会社によっては、資格に関しては資格規程があるが、職務に関しては職務権限規程がないところもあるのではないでしょうか。しかし、会社にとって職務権限規定は必要なものであり、必ず職務権限を明確にするために設けておく必要があります。今回は職務権限規程と取締役の職務権限とについて解説していきます。
まず、権限というのは、他の人に対して人が行える権利の範囲、法令で決められた権力を官庁などが行える範囲です。いずれも意味は範囲というものです。
「権」の意味は、おもりということです。軽いか重いかはおもりが支配するため、ちからの意味としても使われます。「権衡を保つ」において、権はおもり、衡はさおで、意味は物事のつり合いを維持することになります。「均衡を保つ」が、現在は使用されています。
「限」は、範囲を表し限りがあることで、「限界」「限定」のように使用されます。「権限がある」といえばイメージとしてはすごい力があるような感じがありますが、実際にはそうではなく限界が権力にあるという意味です。権力は限定された範囲に及ぶということです。そのため、「権限がある」というのは、その範囲までの限定された権力があるという意味になります。
一方、「権限がない」というのは、権力の限界・範囲をオーバーしているという意味になります。大きな権限があるというのは、権力は広い範囲まで及ぶという意味になります。「分限」は「限」という言葉が使用されていますが、意味としては「身分保障の限界」になります。
では、職務権限規程とはどのようなものでしょうか?職務権限規程というのは、それぞれの職務権限を組織において明確にしたものです。職務権限規程を決めることによって、相互の職務の分業と責任範囲を明確にして、命令系統のトラブルや職務間の重複などを回避します。
例えば、部長の職務権限としては、次のようなことなどを規定しています。
ここでは、取締役の職務権限についてご紹介します。
代表取締役を除いた取締役は、取締役会に取締役会の構成員として関与します。会社の業務執行の決定、代表取締役の解職および選定、取締役の職務の執行の監督が、取締役会の職務権限です。
会社の業務執行の決定というのは、会社の業務について意思を決めることです。会社の業務としては、ビジネスプランの立案、商品の製造、営業活動、サービスの提供、資金の調達、人材管理などがありますが、業務執行の決定は方針をこのようなものについて策定し、また、大切な個別の事案に関して判断することです。
代表取締役の解職および選定は、誰を代表取締役にするかを決めて、適任でなければ解職します。
取締役の中から代表取締役は選ばれます。取締役の職務の監督というのは、それぞれの取締役が職務を適正に行っているかを監督することです。
特に大切なのは、業務執行権限がある業務執行取締役や代表取締役の業務執行を監督することです。このような取締役会の権限行使に関して、取締役会の構成員として取締役は関与します。具体的には、取締役会に参加して、議決権を決議するときは行使するようになります。また、取締役会に上程されたことに取締役の監視義務は限定されない、と判例では決まっています。
そのため、必要に応じて、取締役会に上程されたことでなくとも適正に業務執行が行われるようにすることが要求されているといえます。例えば、会社において取締役が不正行為が何等か行われていると疑ったときは、取締役会で取り上げたり、自分で調べたりするなどの対応を行う必要があります。
会社の業務を執行する権限が代表取締役はありますが、代表取締役を除いた他の取締役も、業務執行取締役として取締役会の決議によって選ばれたときは会社の業務を執行する権限があります。
また選定手続きが業務執行取締役として必ずしもされていなくても、業務執行を取締役が行うことは実際には多くあります。
取締役が使用人兼務取締役という使用人を兼ねるときは、業務執行を使用人としての立場で行うときがあります。この取締役としての業務執行は、理論的には取締役固有の権限としてのものとは区分けされるべきものですが、実際には重なっており、この区分けははっきりしていないと考えられます。業務執行がいずれの立場のものでも、最高の業務執行責任者の代表取締役の委任あるいは指揮の下に行われるようになります。