ある日、郵便配達で内容証明郵便が届きました。中身を確認すると「債権譲渡通知書」です。読んでみると、債権の所有者が変わったとなっています。しかし、法律の知識がない人は一体何が起こったのか理解するのは難しいでしょう。この記事では債権譲渡の意味を説明し、受け取った時に取るべき行動について徹底解説します。債権譲渡通知が届いても焦らずに冷静に対応することができるようになるでしょう。
債権譲渡とは、未回収の売掛金や未払いの借入金などの債権を資産として、消費者金融などの債権者(お金を貸す側)から債権回収会社(取り立てをする会社)に債権(お金を回収する権利)を譲りわたすことをさします。
「債権譲渡通知」とは、債権者が第三者に債権を譲渡したことを知らせることです。そもそも債権というのは、法律で譲渡が禁止されていたり、性質上譲渡ができないものでない限り自由に譲渡することができるのが原則です。
たとえば金融業者があなたにお金を貸しているとしましょう。この場合、金融業者が債権者、お金を借りているあなたが債務者です。金融業者が、この債権を債権回収業者に譲渡するのが、先ほどもお伝えしたように、債権譲渡となります。この時点で債権者が金融業者から債権回収業者に変わりました。そして、債権を譲渡したことを債務者に対して通知するのが債権譲渡の通知です。
債権譲渡がなされると、債権者が債務者に対して有していた債権は、同一性を失わずに新債権者に移転します。利息債権や、保証人が負っている義務などもそのまま新債権者に移転することに注意してください。
それは債権者はコストをかけずに債権を早く回収したいからです。当たり前ですが、通常金融業者などの債権者は貸したお金は自分で回収しようとします。
しかし、返済期間中に債務者が失業などにより返済能力がなくなってしまった場合、返済が困難になります。
金融業者からすると、このような債権を回収するのはコストがかかり負担が大きいのです。そこで、金融業者は、債権回収業者に手数料分を差し引いて債権を売却しようと考えます。
例えば、あなたが金融業者Bから100万円を借りて、その返済が長期間にわたって滞っていたとしましょう。その場合金融業者は債権回収業者に対して手数料分20万円を差し引いて80万円で債権を売却するのです。
結果、金融業者は100万円全額を回収できるわけではありませんが、80万円は回収できます。一方債権回収業者はあなたから100万円を回収して、20万円の利益を得ることができます。
まず通知内容をよく確認しましょう。場合によっては詐欺の可能性もあります。間違って支払っても債務は消滅しませんので注意してください。
確認のポイントは次のとおりです
• 書類の差出人が元の債権者であること
• 内容証明郵便で届いていること
• 通知書に確定日付はあるか
誰が債権譲渡通知書の差出人なのかという点に着目しましょう。債権譲渡通知を出すことができるのは、債権者だけです。なぜ譲渡人からの通知が必要になるかというと、譲渡人は債権を失う立場にあり、そのことを自ら認めることは信用ができるからです。したがって、譲受人から通知をすることはできません。
もし差出人元の債権者でなければ、詐欺であることを疑ったほうがいいでしょう。通常債権譲渡通知は内容証明郵便を使って行います。普通はがきでやることはまずないでしょう。
通知書には、通知書の作成日時を公証人が証明する「確定日付」が刻印されています。なぜ、「確定日付」の刻印がされるかというと、債権が二重譲渡された場合にどちらが真の債権者か確定する必要があるからです。
Aが債権者、Bが債務者でAがCとDに二重に債権を譲渡したとしましょう。
その場合、確定日付によって債権回収業者と第三者のどちらが正当な債権者かを決めなければなりません。このときに必要になるのが、確定日付なのです。
しかし次の点に注意してください。それはどちらが真の権利者かを決めるのは、「確定日付」の前後だけではないということです。
例えばAのCに対する譲渡の通知の確定日付が「令和元年5月1日」、Dに対する譲渡の通知の確定日付が「平成31年4月30日」となっていたとします。一方Bが通知を受け取ったのは、Cに対する譲渡通知書が「令和元年5月2日」、Dに対する譲渡通知書が「令和元年年5月3日」だったとしましょう。この場合確定日付の前後ではなく、債務者に到達した日付が先か後かで優劣が決められます。つまり、この場合はCが新債権者となることに注意してください。
このように誰が新債権者であるかは債務者にとって非常に重要な情報です。そのため、通常、通知書は配達日時を確定することのできる配達証明郵便で郵送されてきます。
債権譲渡が行われた場合、譲り受けた債権回収会社に必ず返済の支払いをする必要があるのでしょうか?
そこで、債権譲渡の「対抗要件」という制度があります。
対抗要件が満たされない場合、債権回収会社は債権譲渡を主張して返済を請求することができません。
民法によると、対抗要件が満たされるためには、以下の2パターンのいずれかが必要となります。
・譲渡人が債務者に対して債権譲渡通知をする
・債務者が債権譲渡を承諾する
要するに、債権譲渡通知よりも前に債権者が承諾した場合、債権譲渡主張による取り立てが続く恐れがあるということです。
元の債権者からの通知書が未達にも関わらず支払いに応じることがないよう注意しましょう。
債権譲渡通知は、債務者に対してなされるだけで、保証人に対してはなされません。そのため、新債権者から保証債務の履行を求められると、保証人は困惑することになります。債権譲渡通知を受け取ったら、速やかに債権者が変わったことを保証人に伝えて下さい。
債権回収会社に債権が譲渡されたということは、貸金業者も回収が困難であると判断したからです。そうすると、その時点で遅延損害金が相当膨らんでいるでしょう。すでに分割払いの交渉をするのも難しい状態にあると思います。
債権回収会社はさまざまなノウハウをもっており、法律の素人が交渉をするのは困難です。このような場合には、弁護士などの専門家に相談をした方がいいでしょう。
債権は、全ての債権が譲渡できるわけではありません。
次の場合は、譲渡できない債権であるため注意が必要です。
①譲渡禁止特約がある場合
②性質的に債権譲渡できない場合
③法律的に債権譲渡できない場合
債権が発生する際に、債権を譲渡しないことを明示した「譲渡禁止特約」が結ばれている場合は、時系列が優先されるため、その債権の譲渡を行うことはできません。
債権の中でも、性質的に債権譲渡できないものがあります。
具体的には、以下のような債権は性質的に譲渡することができません。
・賃借権
・養育費のような扶養請求権
債権の中でも、法律的に債権譲渡できないものがあります。
具体的には、以下のような債権は法律的に譲渡することができません。
・給与請求権
・年金の受給権
債権譲渡通知が届いたら、
・届いた債権譲渡通知書が有効なものか確認する
・有効であることがわかったら弁護士などの専門家に相談する
以上2点を必ずしてください。
長いこと返済の滞った借金は、延滞金がつき膨れ上がってしまいます。特に複数の金融業者から借金をしている、いわゆる多重債務者になると、もはや自分だけで解決するのは困難です。人間はいやなことからは目をそらしてしまいがちです。しかし、放っておいても借金は消えて無くなるわけではありません。
債権譲渡通知が届いたということは、重大な局面を迎えたことを意味します。弁護士などの専門家に相談して早めに解決しましょう。