少数株主の権利を守るため、会社法上、いろいろな権利が株主あるいは一定の要件をクリアする株主に対して認められています。事業承継、M&A、スクイーズアウトなどのときは、株主構成を少数株主に与えられる権利内容を考えて検討する必要があります。
今回は少数株主、基本的な少数株主持分(非支配株主持分)の考え方について解説していきます。
少数株主というのは、ある子会社の自己資本の中において、親企業の持ち分を除いたものを持っている株主のことです。非支配株主ともいわれています。少数株主は、連結グループ企業において、親企業ではない議決権がある株主のことです。
また、連結会計上、少数株主持分は少数株主に帰属する持ち分であり、少数株主利益は少数株主に帰属する利益です。
例えば、親企業が子会社の発行する株式10,000円の100%を出資して新しく子会社を設立するようなときは、子会社の10,000円の資本金は親企業に全て出資してもらったようになります。親企業がグループ企業に投資したときの親企業側の仕訳としては、次のようになります。
借方はグループ企業の10,000円で、貸方は現金の10,000円になります。親企業がグループ企業に投資したときのグループ企業の仕訳としては、次のようになります。借方は現金の10,000円で、貸方は資本金の10,000円になります。そのため、グループ企業の資本金などの純資産は、全て親企業のものになります。
親企業A社が別の企業B社と共同で出資して、グループ企業を作るケースを考えてみましょう。
このときは、親企業A社が80%の8,000円、別の企業B社が20%の2,000円を出資すると、親企業A社とグループ企業の仕訳は次のようになります。親企業A社がグループ企業に投資したときの親企業側の仕訳としては、次のようになります。
借方はグループ企業の株式の8,000円で、貸方は現金の8,000円になります。
親企業A社と別の企業B社がグループ企業に投資したときのグループ企業側の仕訳としては、次のようになります。
借方は現金の10,000円で、貸方は資本金の10,000円になります。親企業のグループ企業に対する投資のグループ企業の株式は8,000円ですが、グループ企業の資本金は10,000円になっています。では、この2,000円の差額はどのようなものでしょうか?
この2,000円の差額は、親企業A社以外の別の企業B社がグループ企業に出資したものです。連結会計では、グループ企業の純資産の中で、親企業の出資ではないものを少数株主(非支配株主持分)といいます。このときの少数株主(非支配株主持分)は、親企業ではない別の企業B社が出資した2,000円になります。
少数株主持分(非支配株主持分)は、一般的に、グループ企業の純資産に親企業を除いた株主の持分比率を掛けて計算します。先にご紹介したケースでは、少数株主(非支配株主持分)は次のようになります。グループ企業の純資産の10,000円に、親企業を除いた持分割合の20%を掛けた2,000円になります。
また、親企業を除いた持分割合は、100%から親企業の80%の持分割合を差し引いて計算します。なお、従来、非支配株主持分は少数株主持分といっていたため、古い本などのときは両方を読み替えるようにしましょう。
グループ企業にマイナスの剰余金が発生したときは、一般的に少数株主(非支配株主)の負担額は少数株主(非支配株主)の出資額に限られるので、マイナスに少数株主(非支配株主)がなることはありません。株主有限責任の原則によって、株式会社の株主は出資額が限度である責任を負うといいようになっています。
しかし、グループ企業の債権者に対して、親企業は保証債務などの契約に基づいた責任を負うことが多くあるのみでなく、グループ企業の債務の肩代わりなどを親企業の信用保持や経営責任のための経営判断などから行う可能性もあるので、少数株主(非支配株主)の負担額は少数株主(非支配株主)の出資額に限られると考えられ</span>ます。
なお、特定の少数株主(非支配株主)と親企業などの間で、グループ企業の債務引受など出資をオーバーした少数株主(非支配株主)による負担が了解されているときがあります。このようなときは、欠損がグループ企業に発生したときは、少数株主持分(非支配株主持分)に当該負担額まで欠損を負担させ、これをオーバーする分については親企業が負担するようになります。