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限界利益とは?損益分岐点や計算方法なども解説

HUPRO 編集部
限界利益とは?損益分岐点や計算方法なども解説

「限界利益とは何?わかりやすく知りたい」
「限界利益はどのように計算したらよい?」

会計に関する用語はさまざまなものがありますが、限界利益はそのなかでも意味を理解しにくい用語です。また、限界利益という言葉だけで判断するとその意味を誤解しやすいという注意点もあります。

そこで今回は、限界利益の意味についてわかりやすくご紹介します。

限界利益とは

限界利益とは、モノやサービスを販売することによって直接的に獲得することができる利益のことです。売上と連動することで得られるという特徴があり、管理会計において利益を判断するための重要な指標となります。

限界利益を計算する方法は、全体の売上高から変動費のみを差し引くもので、以下のような計算式になります。

限界利益 = 売上高 − 変動費

これだけでは少し難しいかと思いますが、事業を続けていくことができるほど利益が出ているかを判断するために必要な情報として覚えておきましょう。限界利益を覚えることで、事業に利益が出ていて存続できるのか判断できるようになります。

ここで、知っておくだけで限界利益をイメージしやすくなる語源についてもみておきましょう。

限界利益の語源について

限界利益はという言葉を聞くと、限界を意味する英単語のlimitから考えて、これ以上は利益がでない限界点というようなイメージで捉えることも少なくありませんよね。

ですが、限界利益の英語表記は「limit profit」ではなく、「marginal profit」。marginalは余白の・欄外の・わずかなという意味を持つ形容詞、profitは利益という意味を持つ名詞です。また、marginalは、商業的な意味にすると「原価と売価の開きを意味する利ざや」となります。

つまり、語源からみると、限界利益はギリギリの利益ではなく、原価と売価の間にどの程度の利益が生まれるか、ということを示していることがわかります。

では、計算して算出した限界利益はどのように使われるのでしょうか。まずは、限界利益をなぜ計算するのか、というところからチェックしていきましょう。

限界利益を計算する理由

限界利益の計算をする理由は、どのようなモノやサービスを提供すべきか、あるいは撤退すべきか、を判断するためのわかりやすい指針になることです。

限界利益が赤字の場合、特別な理由がない限り、そのモノやサービスについては基本的には撤退すべきです。例えば、おにぎりの原材料を1個100円で仕入れたところ人気がなかったので1個70円で売った場合、限界利益は70円 – 100円 = –30円になります。

上記については限界利益の計算からも明らかですが、おにぎりを1個売るたびに利益としては30円損をすることになります。100個売れば3,000円の損失です。

そのため、限界利益の段階で赤字になるモノやサービスというのは、基本的には売れるほど損失になるということです。ですから、限界利益を計算して利益が出ていないモノやサービスからは撤退すべき、と考えることができます。

このように、限界利益の計算をすることで、あるモノやサービスの販売を継続するか、それとも撤退するか、という指針の手がかりを得られるようになります。

わざわざ計算しなくてもすぐに判断できると思うかもしれませんが、モノやサービスの数が多くなってくると、個別に判断することは難しくなってきます。また、さまざまな項目について多くの数字を扱うことで、文字通り数字に埋もれるような場合も少なくありません。

ですので、管理会計システムなどを活用し、自社が展開するモノやサービスの限界利益の一覧表を作成するといった方法で事業全体をみて事業のこれからを考えていくわけです。

それでは、より具体的に計算していくために知っておきたい売上高と変動費から確認していきましょう。

限界利益の計算に必要な売上高と変動費とは

限界利益の計算式は、「限界利益 = 売上高 − 変動費」です。

売上高(売上)とは、企業が商品やサービスを提供することで得られた売上の合計金額です。例として、1個100円のおにぎりが2個売れた場合、売上高の合計は200円となります。

次に変動費(可変費)とは、販売量や生産量などの売上に比例して変動する経費のことです。代表的な変動費の種類は、原材料の仕入費用、外注費用、輸送費などです。おにぎりが1つで70円とし、2つなら140円というように変動することから変動費と呼ばれます。

この売上高と変動費を使って計算するのが、限界利益です。

ちなみに、固定費とは「売上に関係なく必要となる変化しない費用」のことです。例えば、人件費や店舗の家賃、広告や維持費などとなります。固定費を使って計算する場合、限界利益ではなく「営業利益」となる点に注意しましょう。

粗利・営業利益の違い

限界利益は、単純に売上高の総額から変動費を引いた利益のこと。

まず、粗利との違いは、売上高から売上原価を引いた利益である点です。例にすると、1つ100円のおにぎりを2つ販売して、売上高が200円とします。おにぎりの原価が1つ70円とすると、2つで140円となりますので、粗利は60円です。

ちなみに、商品を作るのに使うすべての費用を、製品の単位あたりいくらになるのかを調べると、原価を知ることができます。そのため、固定費や変動費の概念がなく、単純に計算できることで「経費削減や販売価格の見直し」のために使われるケースが多いです。

他方、営業利益は固定費にあります。限界利益は変動費のみを使って計算していました。ですが、営業利益は限界利益の計算結果から「固定費」を差し引くことで求められます。

このように、粗利は「固定費や変動費の概念がない値」、営業利益は「限界利益から固定費を引いた値」という違いがあります。

限界利益と固定費、変動費との関係についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

限界利益の求め方

では、実際に限界利益を計算する方法をみていきましょう。限界利益は、全体の売上高から変動費のみを差し引くもので、以下のような計算式になります。

限界利益 = 売上高 − 変動費

簡単に計算すると、おにぎりの原材料を1個70円で仕入れて1つ100円で販売したなら、限界利益は100円 − 70円ですので「30円」になります。

もちろん、変動費の値が売上高に対して高いと「赤字」と呼ばれる状態です。1個100円で仕入れて、70円で販売したら70円 − 100円ですので「-30円」ですよね。

このように、限界利益を計算する方法を知ると、事業が赤字であるか、将来性があるかなどを判断する1つの指針になることがわかります。

では、もう少し詳しく計算するために代表的な業種別の変動費をみてみましょう。

【業種別】限界利益の計算に必要な変動費

変動費は、会社によっても業種によってもまったく異なります。そこで、業種別に具体的な変動費について説明します。

・製造業
・卸・小売業
・飲食業

製造業

製造業の代表的な変動費は、以下のような項目があります。

直接材料費
買入部品費
外注費
間接材料費
その他直接経費
重油等燃料費
当期製品仕入原価
当期製品棚卸高一期末製品棚卸高
酒税

このように、材料費や外注費、加工前の仕入が主なものとなります。

ここに、運送費、梱包費、燃料費等のものを作るほど増えていくことになるでしょう。

卸・小売業

小売業、つまりスーパーなどでは、以下のような変動費があります。

売上原価
支払運賃
支払荷造費
支払保管料
車両燃費費
保険料

代表的な変動費は商品の仕入高となります。

ここに売り場を増やせば増やすほど発生するパートさんの費用や梱包材料費等が入ってきます。

また、パートさんの給与は変動費に入れないこともありますが、あまり人が入らない平日は減らして、お客さんが入る休日は増やすことも多いため、変動費としてしまうことも多いです。

飲食業

飲食業の代表的な変動費は、以下のような項目があります。

料理原価
食材原価
人件費
水道光熱費
広告宣伝費
販売促進費
その他消耗品や修繕費

食材や飲料などの材料仕入が、主な変動費となるでしょう。

飲食業では、消耗品を考慮せずに利益を圧迫してしまう可能性があるため、変動費の内容に考慮して経営するべきです。

限界利益を使って考える損益分岐点

限界利益を計算できると、損益分岐点をみつけることができます。

損益分岐点とは、限界利益と固定費が同じ数値になり、営業利益を計算すると「損益が0となる」状態のことです。損益分岐点売上高と呼ばれることもあり、損益分岐点を下回ると赤字です。

この損益分岐点を知ることで、事業で利益を出すために変動費と固定費のどちらを改善するべきなのか判断できます。

例えば、売上高が100として、

・変動費が60
・限界利益が40
・固定費が40

といった場合、利益は0となり損益分岐点となります。ここで、変動費を50まで下げることができれば、利益が「10」増えることになるといったようなイメージです。

このように、損益分岐点をみつけることで削減対象を選択できるメリットが享受できます。限界利益の計算をしたときには、営業利益や損益分岐点も一緒に考えてみてください。

限界利益がマイナスなら営業利益を考える

では、限界利益はどのような場面で使うのでしょうか。その際には、営業利益との違いをもう一度考えるとわかりやすいです。

例えば、A・B・Cという拠点があったとし、それぞれの営業利益を以下のようになっているとします。

A(100万円)
B(0円)
C(-100万円)

営業利益だけだけを見ると、C拠点は足を引っ張っているから閉鎖、B拠点はあってもなくても一緒、という判断になりそうですね。

しかし、限界利益を計算して、それぞれの拠点をみてみると以下のような結果だったらどうでしょうか。

A(200万円)
B(200万円)
C(300万円)

それぞれの固定費は、従業員の給料だけと仮定して以下の数値とします。

A(100万円)
B(200万円)
C(400万円)

もし、C拠点を閉鎖して従業員をA拠点またはB拠点に異動させるとしたら、どちらに入れても営業利益は赤字になってしまいます。

つまり、固定費が削減できないのであればC拠点は残しておいた方が会社にとってはプラスになるわけです。むしろ、C拠点の限界利益がもっとも多いので稼ぎ頭ともいえます。

また、C拠点はあくまでも会社が戦略的に作ったものであり、責任者は固定費をどうすることもできない場合ならどうでしょうか。C拠点の責任者は責められるべきではなく、むしろ頑張っているという評価にもなりますよね。

このように、限界利益は拠点の評価、責任者の評価にも使えますし、撤退するかどうかを考える指標の1つとしても使えるわけです。

ちなみに、営業利益についてはこちらでも詳しく説明しています。

まとめ

限界利益とは、全体の売上高から、従業員の人数や販売数で変わる変動費を引くことで求められる値のこと。限界利益は、全体の売上高から変動費のみを差し引くもので、以下のような計算式になります。

限界利益 = 売上高 − 変動費

また、限界利益から固定費を引くことで「営業利益」を計算でき、限界利益が固定費と同じなら損益分岐点となることをお伝えしました。

限界利益を使えば損益がわかるだけではなく、撤退すべきかどうかの参考にもなるため、ぜひとも活用をしていきましょう。

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