パススルー課税というのを知っていますか?
パススルー課税は出資者にお得な課税と言われていますが、何なのか、よくわからない人も多いでしょう。パススルー課税の内容とその課税される要件についてご紹介していきます。
パススルー課税とは、投資ファンドなどでキャピタルゲインや配当金などの利益を得た場合の課税方法のことを指します。
利益を得ても、ファンド段階では課税されず、その利益配分を受けた出資者、構成員にのみ課税されるのが「パススルー課税(構成員課税)」の考え方です。
例えば、出資して利益を得ると、法人や組合などの利益にまず税金がかかり、ファンド自体に課税されます。出資者には課税後の利益が分配されます。更に、出資者への利益の分配金にも課税がなされます。そうなると、二重課税になってしまうことになります。それを防ぐために、「パススルー課税」は、法人や組合への課税はスルーして、利益を受けた出資者の構成員のみに課税されるのが特徴です。
例えば、通常、資本金として株主からお金を集め、1,000万円の利益をあげてもそこに40%の400万円の法人税がかかります。1,000万円-400万円=600万円が残ります。課税された残りの金額を投資家に分配します。
そこからまた、投資家の分配金に、所得税15%~50%の累進課税がかかっていきます。40%の所得税がかかると考えると、投資家の分配金600万円-240万円=360万円が投資家の利益となります。
つまり、1,000万円の利益が出ても、課税されることによって投資家には360万円しか手に入らないことになります。
それがパススルー課税ですと、1,000万円の利益に対して、まず法人税がかかりません。そのままの金額が分配され、構成員である投資家個人だけに課税され、40%の所得税のみ投資家にかかると計算され、1,000万円-400万円=600万円が受け取れます。
最初の二重課税される状態からすると、配当金に600万円-360万円=240万円もの差が出てきます。
これによって、パススルー課税の場合、法人や組合自身も法人税がかからずに得をしますし、投資家個人も配当金が大きく減らずにすみます。どちらも大きく得をすることになるでしょう。
パススルー課税では、二重課税されないようになっているために、大きく投資利益が下がることがないのが特徴です。そのため、出資者が得をするとも言われている特殊な課税方法です。
ただ、これは、株式会社に出資する際には、適用されません。法人格を有しない団体に出資する際だけに適用される課税方法となっています。
任意組合などに出資する場合にだけ適用となるのが特徴。
SPC(特別目的会社)・TMK(特定目的会社)やLLP(有限責任事業組合)などを活用することで、パススルー課税を使って税金を安く済ませることができます。
また、例外として、普通の法人でも「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づいた投資法人を作った場合だけは、パススルー課税のような考え方をすることが可能です。
配当可能利益の90%を超える分配する等の要件を満たせば、法人税は課税されなくなります。
つまり、パススルー課税について見てきますと、法人格を有しない団体で、ファンドを利用して投資をしてもらうとパススルー課税が適用となり、有利になると言えるものでしょう。
通常の株を発行して会社を作るよりも、ファンドを作ることで法人格を有しないとみなされ、法人税が課税されない点が特徴です。
ただ、全部のファンドにパススルー課税が活用できるとも限りませんので確認は必要となってきます。
パススルー課税を活用するために、SPC(特別目的会社)・TMK(特定目的会社)やLLP(有限責任事業組合)、 LPS(投資事業有限責任組合)、任意組合を運営するのがいいのですが、これらには縛りがあることも覚えておくといいでしょう。
SPC(特別目的会社)・TMK(特定目的会社)でパススルー課税を活用するには、利益の多くを配当することが条件となります。利益を内部留保せず、分配することが条件となりますので、利益を出して、組織を大きくすることはあまり想定されていないでしょう。
また、LLP(有限責任事業組合)には、法人格もありませんので、業界の免許が取りづらかったり、認可が取れなかったりして、事業がしづらい面があります。税金面でのメリットがある面もあれば、事業としての発展、拡大をしづらいというデメリットも生じてきます。
よくベンチャー企業などがファンドを立ち上げますが、事業を大きく成長発展させるためには少しデメリットもあると言えます。
パススルー課税は、投資ファンドのキャピタルゲインや配当金などが対象となり、法人格を持たない組織への二重課税を防ぐ課税方法です。その特徴と対象となる組織をよく知って、活用してみるといいでしょう。
税理士の視点からも、起業する場合に、節税を考えて、LLP(有限責任事業組合)などを作ってスタートするのもいい方法だと助言することもいいでしょう。法人格を持たない点でのデメリットも色々確認した上で、事業を展開していくにはいい方法です。