独学で公認会計士試験に合格するためには、定評のあるテキストを使うことが大切です。わかりやすいからと適当な本を買ってしまうと、十分に論点が掘り下げられていなかったり、試験範囲が網羅されていなかったりすることがあります。
独学の人は何が良いテキストが良いのかがなかなか判断しづらいので、公認会計士試験には向いていないテキストを使ってしまいがちです。しかし、公認会計士試験に独学で合格するためには、きちんと基本的な論点を抑え、十分に問題演習をすることが大切です。
以下では、独学で公認会計士試験に合格するためのテキストについて紹介していきます。
独学で公認会計士試験に合格するためには、様々なパターンの問題演習に取り組む必要があります。どんなに良いテキストで勉強してインプットの量を増やしたとしても、アウトプットの量が足りないと、得点力が磨かれなくなってしまいます。
そのため、独学で公認会計士試験に合格するためには、重要な論点を漏らさず、新しい論点も踏まえてきちんと説明したテキストを選ぶ必要があります。会計基準は毎年のように変更されるので、できるだけ最新の教科書を利用することが重要です。
それではまず、会計士試験の初学者におすすめのテキストを紹介していきます。
『スタンダードテキスト財務会計論』
佐藤 信彦、河﨑 照行、齋藤 真哉、佐藤信彦、河﨑照行、齋藤真哉(著)他
中央経済社(2019)
「なぜそういった処理をするのか?」といったことが詳しく解説されているので、理解はしやすいものの、日商簿記2級修了だと理解できない箇所もあるでしょう。
そのため日商1級修了者・学習者以上の人向けの本といえます。そういった人が利用すると理解を深めることができます。(ただし、やる気次第では2級でも読みすすめることは可能です。)
考え方が理解でき設例が解けるようになったら問題集に移行するのがいいでしょう。
また、分からないときに調べる本としても利用できるので、独学者にはかなり重宝する本となります。
※買って後悔しないためにも「理解できるのか?」といったことを確認するためにも、書店で本を手にとって見てください。(基礎・応用合わせると1万円するので安い買い物ではありません)
『公認会計士試験 財務会計論の重点詳解(第3版)』
浅倉 和俊、渡辺 竜介 (著)
中央経済社(2018)
先ほど紹介したものは簿記の知識がある人向けのテキストになりますが、こちらは公認会計士試験向けであり、なおかつ入門レベルのテキストになります。
ただ、見た目は文字がずらっと並んでいて見づらい印象はありますが、①会計士向け、②改正済み、③入門レベルといった3つの要素を全て満たしているのでおすすめの1冊となります。
この教材が読み終わった頃には他で市販されている財務会計のテキストは苦労せず読む進めることができますが、専門学校を利用している方やこれまで財務会計の学習をしていた方は利用する必要はないでしょう。
試験に合格することを考えると、こういった本よりももう少し試験よりの本を利用したほうが合格が近くなる人もいらっしゃるでしょう。
『会計法規集(第11版)』
中央経済社(2019)
公認会計士の理論対策を独学でする場合は必携の1冊。独学でなくても専門学校を利用者も購入している人は多く、学校側も購入を勧める場合が多いです。
これを頭から読み込むと効率の観点からおすすめしませんが、よく出る論点などは会計法規集を読み込む必要があります。実際、学校の授業ではこの会計法規集を元に説明されることが多いです。問題集などを解いた際に関連項目の法規集の読み込みをすると理解がより深まるのでおすすめします。
法規集っていうと何か堅苦しくて難しそうなイメージをもたれる方もいらっしゃるかもしれませんが、なぜこのようなルールがあるのかといった結論の背景などは面白く、そして試験で問われるのは結論の背景部分なので、その流れを理解する事で点だと思っていた論点が線になって理解が一気に深まる事があります。
次に、科目別のおすすめのテキストについて解説していきましょう。
『財務会計講義』
財務会計のテキストとして、最も定評があるのは、桜井久勝(2019)『財務会計講義』中央経済社です。このテキストは、公認会計士試験の受験者であれば、必ず購入しておきたいテキストです。
すでに版が重ねられており、四半世紀読み継がれている財務会計の全体像を明解に示したテキストとなっています。過不足なく出題範囲を網羅しており、毎年の会計基準の改訂にも対応しています。大学の講義でもよく使われているテキストです。
筆者である桜井先生は、もともと神戸大学で会計学を教える先生でした。公認会計士試験の試験委員を務めた経験もある先生です。会計基準は毎年のように改定されるので、このテキストを購入する場合には最新のものを用意するようにすることが大切です。
本書は、商工会議所簿記検定の 2 級合格者のレベルを前提として執筆されているので、ある程度会計学についての勉強が進んでからの購入がおすすめです。ただし、このテキストのなかでは、重要な論点を掘り下げることができていない部分があります。
そのため、資格試験の出題範囲を網羅的にカバーするには、減損会計や退職給付会計など、会計の各分野ごとに 1 冊ずつ出版されている専門書か、それらを整理した解説教材にチャレンジする必要がある点に注意が必要です。
文章で記述された会計基準の意味は、仕訳や仮設数値例を通じて、よりいっそう明確かつ具体的に理解できるようになるになるので、財務会計の勉強のためにこのテキストを使いつつ、重要な論点については、他のテキストと突き合わせながら具体的に演習問題を通じて身につけていくことが重要です。
『管理会計』
管理会計のテキストとして、最も定評があるのは、一橋大学の会計系の先生が書いた『管理会計』というテキストです。このテキストは2008年に出版されたものですが、2019年現在もその内容は色あせてはいません。
会計士試験に必要不可欠となる基本的な論点はこのテキストで全て網羅することができます。例題も豊富についており、テキストに沿って演習問題に取組むことができる問題集も販売されているので、独学で管理会計を勉強している人におすすめのテキストです。
一橋大学の実際の管理会計の講義ではこのテキストが使われています。管理会計の基本となる考え方がつまった本なので、この本をしっかり理解しておけば、試験では十分に対応できます。ただし、テキストを覚えただけでは計算問題に対応できないので、このテキストを使いながらも、きちんと演習問題を通じて、計算問題に慣れておくことが重要です。
『公認会計士試験 短答式 企業法〈2019年版〉』
企業法のテキストはあまり市販されていません。その理由は、企業法という分野が基本的には会計士試験だけのものであるからです。会社法・金融商品取引法などを勉強したいのであれば、普通は、その名を冠したテキストを使います。
そこで、公認会計士試験の企業法を勉強したいという人は、公認会計士試験用に書かれた企業法のテキストを使うのが最も効率的に勉強するためのポイントとなります。そこでおすすめなのが、『公認会計士試験 短答式 企業法〈2019年版〉』というテキストです。
商法・会社法・金融商品取引法といた基本的な論点を全て網羅しているので安心して勉強を進めることができます。また、問題集としても活用することができるので、このテキストをきちんと覚えて、演習問題に解答できるようにしておけば、公認会計士試験の短答式試験に合格する力を身につけることができます。
『監査論テキスト(第6版)』
監査論については、他の科目と比較すると、出題の範囲はそれほど広いというわけではありません。しかも、それほど難しい論点が問われるわけではないので、基本的な内容を過不足なく答えられるようにしておくことが大切です。
そのために不可欠なテキストが、この2015年に出版された『監査論テキスト(第6版)』です。これは監査の分野の重鎮である山浦先生が書いたものです。これ以外のテキストは平易な言葉で買いてあるものの、論文式試験で書くには論点の掘り下げが足りていないので高得点が見込めません。しかし、このテキストは十分にひとつひとつの論点が掘り下げられており、論文式試験でも通用する知識を身につけることができます。
独学で公認会計士試験に合格するためには、1冊のテキストについて十分に理解し、それに基づいて問題が解けるかどうかを徹底して繰り返す必要があります。合格のためには、演習問題をこなす量が重要となりますが、論文式試験では、正しい会計知識で議論を展開することが重要となるので、テキストの理解も非常に重要です。そのため、基本的な論点を十分に網羅しているテキストを熟読して、すべての論点に備えておくことが大切になります。
他にもテキストについてまとめた記事を公開しています。詳しくは下記をご覧ください。
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