日本では労働力不足・人手不足であるという話をよく聞きます。その中でも公認会計士は不足していると言われています。公認会計士が不足と言われる理由はなんでしょうか?現役従事者が解説します!
結論から言うと、日本公認会計士協会のデータによれば公認会計士のストック(総会委員数)は増えているがフロー(毎年の会員登録数)は減っています。
公認会計士になるには、試験(短答式と論文式の二回)を合格したのちに修了考査というトレーニングを受け一定期間の実務経験を経てから晴れて公認会計士として登録して名乗ることができます。
そして、面白いことに、論文式試験に合格する人数は増えていますが修了考査を経て登録する人数は減っているのです。もちろん登録者数は毎年存在しますから日本全体の公認会計士数は増加しています。
公認会計士が不足していると言われますが、その理由の一つに団塊世代の一斉退職という意見があります。確かに一斉退職したら少子高齢化社会である以上人手不足になります。
しかしこれは公認会計士に限ったことではありません。公認会計士が日本全体と比べて不足が深刻化し騒がれているのはやはり仕業という権威が減ることで日本を支える監査業界への懸念からでしょう。
確かに、公認会計士の数が少なく監査業界が杜撰になれば日本の資本市場が海外から疑惑を持たれたり日本の金融市場がうまく機能しなくなったりするでしょう。
公認会計士が減っていると言われる理由はなんなのでしょうか?
理由は大きく2つあります。
以下で詳しく解説していきます。
「公認会計士不足」が指すものとは、ずばり監査法人離れです。公認会計士自体は日本で増えているのですから、最も懸念されているのは監査法人離れとなります。
近年の会計業界では、ベンチャー企業がCFOとして公認会計士を募集したり、経理やコンサルティング業または独立の道を選んだり多様化しています。
そして彼らが監査法人を離れてそうした道を選ぶのは間違いなく、監査法人で働くことがつまらないと感じるからという指摘があります。
監査法人は体育会系のところが多く、なおかつBIG4では競争も激しいため「ルーティーンというものをプレッシャーの中でミスなくこなす」ことが求められる職業です。
こうした単調で泥臭い仕事内容をつまらなく感じた結果、新しい環境にチャレンジしたいと思う会計士が増えていると考えられます。
人手不足が深刻化するなかで、BIG4は大量採用に加えて採用後にリフレッシュ休暇や一部リモートワーク、育児休暇など働き方を柔軟に多様化させています。
しかし、それは働き方が変わっただけであり、業務内容は変わりません。
また、BIG4の中には昇進をマネージャー会議で決定するのですが、昇進要件のKPI(判断指標)として稼働率(どれだけたくさん働いたか)を置いているところもあります。
つまり、できるだけアベイラブル(業務がない時間のこと)をなくして残業などで稼働率を上げていくかが昇進に影響する法人があるということです。
このように、BIG4の「働き方に柔軟さを求めるがなるべくたくさん働いて量をこなしてほしい(たくさんの単調な監査業務を作業してほしい)」というスタイルであるゆえ、論文式合格者であればある程度の学歴と人格があれば毎年大量に採用しています。
また、公認会計士が不足しても「だから手を抜こう」とか「この会社の監査顧問を切ろう」とかできません。
また、2019年からKAM(Key Auditing Matter)といって監査人が財務諸表に関する意見を出すときに何を根拠に監査方針を決めて監査したかも法律上記述しなくてはいけないようになりました。
つまり、年々監査法人側の負担は大きくなっているのです。こういう状況下、監査法人で働く公認会計士が不足は深刻であり、繁忙期の公認会計士の残業量は減っていないのが現状です。
公認会計士不足が実際に監査法人で働いている公認会計士にどのような影響があるかというと、やはり労働時間でしょう。
36協定はもちろん徹底されていますが、BIG4は外資系ブランドであり働き方も日系企業のように打刻で管理などは行われていないのが現状です。
労働時間で一時電通が問題になりましたが、働いている当方人からしたら「仕事を終わらせたい」「できる限り残業代をつけたい」など必死です。監査業界でより監査品質や監査量が求められていく中で、1人当たりの仕事量は減ることはありません。
外資系ブランドではRPAなど安易に入れることができないのでやはりまだ人力作業であり、監査報酬は会計士が働いた時間に比例して決定するのでなおさら減ることはないでしょう。
公認会計士不足について、その背景と公認会計士への影響について現場レベルの視点で述べてきましたがいかがでしょうか。実際に働く現場では公認会計士不足とはいえど遅くまで働いている人もいますが、監査業務もチームワークですからお互い助け合って仕事をしているパターンが多いです。監査法人の今後の動向が非常に重要ですので、ぜひニュース等はチェックしておきましょう。