デリバティブ取引としては、大きく分類すれば、スワップ取引、オプション取引、先物取引があります。資産運用や資産形成をするときは、選択肢を拡大する意味において知識についてマスターしておくことは大切です。今回はスワップ取引とは、スワップ取引のリスクとはについて解説していきます。
デリバティブ取引の概要についてはこちらのコラムを参考にしてください。
スワップ取引というのは、価値が等しいキャッシュ・フロー(お金の流れ)を交換するものです。
※スワップ=「交換」
代表的なスワップ取引の商品としては、通貨スワップ、金利スワップ、クレジット・デフォルト・スワップなどがあります。この中で、通貨スワップと金利スワップはよく比べられます。
通貨スワップというのは、違った通貨の違った種類の金利を交換するものです。一方、金利スワップというのは、同じ通貨の違った種類の金利を交換するものです。
ここでは、金利スワップについてスワップ取引のシステムをご紹介します。
AとBが、銀行で1,000万円、5年間の借入をしているとしましょう。Aは固定金利、Bは1年間の変動金利にしています。
Aは「金利が将来的にダウンする可能性があるため固定金利をやめて変動金利に変更したい」と考えており、
Bは「金利が将来的にアップすると困るので変動金利をやめて固定金利に変更したい」と考えています。
そんなときに、AとBは同じ元本と期間の借入であるため、固定金利をBがAに支払う、一方、変動金利をAがBに支払うようにします。
そうすることで事実上、Aは変動金利で支払い、Bは固定金利で支払うことができ、AとBの両方の希望が叶えられることになります。このように、金利スワップというのは、元金は交換することなくBの変動金利とAの固定金利を交換することです。
ちなみにこの場合、金利スワップでは、両方とも5年間が終わるまでどのように変動金利がなるかわからないため、最終的にAとBのいずれが得になるかということはわかりません。このようなことが、スワップ取引の基礎的なものです。
リスクヘッジの機能をスワップ取引は持っていますが、トラブルになるほとんどのケースでは、スワップ取引を買う当事者は、リスクをヘッジするためでなく、スワップ取引を投資として買います。
しかし、当然ですが、スワップ取引を売る側としては、取引が自分に有利なものであると認識しないと契約を結びません。
そのため、一見すると、取引が買う人に有利なように見えても、デリバティブ契約のスワップ取引などでは、特殊な条項がバランスをとるために入れられるときがあります。このような条項としては、ノックイン・オプションやノックアウト・オプションがあります。
ノックイン・オプションというのは、「前もって決定された観察期間あるいはモニタリング期間において、一定の価格レベルに対象になる原資産が達すれば発生する」ことを決定したものです。
一方、ノックアウト・オプションというのは、「一定の価格レベルに対象になる原資産が達すれば当該の契約などが無くなる」ことを決定したものです。
この説明のみでは具体的でなくわかりにくため、ここでは、通貨スワップ契約のケースについてご紹介します。
### 具体例 AがBに100万円を毎月5年間支払って、1万ドルをBが支払う契約を結ぶときに、為替レートが1ドル100円であるとします。
ノックイン・オプションのケースとしては、90円を為替レートがオーバーする円高になったときは、この為替レートが保たれている期間、AがBに200万円を毎月支払って、2万ドルをBが支払うという契約内容に変えるというような条項があります。
また、一方、ノックアウト・オプションのケースとしては、例えば、120円以上の円安に為替レートがなればこの契約そのものが無くなるというような条項があります。120円の為替レートというのは、1万ドルが120万円になります。
しかし、スワップ契約においては、100万円と引き換えに、Bは1万ドルをAに支払う必要があり、Bが20万円の差額は負担するようになります。
Bが負担する割合は、円安に為替レートがなるほど大きくなります。
しかし、このようなノックアウト・オプションのときは、契約が無くなるため、為替レートが円安の120円以上になると、負担をBは免れるようになります。
一方、90円の為替レートということは、100万円が約111万円になります。
この約11万円の差額はBの儲けになりますが、このようなノックイン・オプションがあり、しかも、円高になって90円をオーバーするになったときは、2倍の2万ドルの200万円の取引を行うようになります。そのため、Bの儲けが2倍になると同時に、2倍にAの損もなります。
デリバティブ取引を行っている企業などの損失が、リーマンショックが発生した後の円高によって発生したり、増大したりしたのは、このようなノックイン条項があったことも一つの要因です。スワップ取引では、このようなリスクもあるため注意しましょう。