固定資産は一般的に会社の事業に用いられる建物や機械などがこれに当たりますが、こうした固定資産のうち、時間が経過すると価値が減損するものについては、減価償却によって耐用年数に応じて費用として償却されます。他方で、少額なものなど一定の条件を満たす場合には、事業年度に全額費用として計上することができるものもあります。本記事では、こうした少額固定資産と呼ばれるものについて解説します。
前述のとおり、固定資産のうち、時間の経過とともに価値が減損するものについては減価償却資産として、取得金額は取得した事業年度に一括して費用計上できず、耐用年数に応じた期間中費用として計上されることになります。減価償却の方法は耐用年数や取得金額など細かいルールが定められており、これに従って、経理処理する必要があります。これに対して、少額固定資産は簡易な方法で計算することが認められた減価償却資産です。こうした、少額固定資産には、①少額減価償却資産②一括償却資産③中小企業者等の少額減価償却資産の3種類があり、それぞれ会計処理が異なります。
少額減価償却資産は、(1)使用可能期間が1年未満のものか、(2)取得価額が10万円未満の減価償却資産のことをいいます。こうした少額減価償却資産に該当する場合には、その減価償却資産を事業の用に供した事業年度において全額費用に計上することができます。
(1)の「使用可能期間が1年未満のもの」とは、法定耐用年数でみるのではなく、その法人の営む業種において一般的に消耗性のものと認識され、かつ、その法人の平均的な使用状況、補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満であるものをいいます。例えば、テレビ放映用のコマーシャルフィルムのうち、テレビ放映期間が1年未満の者に用いる場合には、テレビ放映期間が1年未満であることは一般的ですから「使用可能期間が1年未満のもの」に該当します。
(2)の「取得価額が10万円未満」この取得価額は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。例えば、応接セットの場合は、通常、テーブルと椅子が1組で取引されるものですから、1組で10万円未満になるかどうかを判定します。椅子やテーブルを個別にみてそれぞれが10万円未満かを判断するものではないので注意が必要です。
同様にカーテンのように通常数枚が組み合わされて機能するものについては、カーテン1枚の価格ではなく、部屋ごとのカーテンの価格が10万円未満かを判断することになります。
一括償却資産とは取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産のことをいいます。
取得価額が10万円未満又は20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引される場合はその単位ごとに判定されます。例えば、機械及び装置については、いくつかの機器が組み合わせたものであっても、取引とされる単位、つまり1台又は1基ごとに判定することになります。また、枕木、電柱等のように単体では機能を発揮できないものについては、社会通念上一の効用を有すると認められる単位ごとに判定することになっています。
一括償却資産に該当する場合には、一括償却資産の合計額を一括りにして3年間で計算することができます。したがって、例えば18万円の機械を購入し事業のよう用に供した場合には18万÷3の6万円がその事業年度に計上できる金額となり、3年間かけて減価償却されることになります。
なお、一括償却資産として3年間で償却する方法以外にも、通常の減価償却によって償却することを選ぶこともできます。
中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を事業の用に供した場合には、その全額を費用とできる、中小企業を対象とした特例です。
ここで「中小企業等」とは①資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人、②資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人にあたるものをいいます。なお、大企業(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人)の子会社は資本金要件を満たしても、ここでいう中小企業には該当しませんので、注意が必要です。
また、前述のとおり、この制度は中小企業に対する特例であり、特例は適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円の範囲でのみの適用となるため、この点についても注意が必要です。
さらに、特例を受けるためには事業の用に供した事業年度において、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付して申告することが必要となるなど、手続き要件について定めがあるため、この点についてもあわせて注意が必要となります。