延資産とは、一度に多額の費用が掛かる時に、いったんは資産として計上し、その後、分割計上する費用のことです。会社の、創業費・開業費・開発費・株式交付費・社債発行費の5つは繰延資産として認められています。
容認処理による仕訳は、
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
社債発行費(営業外費用) | XXXX | 現金・預金 | XXXX |
となります。
社債発行費は、繰延資産として計上された社債発行費は、社債の償還までの期間にわたり利息法により償却をしなければなりません。ただし、継続適用を条件として定額法を採用することもできます。
償却時の際の仕訳は以下のとおりです。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
社債発行費償却(営業外費用) | XXXX | 社債発行費(繰越資産) | XXXX |
また、新株予約権の発行にかかる費用についても、社債発行費と共に費用処理するのが原則ですが、資金調達などに利用される性格を持つ場合は、繰延資産として会計処理も可能です。新株予約権の発行時から、3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法にて償却します。
原則処理の場合、社債発行費は、一括損金処理することが可能です。
容認処理の場合、社債発行費は税法上では任意償却とされており、会社が計上した社債発行費の償却額を損金の額に算入することができます。また、その内容に応じて、消費税の対象外又は仕入税額控除の対象となります。
また、発行時の事務手数料についても会計上の費用計上があった場合は、税務上も損金算入することが可能です。しかし、償還業務などの発行後の業務手数料については、その業務を行った年度の損金になるので、社債発行時にまとめて支払っている場合は、前払処理が必要です。税務調査が入る場合は、社債発行時の手数料処理をどのようにしているかというところ見られますので、気を付けるようにしましょう。
社債発行費とは、企業が社債発行を行った際に使用する勘定科目です。
社債発行費については、営業外費用として処理する「原則処理」と、繰延資産として計上する「容認処理」のふたつがあります。
原則として支出時に「営業外費用」として処理し、創業費・開業費・開発費・株式交付費・社債発行費の5つは繰延資産として処理します。
原則処理の場合、社債発行費は、一括損金処理することが可能で、発行時の事務手数料についても会計上の費用計上があった場合は、税務上も損金算入することができます。
社債発行費は繰延資産に分類されます。繰延資産について詳しくは下記のコラムで解説しています。
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