SPVとは、特別事業体のことです。信託可やプロジェクト・ファイナンスを目的としていますが、その種類や形態はさまざまです。今回はSPVについて説明します。
SPVとは、特別目的事業体のことです。英語で「Special Purpose Vehicle」といい、その頭文字を取ったのがSPVです。証券化やプロジェクト・ファイナンスを目的とする事業のことをいいます。債権や不動産の流動化、証券化など限定された目的だけに設立されるものです。M&Aにおいては対象外者を買収する目的を持って設立されることがあります。
債券の証券化をおこなう場合に、SPVが事業会社や金融機関が保有する債券などの資産を取得して、その資産を生み出すキャッシュフローを背景に、証券を発行するなどの形態を取ります。
SPVの基本は、投資家と現債権者をつなぐ役割に特化した会社であり、意思決定を下す組織がありません。そのため、形態だけの箱にすぎないという考えが根底にあります。この考えから連結対象とはなりませんでした。
ほかに、Special Purpose EntityからSPE、Special Purpose CompanyからSPCと言われることもあります。SPEはおもに法人格を有する事業体に対していいます。最近では、特別目的会社粉飾事件が問題になったこともあり、会計基準が見直され、実質的には支配下にあると考えられるものは連結対象となっています。
主なSPVは、信託や任意組合などです。信託には特定目的信託や、投資信託、特定持分信託などが含まれます。
信託とは、信用して委託することで、財産を管理し、処分することで得られる利益で運営する組織などです。委託者を甲、受託者を乙、受益者を丙と呼ぶのが通常です。信託された財産のことを信託財産とよび、受託者は管理や処分を行いますが、これらは丙にあたる受益者の利益のために行うものでなければなりません。これを忠実義務といいます。
特定目的信託は、資産の流動化に関する法律を根拠にしており、SPC法といわれていましたが、2000年の法改正によって流動化法などと呼ばれるようになりました。
また広く知られる投資信託は、委託者指図型投資信託や、委託者非指図型投資信託といいます。両方とも契約型の投資信託であることには変わり有りません。実務上は、多くの場合委託者指図型投資信託を取ります。この委託者指図型投資信託は、委託者の指図に基づいて主として一定の資産に対して投資として運用することを目的にした投資信託です。それに加え、受益分を分割して複数の人に取得させることを目的としています。また、外国に信託するものは外国投資信託といいます。一方、非指図型の投資信託は受託者の判断によって運用が行われるものです。
任意組合は、何らかの目的のために設立された団体で、共同事業を営む契約それ自体や、共同事業体のことをいいます。これは組織型のSPVです。任意組合の他に、投資事業有限責任組合や外国法上で類似した企業形態を取る会社も組織型のSPVに含まれます。
先述のとおり、SPVは証券化やプロジェクト・ファイナンスを目的に行っています。これについて詳しく説明します。
証券化とは帰属主体から原資産をSPVに移転させることで、原資産から生じたキャッシュフローを裏付けに資産担保証券など金融商品を発行する技術のことです。キャッシュフローとは現金の流れを意味し、企業や財務活動によって得られた収入から外部への支出を差し引いて手元に残る資産のながれ全体のことをいいます。金融商品とは、金融取引における商品のことをさしており、具体的な物質や商品を指している言葉ではありません。
原資産の原因を相対取引に限らない場合は、投資信託も証券化のひとつとなります。
また、プロジェクトファイナンスとは、ある特定の事業から出る予想収益をベースにして借り入れが行われます。担保となるのは特定事業の資産すべてです。スポンサーなどからは追加の担保を取らない仕組みになっています。対比として使用されるコーポレート・ファイナンスは、企業が借り入れをするときに企業全体の信用力をベースにしたもので、プロジェクト・ファイナンスとは基礎とするものや担保になるものが違います。
プロジェクト・ファイナンスの場合、金融機関は企業が行う事業の将来的な予想に関わっているため、そのリスクを負担しています。リスクを負担することでより高い利益を追求することができるため、プロジェクト・ファイナンスを採用する企業も少なくありません。
SPCは一般的に資産の流動化にかかわる業務を行うために設立される社団法人のことで、株式会社や合同会社、有限会社などはSPCにあたります。また、投資法人や一般社団法人もSPCの親法人として成立することがあります。
商人的側面を持ちますが、会社法上の考えでは、会社ではありません。業務を行うためには財務局に業務開始届出書を提出する必要があり、その後も変更のたびに届け出る必要があるなど、財務局による監督があります。