賞与引当金とは、従業員に対して支払う賞与を、決算時点で費用として見積もるためのものです。実際に賞与が支払われる際には、この引当金から業績によって変動する可能性があるので、金額も高くなったり、低くなったりします。もちろんまったくの同額である可能性もあります。
そして、この賞与引当金は期末時点で確定しているものについては決算に参入しなければなりません。一方、法人税法によって損金算入が認められていないなど、ルールが細かく規定も詳細に理解しておく必要があります。今回は、賞与引当金について説明し、計算方法や計上する際の注意ポイントをご紹介します。
賞与引当金とは、従業員の賞与の支払いに備えて設定する引当金のことです。賞与は直前の支給日から決済日までの間の労働に対応して金額を見積もって設定されます。
また引当金とは、将来的に支出が発生する可能性が高いということを意味し、その支出の原因となる事柄がすでに生じていることを表しています。つまり、この引当金は計上しなければならない負債のひとつです。支払額が確定しておらず、見込額を算出した場合に当期に帰属し、損益計算書に含めて書かなければなりません。支払額が決定している場合には未払費用や未払金として計上する必要があります。
とくに賞与引当金の場合は、数ヶ月以内に従業員へ賞与を支払う可能性が高く、その賞与を受け取るに見合う勤務を従業員がしている場合に、賞与引当金が発生します。
たとえば、3月決算で従業員に対して賞与を6月と12月に支払っている会社の場合、6月の賞与は12〜5月までの勤務、12月の賞与は6〜11月までの勤務を行った者に対して支払われるものであるということを意味します。6月に支給される賞与のうち、12〜3月分は3月末の決算時に見積もりに計上しなければなりません。その計上をするために用いるのが賞与引当金です。
上記で説明したように3月決算で従業員に対して賞与を6月と12月に支払っている会社の場合、3月末の決算については、すでに勤務が終わっている期間にあたる賞与引当金を計上することになります。
たとえば、6月に支給される賞与が満額で1200万円になる場合、12〜3月の4ヶ月分の賞与となる800万円分は3月末の決算に賞与引当金として計上する必要があるということです。
12月に支給される賞与は、対象となる6〜11月の勤務は期間をまたいでいないので、12月の賞与である賞与引当金は計上する必要がありません。
賞与引当金はあくまで見積額ですので、賞与引当金の時点では実際の賞与として同額が支払われるか、あるいは別の金額になるかはわかりません。もし差額が生じた場合には、従業員賞与としてとして当期の費用として処理する必要があります。
しかし、科目は必ずしも従業員賞与でなければいけないわけではないので、各企業などによって異なります。賞与引当金に不足があった場合も、従業員賞与として当期の費用で処理するのが一般的です。
賞与引当金よりも下回る額を賞与として支給する場合、賞与引当金戻入益として処理します。
賞与の金額が賞与引当金の時点と、実際に支払う段階になって異なるのは、会社の業績の変化や従業員の退職などが個人の賞与の金額に影響してくるからです。引当金よりも増えた場合には賞与として与えられる金額も増えたことになりますが、業績悪化などによっては賞与引当金よりも金額面が下回る可能性はあります。いずれも、賞与引当金と違う金額の賞与になった場合には当期の利益、もしくは当期の費用として処理しなければなりません。
賞与引当金は、支払見積額を賞与引当金繰入額として費用処理することになりますが、税務上は費用処理ができない種類の費用となります。損金不算入となるのには法人税法が絡んでいます。債務のうち確定しない費用に含まれており、法人税基本通達では費用処理するためには債務が確定していることを規定しています。
たとえば、業績悪化によって賞与の支払いがなくなる可能性も否定できないため、賞与としての債務が成立しているかどうかは期末時点では判断がつきません。債務の確定していない費用として損金算入は認められていません。ですので、法人税申告書の記載には細心の注意を払って、従業員の働いた期間や日数などを踏まえて賞与を見積もる必要があります。
以上、賞与引当金について解説しました。従業員の賞与の支払いに備えて設定する引当金ですが、それには算出方法や処理方法がしっかりと設けられています。また、法人税申告の際にも注意が必要ですので、理解が不十分な方は今回でしっかりと理解しておきましょう。