運転資本とは、モノやサービスが売れてから売上代金を回収するまでに生じる出費を補填するための運転資金と言えるものです。運転資本は基本的に借入金で賄うため、必要な運転資本が多すぎることはリスクにつながります。そこで今回は、運転資本の計算方法や減少のコツなどをご紹介します。
運転資本とは、企業が事業活動を実施していくために必要になる資金のことです。ワーキングキャピタル(WC)と呼ばれることもあります。
運転資本は短期間における出金と入金の差異(キャッシュアウトフローとキャッシュインフローのズレ)を補正するための資金として活用されます
現代の商取引においては、代金について現金で決済される場合は少数であり、多くは信用取引で行っています。加えて、製品が売れても決済までにタイムラグが生じることもあります。
上記のような取引の複雑化によって、最終的な入金よりも出金が先行する場合が少なくありません。そのための資金として機能するのが運転資本になります。
運転資本の変化がプラスの場合とマイナスの場合では、それぞれ異なる点に注意する必要があります。
まず運転資本がプラスの場合は、売上債権の回収状況と比較すると、仕入債務の決済が前倒しになっている状態にあると表現できます。
支出が多くなるため、つなぎ資金を調達することが重要になってきます。また、運転資本の増加が大きい場合、売上高の拡大によってキャッシュの不足が招かれることがあります。帳簿上では利益が出ているにも関わらず、実際の運転資金の増加によってキャッシュが回らなくなり、黒字倒産するというリスクが高まります。
次に運転資本がマイナスの場合は、売上債権の回収状況に比べて仕入債務の決済が遅くなっている状態です。端的に言えば、資金繰りについて余裕がある状況になっています。
運転資本のマイナスが大きい場合、買入債務の拡大のペースが売上債権の拡大よりも早くなるため、売上が伸びている状態ではキャッシュに余裕が出てきます。
それによって資金繰りが楽になりますが、その半面いったん売上の減少が始まると、今度は一転してキャッシュ不足に陥る可能性も高まります。
運転資本の計算方法は複雑ではありません。基本的には流動資産から流動負債を差し引くだけです。
また、日常的な業務である営業取引に関する運転資本については、以下の式で計算することもできます。こちらの計算式の項目は運転資金のイメージを把握しやすくなっています。
運転資本 = 【売上債権】 + 【たな卸資産】 - 【仕入債務】
【売上債権】とは、モノやサービスを販売してからまだ受け取っていない代金のことで、売掛金や受取手形を含みます。
【たな卸資産】とは、いわゆる在庫のことで、商品以外にも原材料や仕掛品も含みます。
【仕入債務】とは売上債権の逆のようなもので、商品やサービスを購入してからまだ支払っていない代金のことです。買掛金や支払手形も含みます。
売上債権の数値が高くなることは売上の成長を意味しますが、同時に売掛金の回収が遅延して資金繰りに影響するリスクもあります。
次に、たな卸資産の数値が高くなることは処分して代金を回収できれば売上の成長を意味しますが、在庫が滞るリスクもあります。
上記の計算式の結果、運転資本の値が例えば200万円になったとすると、取引や業務の過程から売上代金の回収までに、合計200万円の運転資本が必要になるという意味です。
運転資本の調達手段は基本的に借入金になるため、売上代金の回収までの期間が長いほど運転資本として多くの借入金が必要になり、資金繰り等のリスクが高まることになります。
運転資本が多くなるほど一般に借入金が多く必要になることから、運転資本を減らすための方法が重要になってきます。
この点、運転資本を減らすための方法は3つあります。
①売上債権を減らす
②たな卸資産を減らす
③仕入債務を増やす
以上の3つになります。
注意点として、上記の方法はそれほど単純ではないことです。
例えば、確かに仕入れを増やせば売れる可能性もありますが、売れなければいずれはたな卸資産に計上しなければならなくなり、運転資本の増加につながります。
たな卸資産を減少させるために不利な条件で販売した場合、それによって売上代金の入金が遅延して運転資本の減少につながらない場合もあります。
運転資本の数値を決める3要素はそれぞれ関連しあっていることから、運転資本を減少させることは難しくなっています。
運転資本を効率よく減らすためのポイントは、まずは仕入債務の支払期間を延ばすことです。また、売上債権の回収期間を短縮することも効果的です。
そして最後に、売れにくい商品の仕入れを減らして無駄な在庫を抱えないようにすることも重要です。