損益計算書には様々な項目があります。皆さんが気にしているのは売上高、売上総利益、経常利益くらいで、それ以外の項目に目を向けることは少ないのではないでしょうか。企業の損益を比較した時、営業外収益に注目すると面白いですよ。今回はそんな営業外収益について解説します。
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営業外収益とは、本業以外の収益で、経常的に発生するものを言います。受取配当金や受取利息等金融収益や、他に分類しづらい雑収入等も営業外収益となります。ただし、固定資産売却益等のように臨時かつ金額が巨額なケースで発生するようなものは営業外収益ではなく特別利益となります。
なお、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を控除して経常利益が算出されます。この経常利益に注目する人が多い為、営業外収益の内容というのは実はよく見る必要があります。
営業外収益の代表格は受取利息と受取配当金です。会社の中には営業損失にも関わらず、受取利息と受取配当金によって経常利益が計上されている会社もあります。
受取利息は貸付金を保有している企業が貸付先から獲得した利息となります。受取配当金は出資している企業から獲得した配当金となります。どちらも企業に余剰資金がありその資金を貸付金や有価証券などの金融商品に振り替えているから発生するのです。
本業が安定していなくともこれらによって継続して経常利益が出ている会社は意外と長期的に継続したりするものです。一方で、どちらも相手頼みの経営となるため貸付が焦げ付いたり投資先が配当を辞めたり破産してしまうと一気に財政状態が傾きます。よって、これらの営業外収益で黒字化している会社は依存型の経営をしている会社と読めます。
受取補償金という科目が計上されている企業があります。家電量販店や飲食店で見られる場合があります。
ぱっと見よくわかりませんが、実は仕入先からのリベートであることが多いのです。家電量販店ではある一定以上特定製品を販売するとメーカーからリベートがもらえることがあります。たまに量販店でやたら特定の機種を勧めてくるな…と思われたらそれかもしれません。また、他店舗展開している飲食業ではビール会社と契約を結んで他のメーカーからは仕入れないことがあります。その際に3年縛りであれば3年間にわたって協賛金(リベート)をメーカーが払うことがあります。
※リベート:支払い代金の一部分などを支払い人に戻すこと。
これらが受取補償金として営業外収益に計上されているわけです。しかしなぜその解説をしているかというと、これらの収益が売上原価のマイナスとして計上されている企業があるからです。
先ほどお話した通り受取補償金はリベートである可能性が高い為、これを本業でない継続した収入と見るのであれば営業外収益となります。一方で、これは実質沢山仕入れてくれてありがとう、という値引に近いものであるならば仕入のマイナスという結論となります。家電量販店や飲食業の決算を横並びにしてみると、処理の違いに気づくかもしれません。処理の仕方によって、粗利率等が変わってきますよね。
たまに見かけるのが毎年営業外収益に雑収入がたくさん計上されている企業です。ぱっと見はよくわからない収益をどんどん詰め込んだのかな、という印象になります。税務申告書もセットで見られるのでしたら、勘定明細に内容が書いてあるので内容はすぐにわかります。
最近よく見かけるのが「雇用助成金」等の助成金収入です。数十万円単位のものから100万円単位のものまで様々ですが、決算書作成の過程でわざわざ項目を作るのが面倒で雑収入に入れたままという決算書も見かけます。
皆さんが税理士であり、決算書だけ見せられて顧客から「私の会社に何か良いアドバイスをして!」と言われたら「売上をもっと上げて…利益を…」と当然のことしか言えないような状況にあったとします。そんな時に役立つのは「雑収入の中身を見せてください」として、雇用助成金などが計上されていなかったら「様々な助成金を申請して、将来の投資に役立ててはいかがでしょうか」と実益のあるアドバイスができるかもしれません。経営者は即効性のあるアドバイスに敏感なのでうまくいけばとても信頼されることになるでしょう。
営業外収益は「本業以外」の収益が計上されると言いました。反対に、「本業」の収益は売上高に計上されます。
よく、受取賃借料として不動産収入が営業外収益に計上されている会社があります。これは、不動産賃貸業が本業以外だからという理由ですが、本業かどうかは誰が決めるのでしょうか。答えは経営者です。つまり、定款の主たる目的に「不動産賃貸業」と書かれているようでしたら売上高に計上される可能性があります。しかし、その場合は減価償却費や租税公課等は売上原価に計上されることに留意しましょう。また、作業くずが営業外収益に計上されていることがありますが、本業が製造業であり材料の切削により恒常的に発生しているようであれば原価から控除することが考えられます。
このように、営業外収益ではなく売上に計上できる可能性を考えてすっきりした損益計算書の作成を考えましょう。