経理担当者にとってはルーティンワークともいえる源泉所得税の納付ですが、納付期限に遅れた際の対応や、納付期限に関する特例などは正しく理解していますか?意外と漏れがちな源泉所得税納付期限に遅延した際の課税や特例など、納付期限に関する重要ルールをまとめてご紹介。経理に携わっている方は知識の確認やアップデートに、税理士を目指している方や経理へのキャリアチェンジを考えている方は復習に役立ててみてください。
源泉所得税は、法人が給与などから差し引いた所得税のことです。給与を源泉としているため、この仕組みを「源泉徴収」と呼びます。
経理業務に携わっていない方も年末調整や確定申告に必要な「源泉徴収票」と聞いたことはあるのではないでしょうか。
法人は個人に代わり徴収した源泉所得税を税務署に納めるわけですが、その納付期限に関するルールについて詳しく解説していきます。
源泉所得税の納付は一時的に従業員から税金を預かるもので、徴収額を間違えれば従業員の生活に影響します。
また従業員数が多い企業の場合はその額も増大し、納付資金の管理にも重大な責任がかかります。
源泉所得税納付に関するルールを正しく理解しておくことは健全な企業運営に欠かせません。
源泉所得税は、給与などから徴収した翌月10日までに所管の税務署に納付します。該当日が土日・祝日の場合は休日の明けの平日が納期限です。
源泉所得税納は税務担当者にとって毎月欠かせない業務ですが、納期限に遅れたらどうなるのでしょうか。次章でわかりやすく解説します。
納税の遅延は延滞税などのペナルティが課せられるのが一般的ですが、源泉所得税の納付遅延についても罰則があります。「延滞税」と「不納付加算税」の課税です。「延滞税」は完納するまで日数に応じて、「不納付加算税」は納付すべき税額の10%がそれぞれ課税されます。
「不納付加算税」は一定要件を満たしていれば免除、または軽減されます。まず、納期限1ヵ月以内に源泉所得税を納付していて、なおかつ納期限の前月から遡って1年間遅れることなく納付している場合は「不納付加算税」が免除されます。なお、税務署から納付遅延を指摘されてからの納税は対象外です。
次に税務署に指摘される前に自主的に源泉所得税を納付する場合は、原則10%の課税が5%に軽減されます。
また、不納付加算税額が5,000円未満ならば全額免除になります。これは所得の種類や納期限ごとの金額によって判定するもので、給与と報酬など異なる種類の源泉所得税がある場合、不納付加算税の合計が5,000円以上でもそれぞれが5,000円未満であれば、どちらも免除になります。
納期限についても同様で、複数月の遅延があっても不納付加算税がそれぞれ5,000円未満であればこのケースでも免除です。
加えて、災害など正当な理由による遅延の場合も免除となります。簡単にまとめると、年に1度のうっかりミスや致し方ない理由があるとき、ペナルティが少額の際は免除、遅延しても迅速に納付すれば5%に軽減というわけです。
このように整理すると決して厳しい制度ではありませんが、延滞税と合わせれば相応の金額になります。会社に不要な負担をかけないためにも納期限を守ることが大切です。
通常、源泉所得税は毎月納付するものですが、税務署への納付を年2回にできるのが「源泉所得税の納期の特例」です(給与からの源泉徴収は毎月で変更ありません)。
納付期限は1月~6月までに源泉徴収した所得税が7月10日、7月~12月までの分が翌年の1月20日です。適用要件は、「給与の支払い対象が常時10人未満の事業所」です。一時雇いのアルバイトは含まれません。
「源泉所得税の納期の特例」の適用を受けるかどうかは自由ですが、従業員数が10人未満で適用要件を満たしているならば、とりあえず申請してみて適用を受けておくことをおすすめします。なぜならそれなりの利点があるからです。
まず、適用を受けていても通常のように毎月納付することが可能なので、業務になんら差しさわりはありません。しかし**適用を受けていれば、万が一納付期限に遅れてしまったとしても遅延ペナルティを回避できる可能性が高まります。
「延滞税」と「不納付加算税」の負担は決して軽くないので、遅延リスクに備えておきたいところです。
次に納付手続きに関する事務負担が軽減できます。適用を受けていれば、一時雇用のアルバイトが多く業務が煩雑になった場合や人事異動、新規システムの導入時といった多忙な時期に業務負担をコントロールするのに役立ちます。
また、源泉所得税の納付を遅らせることで資金繰りがラクになる可能性があります。実際、無理なく通常納付ができていても、この制度の適用を受けている会社は多くあります。
経理担当の立場としては、万が一に備え、いつでも申請できるようポイントを押さえておきたい制度です。
「源泉所得税の納期の特例」は、所轄の税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し承認されれば適用となります。
ただし申請書を提出した月の翌月の末日付けで承認、または却下となるため、申請直後は適用されません。提出期限はありませんが、早めの申請が肝心です。また、納期限がボーナスや決算などに重なることも念頭に置いておきましょう。
参照:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例
経理の仕事はミスできないものばかりですが、なかでも源泉所得税の納期限遅延のペナルティ額は大きく、期限に遅れないための管理体制が欠かせません。
同時に、万が一に備えてペナルティ軽減につながる要件も知っておく必要があります。また、従業員の多い企業で経理に携わっていると「源泉所得税の納期の特例」とは無縁かもしれませんが、転職や独立、子会社の立ち上げなどの際に役立ちます。経理の基礎知識として一通り確認しておきましょう。